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【旧車(絶版車)】キャリア30年のオフロード乗りが心打たれたSUV・クロカン四駆

クロカンとは「クロスカントリー」のこと。山野を自由に走り回るという意味合いであり、優れた悪路走破性を示す言葉でもあります。

80年から90年代にかけての「四駆ブーム」において、いわゆるクロカン四駆(オフロード4WD)の市場は一気に花開きました。現在では絶版になってしまった三菱「パジェロ」やいすゞ「ビッグホーン」が超人気車種となり、トヨタ「ランドクルーザー」が垂涎の的となりました。

クロカン四駆はやがて「SUV」や「ライトクロカン」というカテゴリーを生み、現在の市場へとつながっていきます。

今回は、筆者が30年の間、クロカン四駆やSUVに乗り続けた中で、特に心を打たれたモデル・ベスト3をご紹介します。

様々な既成概念を壊した名車「ビッグホーン」

旧車3位は、「ビッグホーン」。現在はいすゞが日本の乗用車市場から撤退していますが、2002年まで売られていたクロカン四駆です。

2代目までが造られましたが、特に心に残ったのはやはり初代。四駆の世界に「チューニング」という新しい概念を持ち込んだ名車で、『イルムシャー』や『スペシャルエディション・バイ・ロータス』といった、海外チューナーの手によるアップグレードを施したモデルを投入しています。

初代ビッグホーン イルムシャーRロング

初代はナイフでカットしたようにスクエアなボディに、1987年までの初期型は初代レンジローバーに見た目がそっくりだったため、口の悪い自動車評論家などに“プアマンズレンジ”などと揶揄されました。リアゲートは、開かなくなくってしまうような斜地でも使えるよう考慮され、観音開きになっています。

エンジンはガソリンとディーゼルが用意されていましたが、一般人には縁遠かったディーゼルを身近な存在にしたのは、このビッグホーンの功績といってもいいでしょう。ライバル・パジェロのディーゼルに比べるとロングストロークで、トルクフルだったのを思い出します。

インパネもパジェロよりも無骨で、油圧計や電圧計などがダッシュボードに並んでいたのが、当時の四駆乗りの心を刺激しました。前述したイルムシャーやスペシャルエディション・バイ・ロータスには、レカロ製のセミバケットシートを採用。「クロカン四駆にはできるだけ凹凸のないシート形状が合う」…というそれまでの定石を覆したのも、このビッグホーンでした。

初代のサスペンションは、前:ダブルウイッシュボーン、後:リーフスプリング・リジッドアクスル。リアはいわゆる「板バネ」でしたが、オンロードとオフロードのバランスに優れたセッティングとなっており、激しい凹凸路(モーグル)では後ろ脚が伸びて、タイヤが路面をよくトレース。悪路で頼もしい性能を発揮してくれました。

もはや日本では見ることもなくなりましたが、もし今買えるとしたら、ジムニーのようなブームを巻き起こすかもしれません。

トヨタの北米市場での成功を導いた「ランクル40系」

今では“世界のトヨタ”と言われていますが、当初は北米で大苦戦しました。日本が誇る「クラウン」と「クラウンデラックス」を引っ提げてアメリカに乗り込んでも、現地での評価は散々。当時の日本車は品質が悪く、まだ自動車王国アメリカで通用するレベルではなかったのです。

そのトヨタの窮地を救ったのが、「ランドクルーザー」です。当時の20系は、そもそも自衛隊の制式車両に採用するために造られたモデルの民生版で、スペック、耐久性などの面で十分なものを持っていました。それはアメリカ人にもすぐに分かったようで、ランドクルーザーはトヨタのアメリカ進出を成功に導いたのです。

ランドクルーザー40系(1960年・FJ40型)

その後、さらなる商品力向上を目指して投入したのが、40系です。「ヨンマル」と呼ばれるこの名車は、様々なバリエーションがありましたが、日本ではショートボディとミドルボディが投入されました。F型というガソリンエンジンは本来北米向けに投入されたもので、日本ではレアな存在。日本では、燃料費が安いB型ディーゼルを搭載したモデルが人気でした。

このB型ディーゼルが、1979年に2B型に進化した際、フロントブレーキのディスク化やデンソー製エアコンのオプション化が行われたことから、一般へも広く浸透していきました。

ランドクルーザー40系(1979年・BJ41型)

90年くらいに、筆者もBJ41Vという2B型エンジン搭載のショートボディに乗っていましたが、すでに10年以上経過した個体でした。エンジンはマイナートラブルこそあったものの頑丈で、非常に力強く走ってくれました。当時流行していたインタークーラーターボディーゼルには勝りませんでしたが、他のクルマの速度域に遅れを取るようなこともありませんでした。

トランスファーの操作は非常に先進的で、2WDと4WD Hの切り替えがボタンで行うソレノイド式でした。メーターは単眼、グローブボックスの蓋と形状が共通で、各国への仕様対応が容易になるよう考慮されています。あまり色気のないデザインでしたが、その無骨さがかえってユーザー心をそそったのだと思います。

オフロードでは、非常に扱いやすいクルマでした。僕の愛車は堅めのリーフスプリングに替わっていたため、脚が浮くのが早かったのですが、ノーマルサスペンションは非常によく伸び縮みして、地形を巧みにトレース。ディーゼルエンジンも4WD Lにすると低回転域で粘り、ユルユルと低速で進んでくれます。

とくに他車より秀でているのが後方視界で、40系のトレードマークにもなっているリアコーナーの湾曲したガラスからは、周囲の障害物などがよく見えます。観音開きのリアゲートの開閉比率も絶妙で、どこを切り取っても格好のいいクルマでした。金銭に余裕があれば、もう一度手に入れたいモデルのひとつです。

残念ながら日本では、ディーゼル車規制によってほとんど姿を消してしまいましたが、現在でも熱心なファンの間で人気があります。アメリカでも同様で、先頃、俳優のトム・ハンクスがカスタムをした40系を売りに出したことが話題となりました。

執筆者プロフィール
山崎 友貴
山崎 友貴
1966年生まれ。四輪駆動車専門誌やRV雑誌編集部を経て、編集ブロダクションを設立。現在はSUV生活研究家として、SUVやキャンピングカーを使った新たなアウトドアライフや車中泊ライフなどを探求中。現在の愛車は...

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