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半クラッチとは?MT車を運転するコツと注意点【自動車用語】

半クラッチとは?

クラッチが完全に繋がっていない状態を半クラッチと言います。クラッチペダル操作が必要な車種、つまりMT車で見られる状態の1つです。

多くの自動車のMT車のクラッチには乾式単板式クラッチが採用されています。クラッチディスクが板状(どちらかというと円盤)のものと考えるとわかりやすいでしょう。

クラッチディスクとフライホイールが摩擦し、クラッチディスクがフライホイールの回転によって回され、クラッチディスクと繋がっているインプットシャフトも回転するという仕組みです。

MT車で通常走行しているとき、そして半クラッチで繋がっているとき、どちらもフライホイールとクラッチディスクは繋がっているのですが、その圧着の程度に違いがあります。通常走行時のほうが半クラッチ時よりも圧着が強いです。

クラッチ周辺の構造と半クラッチの仕組み

©adragan/stock.adobe.com

クラッチ周りの構成部品とそれらの役割がわかると、「クラッチが完全に繋がっていない状態」をよりイメージしやすくなります。ここでは、フライホイール、クラッチ板(ディスク)クラッチカバー(ダイヤフラムスプリング)を説明します。

クラッチ周辺の主要構成部品

フライホイール

エンジンが生み出した動力を回転運動に変換するパーツです。クラッチディスクを直接的に回す役割を果たしています。

フライホイールはクランクシャフト末端に装着されていて、クランクシャフトに連動して動く仕組みです。

また、フライホイールはエンジン始動の役割も担います。歯車がフライホイール外周に設けられ、セルモーターを回すとこの歯車と噛み合ってフライホイールが回転し、エンジンを始動させます。

クラッチディスク

クラッチディスクはフライホイールの回転を自身の回転運動へ変換するパーツです。クラッチディスクの両面にある摩擦材(クラッチフェーシング)がフライホイールと接することでクラッチディスクが回転します。また、反対側の面は次で紹介するプレッシャープレートとも接します。

クラッチカバー

クラッチカバーはクラッチディスクの上に被せて装着されるパーツです。ただのカバーですが、世間一般でクラッチカバーと呼ぶときにはプレッシャープレートやダイヤフラムスプリングなどさまざまな部品が組まれた状態を示すこともあります。

プレッシャープレート

クラッチカバーのカバー反対(つまりクラッチディスク側)にあるプレッシャープレートは、クラッチフェーシングと摩擦する部分であり、同時にクラッチディスクをフライホイールへ押し付けて圧着させる役割を担っています。

ダイヤフラムスプリング

ダイヤフラムスプリングはストラップを通じてプレッシャプレートと繋がっているパーツです。一見円盤の形をした金属の板ばねですが、中央部に穴が空いていて、なおかつ盛り上がるような形状をしています。

ダイヤフラムスプリングはクラッチペダル操作に連動して形状を変化します。厳密にはクラッチペダル操作に応じてクラッチカバー中央にあるレリーズベアリングが軸方向に動きます。

クラッチペダルを踏むとレリーズベアリングがダイヤフラムスプリングを押しこみます。これによりダイヤフラムスプリングの外側部分がレリーズベアリングとは逆の方向へ動き、プレッシャープレートがそれに連動して動くためでクラッチディスクを押しつけなくなります。クラッチディスクとフライホイールの圧着が解除され、クラッチが切れる状態になるということです。

ペダルから足を離すと、ダイヤフラムスプリングやレリーズベアリングも元の位置・形状に戻ります。

半クラッチ時のフライホイールとクラッチディスクの状態

以上の各パーツの役割をもとに半クラッチとは何かを考えると、「エンジンの動力が完全に遮断されているわけではないけれど、かといってその動力が確実に駆動系へ伝えられていない状態」とすることができます。

半クラッチのメリット、デメリット

坂道発進でメリットがある

停止状態のMT車を滑らかに発進させられるのが半クラッチのメリットと言えるでしょう。半クラッチを使わずしてMT車を発進させることは不可能です。

特に半クラッチの恩恵を受けるのは坂道(上り坂)発進です。平地や下り坂での発進操作は比較的用意で、さらに言えば下り坂なら半クラッチをほぼ使わなくてもギアを繋いで走らせられます。

しかし、上り坂では車両は何もしなければ後方へ下がりますし、それゆえ発進時の駆動力が求められるため、平地・下り坂の発進と比べて難易度は高いです。

デメリットはほぼないが…

半クラッチなくしてMT車を運転することはできないのでデメリットは無いと考えるのが正しいのですが、必要以上に半クラッチ操作を行うとクラッチ板が必要以上に消耗します。焼きついて焦げ臭い匂いがすることもあるため、不必要な操作は避けましょう。

なぜ半クラッチ操作が必要なの?

©junce11/stock.adobe.com

MT車の操作で半クラッチを使うのは、停車状態から車を発進させるときです。

エンジンをかけ、クラッチを踏んだ状態からクラッチを急に離すとエンジンの回転が低下し、エンストしてしまいます。

発進時にエンストさえないためには、エンジンの力を少しずつタイヤ側に伝える必要があるため、クラッチを踏んだ状態から足を少しずつ離す=半クラッチ操作が必要というわけです。

反対に、走行中にシフトチェンジをする際は、半クラッチする必要はほぼありません。詳しくは後述します。

シフトアップ・シフトダウン時に半クラッチにするとどうなる?

©ogawa/stock.adobe.com

シフトアップ時とシフトダウン時の半クラッチ操作は発進時ほど意識する要素ではありませんが、車両の癖や運転方法に合わせてほんの少し工夫すると良いでしょう。

シフトアップの場合、クラッチを繋ぐ手前で一瞬半クラッチにする乗り方が良いときがあれば、クラッチを切って次のギアを選択したらそのままクラッチをポンッとつなぐ乗り方が良いものもあります。

シフトダウンの場合は、ブリッピング(アクセルペダルを煽ってエンジン回転数を上げて、シフトダウンで発生するシフトショックを抑えること)をするかどうかで半クラッチ操作が異なる印象です。

ブリッピングせずにシフトダウン時にはシフトショックを半クラッチで幾分か緩和することができます。反対にブリッピングしてシフトショックをなくすような乗り方をするのであれば、半クラッチをする必要はほとんどありません。

走行中に半クラッチにするとどうなる?

アクセル開度一定で走行しているときに半クラッチ操作を行うとどうなるのでしょうか。

エンジン回転数が急激に高くなる

©masahiro/stock.adobe.com

まず確実に言えるのは、エンジン回転数が急激に高くなるということ。

エンジン回転数はクランクシャフトの回転数(毎分)を指しています。クラッチディスクはフライホイールと接していますが、クランクシャフトと繋がっているフライホイールから見ればクラッチフェーシングは自身の回転を妨げる抵抗です。

半クラッチにすれば摩擦具合が低くなり、抵抗が減ったフライホイール(クランクシャフト)はより速く回転します。

前に引っ張られる

走行中の速度にもよりますが、前に引っ張られるような現象が発生します。これはエンジン回転数が急激に上がったことで急加速したためだと思われます。

モータースポーツの界隈ではよく知られるクラッチ蹴り。サーキット走行時、上り坂では加速しにくいのでクラッチ蹴りでエンジン回転数を上げて少しでも加速を伸ばすものですが、これとはたらきは同じです。

なお、これはエンジンやクラッチへ負担がかかるので一般車では真似しないでください。

加速しないまたは失速する

もう1つ考えられるのは加速しないまたは失速する現象です。

一応クラッチは繋がっている状態なのでエンジンの動力はトランスミッションに伝わっていますが、半クラッチにより圧着度が下がった状態だとクラッチ容量が低下した状態になり、それ以上加速しません。

走行中にはさまざまな抵抗(失速する要因)に遭遇します。上り坂で半クラッチの状態になって加速しなくなれば確実に失速します。

無駄のない半クラッチの使い方は?

©Syda Productions/stock.adobe.com

半クラッチを無駄なく使いこなすにはどうすれば良いのでしょうか。

必要以上に使わない

ポイント1つ目は必要以上に半クラッチの状態にしないことです。

MT車の運転で半クラッチを特に使うのは発進の場面。エンジン回転数を上げた状態で半クラッチにして動力を伝え、少し回転数が下がりながらも車両が動き出したら、クラッチペダルから足を離してアクセルペダルを踏み加速しましょう。

駐車するためにバックギアを選択して後退するときには、細かな位置調整をするので半クラッチを多用する可能性が高いです。

このとき、半クラッチで車両を動かしてからすかさずクラッチを切って惰性だけで操作すると、半クラッチ状態を減らせます。ただし止まってしまったらまたクラッチを繋ぐ手間が出てくるので、使うシーンは限られます。

車両ごとのクセに慣れる

クラッチ特性は車両ごとに異なります。それはダイヤフラムスプリングの重さであったり、クラッチペダルの遊びの調整であったりなどです。

クラッチペダルが重たいと操作は軽いものよりも難しいですし、半クラッチの幅が狭ければクラッチを繋ぐのが難しくなります。

しかしこういった車も慣れれば運転しやすくなりますし、逆に遊びがないので無駄のなく気持ち良い運転を味わえます。

半クラッチを習得してMT車ライフを満喫しよう

©alexkich/stock.adobe.com

仕事や趣味などでMT車を運転する人はまだ一定数いますが、日本では大衆向けの自動車の多くはAT/CVT車になりました。そのため半クラッチを習得する必要のない方が多数派なのも事実です。

しかし今でも新車で販売されているMT車はありますし、MT仕様しかない車種(特に古い車種)もあります。クラッチ操作はコツを掴めば運転を楽しめるようになるので、MT車の運転免許を持っているのであれば運転しないのはもったいないです。

半クラッチをうまく使えれば車にも優しく乗り手にも優しい運転が実現されます。これを機に日頃のペダル操作をより意識してみてはいかがでしょうか。

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執筆者プロフィール
中華鍋振る人
中華鍋振る人
自動車とバイクに関連する記事を書いています。モータースポーツは観戦よりも参戦派。道交法や違反に関する情報を、法律に詳しくない人にもわかりやすく解説しています。

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