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フェラーリ等のスポーツカーからMT車が消えた理由…専門家の回答に納得!

自動運転やEVなど、自動車業界はいつでもその時代の最先端技術を用いてきましたが、同時に消えゆくテクノロジーも存在します。MT(マニュアルトランスミッション)がその最たる例です。

クルマを操る楽しさを追求しているはずのスポーツカーですら、2010年代に入ってからはAT(オートマチックトランスミッション)のみを採用する車種が多くなりました。

トランスミッションを搭載しないEVならまだしも、なぜフェラーリやマクラーレンといったスポーツカーからもMTが消えてしまったのでしょうか?

スポーツカーからも消えゆくマニュアル車…なぜ?

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2000年代に入り、MTの取り扱いを廃止するスポーツカーメーカーが増えています。フェラーリはカリフォルニア、ランボルギーニはガヤルドを最後に、マニュアルトランスミッションを搭載した市販車を販売していません。

2010年代後半には、ホンダ NSX、アルピーヌ A110、トヨタ スープラなど複数の名スポーツカーが復活を遂げます。しかし、これらにもMTの選択肢はなく、ATまたは、DCT(デュアルクラッチトランスミッション)を採用しています。

このようなMT廃止の流れは、スポーツドライビングを好む愛好家にとってはなんとも寂しいもの。AT限定免許の普及や、自動車の進化の風向きがどんどん運転者にとって楽な方向へと進んでいるとはいえ、なぜスポーツカーにもMTを採用しないメーカーが増えたのでしょうか。専門家の意見も踏まえて、その背景を考察します。

ATの大幅な進化

2017に発売された新型NSXは、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムを採用したこともあり、MTは搭載されなかった。

MTを用意しないスポーツカーが増えたもっとも大きな理由として、ATが進化したことが挙げられます(ATにはトルコン式AT、セミAT、DCTなど複数種類がありますが、ここではドライバーのクラッチ操作を必要としない変速機を総称します)。

スポーツカーにおいて、サーキットにおける走行性能は非常に大きな要素であり、サーキットでの単純な速さを突き詰めれば、当然、人の手と足による変速よりも、機械制御でそれをおこなうATの方がクラッチミートも速く、駆動のロスも短いです。

ドライバーにとっても大きなメリットがあります。MTで変速をおこなう場合には、シフト操作をおこなうために片手をハンドルから離す必要がありますが、パドル操作のみでシフトアップ・ダウンがおこなえるATならば、ステアリング操作に集中することができます。

スピードレンジが高くなればなるほど、この差はドライバーにとって大きいはずです。特に減速時には、3ペダルのMTならヒール・アンド・トゥと呼ばれる技術が必要になりますが、現代のスーパーカーに搭載されるATは手動よりも高い精度でそれをおこなってくれます。

ATの進化はサーキット性能だけに留まりません。1990年代に入ると、964型ポルシェ 911 カレラ2に搭載された「ティプトロニック」やフェラーリ 360モデナで採用された「F1マチック」など、高級スポーツカーにもATが採用され始めましたが、この頃はまだ街中でのシフトショックや耐久性など、実用面における課題もありました。

しかしそれも時間の問題で、今では、渋滞時の度重なるストップ&ゴーでも不快にならないようなフィーリングにまで進化し、さらにエネルギーの伝達効率向上による低燃費化も実現しています。

これらの理由により、ATを搭載したスポーツカーは、MT車よりも高いサーキット性能と、快適な公道走行を手に入れたのです。

運転支援技術との相性がイマイチ

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これはスポーツカーに限った話ではありませんが、MT車が減少の一途を辿っている要因として、安全支援システムや運転支援技術との相性の悪さが挙げられるでしょう。近年、多くの車種に搭載されている、渋滞対応ACC(アダプティプ・クルーズ・コントロール)は、停車・発進を自動で制御しますが、マニュアル車の場合にはペダルクラッチがあるために開発の工数が増えてしまいます。

スズキ スイフトスポーツなど、走行中のみ作動可能なACCを搭載する車種も存在しますが、3〜6速でのみ動作、クラッチが繋がっていない際にはエンジンの出力を下げる、などマニュアル専用のセッティングをおこなう必要があり、やはりMTのための開発コストが発生します。

自動運転や安全支援はますます複雑化していくことは間違いなく、そうなればMT車との相性はさらに悪くなることが推測されます。

専門家の認識は?

©Dan74/stock.adobe.com

運転を楽しむはずのスポーツカーからMTが消えている現状について、長年モータージャーナリストとして活動する専門家に尋ねたところ、以下のような返答が得られました。

「1989年のF1でフェラーリがセミATを導入してから、モータースポーツではたちまち2ペダルのATが広まっていきました。ことし24才の若手F1ドライバー、フェルスタッペンがMTを積んだレーシングマシンに搭乗した際、ヒール・アンド・トゥの存在を知らなかったエピソードからも、完全にATが主流であることがわかります。フェラーリは伝統的にF1の技術を市販車に落とし込んできましたから、早々にマニュアルを廃止したのも自然な流れです。つまり、スポーツカーからMTが消えたのは、時代の流れでやむを得ずそうさせられたのではなく、メーカーがみずから、ATをより進化させるという選択を取ったのだといえるでしょう」。

もちろん、現時点でもMTを積んだスポーツカーは存在し、BMWやアストン マーティン、ポルシェなど、ドライビングプレジャーを突き詰め、顧客の熱望に応えるメーカーも残っています。

しかし残念ながら、マニュアルトランスミッションを搭載する新車が減少していく可能性は高いでしょう。となれば、まさに絶滅危惧種なMTスポーツカーを、いまのうちに手に入れておくのも悪くないかもしれません。

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執筆者プロフィール
GOH
GOH
ファッションとクルマを得意ジャンルとする25才のフリーランス編集者/ライター。MOBY編集部在籍時はwebマーケティングから執筆、編集、取材ディレクションまで網羅的に担当した。現在はウェブメディアや雑誌など...

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