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ドッカンターボの魅力とは?当時の定番・代表車たち

ドッカンターボとは?

日産 L28ET型エンジン

アクセルを踏み込み、タービンが正圧になると吸気密度を高め、酸素をより多く送り込む事により出力とトルクを飛躍的に高めるターボチャージャー(排気式過給機)。

その仕組みや構造は「意外と知らない?ターボ(ターボチャージャー)の仕組みや構造を解説!」を参照してもらうとして、ターボの中には「ドッカンターボ」と呼ばれるターボエンジンがあります。

ドッカンターボと普通のターボの違い

過給(ブースト)がかかる前とかかった後で、増加したパワーとトルクの差が激しく、「ドカン!」と急激に立ち上がるのが「ドッカンターボ」の由来。

初期のターボエンジンに多く、「クセが強く乗りにくい」と、低回転からキレイなパワー&トルクカーブを描くスーパーチャージャー(機械式過給機)や、低回転でのトルクは細いものの、高回転までキレイに回るNA(自然吸気)エンジンを好む人も多いものでした。

しかし、技術の発展により「リニアチャージターボ」などと呼ばれるドッカン度を排したターボや、必ずしも高出力狙いではなく過給圧の低いマイルドチャージターボの登場で、ドッカンターボはなくなっていきました。

なぜドッカンターボになるのか

ドッカンターボになるのは、ザックリ言えば以下のような原因があります。

  • 自動車用ターボの制御技術が未熟な時期、ターボの作動領域以下の低回転は切り捨てていた。
  • モータースポーツ用など特殊な事情により、小排気量で可能な限りの大出力発揮のため、ターボ過給される高回転走行以外は重視しない。

前者については、エンジン技術やターボの制御技術の発展で、低回転でも実用的な性能を発揮できるようになりました。

後者については、想定される競技で「ターボエンジンは何ccまで」という規則な場合、大排気量NAエンジンを上回るパワーを実現するため、あえて排気量にそぐわない大型タービンを搭載する場合があります。

パワフルなだけではない、ドッカンターボの条件

ドッカンターボで時々誤解されるのが、「ブーストがかかると高出力&大トルクになる車」をもれなくドッカンターボと解釈しているパターンです。

実際には、単純にブースト時のパワー&トルクにタイヤなりシャシー性能なりが追いつかない、ただの「ジャジャ馬」な車も含んでいる例があり、単純にブーストをかけたら暴れるような車がドッカンターボというわけではありません。

あくまで、「ブーストがかかる前は同排気量の自然吸気エンジンより眠い(遅い)くらいの車が、ブーストがかかった瞬間、目覚めたように速くなるターボエンジン」が、ドッカンターボだと思ってよいでしょう。

ドッカンターボの魅力は?

日産 スカイライン R30 スーパーシルエット

現在のターボ車は大抵が大排気量NAエンジンのように「飼いならされて素直」になったがゆえ、扱いやすくて幅広いユーザーへ自然に受け入れられるはずなのですが、なぜか「乗りにくい」ドッカンターボを懐かしみ、あるいは憧れるユーザーが少なくありません。

それはなぜでしょうか?

扱いやすくハイレスポンスが正解なのか?

ハッキリ言えば、ドッカンターボなど「回転を上げなければ遅く、ブーストがかかればスイッチが切り替わるがごとくパワーを絞り出す」ので、乗りにくくて不便でしかなく、レース用ならともかく「乗用車用エンジンとしては間違っている!」と断言できます。

ならば、低回転でも普通に走れて、アクセルを踏めば踏んだなりにレスポンスよく走る現代的なターボ車が正解かといえば、刺激を求めるユーザー層からすればツマラナイのです。

しかも、低回転から普通に走れる実用的なターボエンジンは、今や「高回転まで気持ちよく回らない」と、ターボに走りを求める層からはガッカリされる始末なのでした。

魂をゆさぶる加速感

その点、ドッカンターボはブースト計の針(あるいはデジタルブーストインジケーター)が正圧を指す、つまりターボチャージャーによる過給が始まった瞬間、明確に「ドカン!」とパワー&トルクが炸裂、加速を始めますから、非常にわかりやすいのです。

車種やエンジンによっては、これに「ヒューン!」というタービン音、「シュゴォォォ!」という圧縮される吸気音、アクセルを戻せば「プッシャアア!」と、余分な過給圧を逃がす音(ブローオフ音)が加わります。

加速Gや後方に流れ去る景色の変化、ターボに関わる作動音といった「感性」に訴え、「魂を揺さぶる加速感」が、ドッカンターボの醍醐味なのです。

日常から非日常へのワープ

ドッカンターボの加給が「ドカン!」と始まる瞬間は、低回転の日常から、非日常へとワープする瞬間とも言えます。

自然吸気エンジンでも、ホンダのDOHC VTECエンジンのような可変バルブ機構を持つ高回転高出力型の自然吸気エンジンで、「カムが切り替わった瞬間」に同じような感覚を感じる人は多いのですが、ターボ車ではドッカンターボがそれに相当するというわけです。

加速Gとともに、日常のモヤモヤを後方に置いていく感覚をターボに期待するユーザーにとっては、ドッカンターボでなければならない事情がある、と言ってもいいかもしれません。

逆転!タービンをエンジンがアシスト!

小排気量エンジンにあえて過大な大型タービンを装着、あるいは初期のターボ車で過給時以外のパワー&トルクがとても低いドッカンターボの場合、「タービンが回ってくれない事には煮ても焼いても食えないほど遅い(と感じる)」車種もあります。

そうした車では、タービンが回ってこそ本領発揮、実際の仕組みはともかく、エンジンなどタービンが回るまでの間も何とか走らせるためのオマケ、通常とは逆に「タービンがメインで、エンジンはアシスト」という感覚。

もちろん普通に考えれば乗りにくくて仕方ないのですが、「非日常感の演出」としては最高です。

パワー&トルクバンドへ入れ続ける腕が試される

ドッカンターボでは、「ブーストが立ち上がった瞬間のドカン!という加速Gの立ち上がり」も大事なのですが、実際に速く走り続けようと思うとブーストがかかる高回転域を維持しなければいけません。

つまり、走りのリズムをうまく作れない、シフトチェンジがうまくできないなどの理由で回転を落としてしまうと並の車より遅くなってしまい、またドカン!からのやり直し。

パワーバンド、トルクバンドといった「オイシイ回転数」を維持するには相応の腕が要求されるため、ドッカンターボ速く走らせられるドライバーはスゴ腕の持ち主と尊敬されますし、本人にとっても腕の見せどころです。

現代の車でドッカンターボを味わうには?

日産 FJ20ETエンジン

現代のダウンサイジングターボにドッカン要素は皆無

現在のターボエンジンは、かつての「とにかく燃料と濃い空気をブチ込み高出力を発揮する」という性格ではなく、環境対策として有害な排出ガスが少ない小排気量エンジンのパワー&トルクをターボ過給で補う「ダウンサイジングターボ」が主流です。

その種のターボは大排気量NAエンジンと同じような乗りやすさを維持するため、低回転でも過給する代わり高回転までは面倒を見ない小型タービンを使ったり、低回転はモーターアシストで補うハイブリッド化が進んでいます。

もはやかつてのようなドッカンターボを味わう事は、演出としてあえてそう作らない限り、ありえません。

身の丈を超えたタービンとドッカン制御が必要

それでもチューニングの世界なら…というわけで、もし現在の車でドッカンターボを味わうなら、タービンの大型化、エンジンを制御するコンピューターの交換が必要になります。

かつてのように「コンピューターの書き換え」や、サブコンと呼ばれる装置をコンピューターに接続して補正するのはかなり難しくなっているため、エンジン本体など使える部分以外はまるっと交換してしまう方法なら、今でもドッカンターボを味わえるかもしれません。

高額にはなりますが、すっかりプレミアがついた上に純正部品の入手も困難な1990年代までのドッカンターボ車を中古で買ってメンテナンスするよりは、安く済む可能性もあります。

執筆者プロフィール
MOBY編集部
MOBY編集部
新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...

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