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排ガス規制とは?日本と世界との規制値の違いとディーゼル車等のエンジンへの影響
排ガス規制とは?
排ガス規制には3種類の規制がある
正しくは「自動車排出ガス規制」といい、通称は「排ガス規制」と呼ばれています。
排ガス規制とは、自動車のエンジンから排出される以下の要素で大気汚染物質の上限を定めた規制のことをいいます。
- 一酸化炭素
- 窒素酸化物
- 炭化水素類
- 黒煙
など
「排ガス規制」と一言でいっていますが実際の総称には以下のものがあります。
- 大気汚染防止法
- 自動車NOx・PM法
- 都道府県条例
近年は、特にディーゼルエンジンの排気ガスに含まれる粒子状物質 (PM)・硫黄酸化物・窒素酸化物(NOx) の規制が厳しくなる傾向があります。日本の排ガス規制は前述しましたいくつかの規制を次の3種に大別することができます。
①単体規制
排気ガスに含まれる有害物質の濃度が基準を満たしていない自動車の新車登録をさせない規制を国土交通省が定めたものです。
この規制は新車登録時にのみに適用され、中古車の登録や使用中の車には適用されません。このため基準を満たす排ガス性能を持っていなければ、メーカーは車の製造ができず、ディーラーは販売できず、外車ディーラーは輸入および販売ができません。
また、道路運送車両法と自動車排ガスの量の許容限度に基づく道路運送車両の保安基準による規制するものも単体規制に含まれます。
この記事で後述する、アメリカの排ガス規制「マスキー法」もこの単体規制と似ています。
②車種規制
単体規制は新車登録時のみに適用となりますが、車種規制は中古車と使用中の車にも適用となります。
自動車NOx・PM法が車種規制という区分に該当します。基準を満たしていない車の新規登録と移転登録、継続登録もできなくなる排ガス規制で、基準を達成していない車をする目的があります。
③運行規制
排ガス性能のよくない車の運行を規制するもので都道府県が実施しているものです。
例えば、首都圏、都市圏の自治体の「ディーゼル車規制条約」や尾瀬、乗鞍スカイライン、上高地など自然保護のために行われる「マイカー規制」が運行規制にあたります。
エコカー減税(グリーン化税制)の対象基準となる排ガス規制
排ガス規制は、グリーン化税制・エコカー減税の対象車を定める基準となっています。
最新の排ガス規制に対応している車には減税があります。古い車で環境負荷の高い車には、逆に重課税が課せられます。
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排ガス規制のディーゼルをはじめとしたエンジンへの影響
エンジンのパワーが下がる?
排ガス規制は、ますます厳しくなってきています。また、今後の排ガス規制も厳しくなっていくことと多くの専門家が推測しています。
地球環境保護のため、やむを得ないことです。しかしながら、排ガス規制が厳しくなることは、自動車のエンジンへの影響が大きく及ぶこととなります。
1970年代初頭のオイルショックは、アメリカで「マスキー法」と呼ばれる厳しい排ガス規制を生み出しました。(くわしくは後述します)この排ガス規制によって、メーカーはエンジンのパワーを下げてしまう結果となりました。
現在では、ますます厳しくなる排ガス規制であってもエンジンの出力を下げずに対応できる技術力をメーカーが持っています。
この先さらに厳しくなる排ガス規制も見事クリアし、効率よく高出力化、さらに低燃費なエンジンをメーカーは開発しています。エンジンのダウンサイジング化が明らかになってきているのは、厳しい排ガス規制の影響といえますが、それよりもメーカーの企業としての地球環境保護、省エネルギー化の強い姿勢が感じられます。
近年、着目を浴びているのはディーゼルエンジンです。一時、かつての東京都知事がディーゼルエンジンは悪、として厳しいディーゼルエンジン車の都内への流入を規制し、国内メーカーは乗用車からディーゼルエンジンの全撤退、外車メーカー系ディーラーはディーゼルエンジンのラインナップの日本仕様の撤廃が進みました。
しかし、ディーゼルエンジンはガソリンエンジンよりクリーンでハイパワーという事実が浸透しはじめディーゼルが着目され販売台数を伸ばしています。
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日本と世界各国との排ガス規制の違い
アメリカと日本は窒素化合物(NOx)を有害視し厳しく規制する傾向がありますが、ヨーロッパでは二酸化炭素(Co2)の排出量を重要視し厳しく規制するという違いがあります。
アメリカや日本では乗用車でのディーゼルエンジンの普及率が低いですが、ヨーロッパでは高いという違いもあります。
アメリカ
アメリカは1963年の「大気浄化法」を規定 とし、連邦政府が定める規制と各州が独自に定める規制がの両方が存在しています。
大気浄化法は1970年の改正で「マスキー法」と呼ばれるようになりました。(くわしくは後述します)
そのなかで特にカリフォルニア州の規制が厳しくなっています。
ヨーロッパ
EU(ヨーロッパ連合)が定めるEU圏内統一排ガス規制に加え、各国が定める国内法によって規制を定めています。
ただ、メルセデスベンツやBMW、ポルシェといった自動車メーカーを持つ旧西ドイツは独自に定めた排ガス規制を敷いている例外はあります。
ヨーロッパでディーゼルエンジンの普及率が高い理由
同じ排気量でガソリンエンジンとディーゼルエンジンを比較した場合では、ディーゼル車の方が燃費が良く二酸化炭素の排出量が少ないという特徴があります。
ただ、日本はガソリンより軽油の方が安いですが、ヨーロッパでは、ガソリンと軽油とでは同じか場合によっては軽油の方が高いという燃料市場背景があります。
ちなみにスイスはガソリンより軽油の方が高くなります。
しかし、ヨーロッパでは年間2万キロ以上走行する車が多く、燃料の値段の違いも燃費の違いが経済的に有利となるディーゼルエンジンの方が好まれる市場となっています。
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アメリカの「マスキー法」とは?
アメリカは1963年に大気汚染を防止するため「大気浄化法」を制定しました。その後、1970年と1977年、1990年に大幅な改正がされています。
このうち、1970年の改正はアメリカの上院議員「エドムンド・マスキー」の提案により、自動車メーカーに非常に厳しい内容となり、その議員の名を取って「マスキー法」と呼ばれるようになりました。
その改正法はクリアするのが不可能ではないかと言われた程のものです。
マスキー法によって、当時のアメリカの自動車メーカーは既存のエンジンのままでは販売できず、三元触媒などエンジンに負荷の高い環境装置を取り付けて対応しましたが、大排気量を特徴とするアメ車のパワーは軒並み1割から2割ダウンしました。
上の写真は、1972年に世界中の自動車メーカーでは初となるマスキー法をクリアした「CVCC」エンジンを開発、搭載したホンダ シビックです。2号は、マツダのロータリーエンジンとなります。
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排ガス規制まとめ
排ガス規制に関するまとめ記事は、いかがでしたでしょうか。
日本の排ガス規制は、車そのものに課す規制と運行による規制にわかれており、グリーン化税制・エコカー減税の基準にもなっています。ヨーロッパやアメリカにも排ガス規制があり、制度内容の差はあれども日本だけのものではないことがおわかりいただけたのではないでしょうか。
地球温暖化等、環境問題を考慮すると排ガス規制の流れは止められません。ディーゼルエンジン、電気自動車や水素自動車など、排気量を抑えるために自動車会社は様々な新技術を開発しています。今後も目が離せません。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...
- 監修者プロフィール
- 鈴木 ケンイチ
- 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...