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コラムシフトとは?メリットや使い方、軽自動車の採用車種を解説
目次
コラムシフトとは?

コラムシフトの「コラム」とは「ステアリングコラム」を略した言葉で、もともとは「柱」を意味する英語です。ステアリングコラムはステアリングシャフトを内包する自動車の操舵装置を構成する部品のことを指します。ステアリングコラムにはウインカーなどの灯火装置やワイパーの操作レバーが配置されるだけでなく、コラムの側面や上面にシフトレバーを配置されることがあります。これを「コラムシフト」あるいは「コラムチェンジ」と呼びます。
コラムシフトの使い方は?

手元だけで操作できる反面、コラムシフトはフロアシフトとは操作感覚が大きく異なります。
AT車でコラムシフトの場合、シフト並びは原則としてフロアATと同じく上からP・N・D・Lと続くものの、メーカーや車種によって力を加える方向が異なり、単純な上下操作タイプもあれば、上下動に前後動が組み合わさったゲートタイプや、シフトロッドを軸として手前に引くタイプもあります。
そのうえコラムATは、どのポジションに入っているのかが分かりづらく、感覚的にも操作しづらいため、慣れるまでは力加減がわからずにポジションを飛び越えてしまいがちです。しかし、慣れると非常に素早い操作が可能であるため、車が完全停止する前にPレンジに入れてしまいオートマチックトランスミッションのロックギアを破損させた事例も少なくありませんでした。
そのためコラムシフトのAT車に乗る際は、メーターに備わったインジケーターを確認しながら、一段一段を確実に操作することが求められます。
メルセデス・ベンツ最新のコラムシフトは使いにくい?
近年では採用車種が皆無となったコラムシフトであるものの、メルセデス・ベンツの一部車種では、2016年ころから指先だけで操作可能なバイワイヤ式のコラムシフトを導入しています。
メルセデス・ベンツの新しいコラムシフトは、レバーを下に操作するとドライブに入り、ニュートラルを介して上に操作するとリバース、レバー先端のボタンでパーキングに入るシンプルな操作でコラムシフトの扱いづらさを解消しました。
ただし、右ハンドルも左ハンドルもシフトレバーは右側に備わるため、シフト操作を左腕で行う右ハンドルに馴染んだ人は、どうしても慣れるまでに時間がかかってしまいます。
誤操作防止のために、最新のコラム式AT車であってもシフト時は、落ち着いた操作と入念な確認が求められるのは変わりありません。
コラムシフトのメリットとデメリット

コラムシフトが発明されたのは1930年代のことで、最初に採用された量産車は38年型キャデラックとされています。
当時の自動車用トランスミッションは、ATが登場間もない時代ということもあってMTが主流でしたが、現在のMTとは違ってシンクロナイザーを持たないノンシンクロ・トランスミッションがほとんどで、シフト操作には「ダブルクラッチ」というテクニックが不可欠でした。
また、数少ないシンクロメッシュ・トランスミッション搭載車もシンクロナイズ能力が低く、操作時には不快な変速ショックが避けられませんでした。そこでダイレクトに変速ショックを伝えるフロアシフトに変わって、ワイヤを使ったリモートコントロールによるコラムシフトが広く採用されたのです。
ベンチシートの採用で乗車定員が1名増やせる
コラムシフトのメリットは変速ショックを車内に伝えないということだけではありません。シフトレバーを手元に配置したコラムシフトは、左右の敷居のないベンチシートとの相性が良く、アメ車のように車幅の広いクルマの場合は、車幅の広さを活かして前席の3人掛けが可能になります(ベンチシート+コラムシフトの略で「ベンコラ」などと呼ばれます)。
60年代後半に入るとシンクロメッシュ・トランスミッションが普及したこともあって、欧州車や日本車は再びフロアシフトを採用するようになりましたが、アメリカ車の場合は80年代後半までフロアシフトが主流となっていました。
コラムシフトのMT車にはデメリットもある

シフトショックを伝えにくい、乗車定員を増やすことができるなど、コラムシフトにはさまざまなメリットがある反面、デメリットも存在します。
コラムシフトのMT車の場合、シフト&セレクトフォークとの間に多くのロッドとリンケージが介在するために、コラムシフトはシフトレバーの「遊び」が大きくなり、ダイレクトな操作感にどうしても欠けます。
MTの多段化には対応にしにくい
コラムシフトにはMTの多段化に対応し切れないという弱点もあります。60年代以前のMT車は3速MTがほとんどで、多くても4速MT、5速MTはごく一部のスポーツカーやレーシングカーへの採用に限られていました。
しかし、70年代に入ると大衆車にも徐々に5速MT車が普及し始めます。運転中のポジションを確認しやすいフロアシフトに比べて、コラムシフトは手探りでのシフト操作になるため、MTが多段化されると操作が複雑になり、運転中に今どのギアに入っているのかわかりにくく、実用面で欠点が顕著となりました。
そのため80年代に入るとドライバビリティ(運転性)を問われないバンやトラック、タクシーなどに採用が限られるようになり、現在ではATの占有率の高まりもあって、日本ではコラムシフトのMT車はほとんど見なくなりました。
90年代のRVブームでコラムシフトは復活するが・・・

一時期、日本車からすっかり姿を消したコラムシフトですが、90年代からのミニバン・SUVブームにより復活を遂げます。フロアシフトでは運転席・助手席から2列目席へとウォークスルーの邪魔になるため、ドライバーやパッセンジャーの移動に邪魔にならないコラムシフトが見直されたためです。
この当時、すでにATの販売比率は80%を超えており(現在は98.5%)、実用車の場合はMTの設定がない車種も現れ、前述のコラムシフトのMT車の弱点がほとんど問題にならなくなったことも影響しています。
しかしながら、2000年代に入るとATの多段化やMTモード付きCVTへの移行、従来の4速ATに比べてシフトポジションが増え、電子制御化が進むと、コラムシフトでは対応が難しくなりました。
また、パドルシフトやオーディオスイッチなどのステアリングコラムに取りつけられる機器が増えたこともあって、次第により操作性に優れるインパネシフトへと移行して行きます。
コラムシフトを採用した代表車種
国産車でコラムシフトというと、年配の人ならトヨタ・クラウン、日産セドリック/グロリアの一部グレード、マツダ・ロードペーサー、三菱デボネア、いすゞ・ヒルマンミンクス、同ベレルなどの高級車を思い浮かべる人が多いと思います。
現在、40〜50代の人なら90年代に一世を風靡した初代エスティマや初代オデッセイ、初代・2代目マツダ・MPVなどに乗られたことがあるかもしれません。また、アメ車ファンなら80年代までのセダンやステーションワゴン、SUVの多くがコラムシフトであったことはご存知のことと思います。

Copyright©️ 2017 山崎龍 All Rights Reserved.

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1950年代までは広く普及し、機能的には不適なスポーツカーにも採用されたコラムシフトですが、最近では採用例が減っています。現在、コラムシフトを採用した国産車は本当に少なくなりましたが、輸入車に目を向けるとシトロエン・グランドC4ピカソなどの一部車種に設定があります。
コラムシフトは軽自動車にも設定がある
スズキ
スズキ ワゴンR

旧通産省(現・経済産業省)の「国民車構想」で生まれた軽自動車は、登場当初は軽便車としての性格が強く、コストの縛りが今以上に強かったことから、コラムシフト全盛期の50〜60年代前半には、意外にもほとんど採用されませんでした。
軽自動車にコラムシフトの採用例が増えたのは、ボンバンやセダンタイプに変わってハイトワゴンが主流となった90年代後半からです。コラムシフトを採用した代表的な軽自動車をいかに列挙します。
スズキ MRワゴン

初代〜3代目ワゴンR(初代はモデル末期の「コラムターボ」が採用)、初代ラパン、初代MRワゴンなど。
ダイハツ
ダイハツ ミゼット2

初代〜3代目ムーブ、ミゼット2など。
ホンダ
ホンダ ザッツ
2代目ライフ、ザッツなど。
スバル
スバル プレオ

初代プレオ、5〜6代目サンバー(AT車のみコラムシフト)。
日産
日産 モコ

初代モコなど。
三菱
三菱 eKワゴン

初代eKワゴンなど。
コラムシフトに代わって主流となったインパネシフト

上記の車種リストを見ればわかる通り、1990年代後半〜2000年代前半にデビューした車種がほとんどです。2000年代後半からは各社の軽自動車は順次コラムシフトからインパネシフトへと改められて行きました。
消え行くコラムシフト

現在では少数派となったコラムシフトですが、乗り馴れると手元でシフト操作ができてなかなか便利です。ですが、先ほども話した通り、MTやATの多段化や自動車の多機能化・電子制御化とはマッチングせず、どうやらコラムシフトはフェードアウトを避けられないようです。
もしコラムシフトのクルマに乗りたいと考えている方がいらっしゃれば、90年代後半〜2000年代前半の日本車か、80年代までのアメ車を狙うべきです。いずれにしても良質な中古車を安価に買えるのは今のうちだけでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...