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軽乗用車初の「ハイブリッド」も!実験車か伝説枠の名車か?スズキ ツインの挑戦【推し車】
ネタ枠の実験車か伝説枠の名車か?スズキ ツインの挑戦
最近、「超小型モビリティ」の最上級カテゴリーとして「超小型モビリティ(型式指定車)」が誕生、トヨタから一部販社による「C+pod」の実験的な一般向けリース販売が始まっていますが、価格面だけではなく税金や車検制度が軽自動車と変わらず苦戦中です。
ならば普通に2人乗りの軽自動車を作ればいいのでは?とも考えられますが、軽トラを除く2人乗り軽乗用車として、スズキから2003年に発売されたのが「ツイン」。
ボディサイズを可能な限り詰め、市販軽乗用車で初のハイブリッド車を設定するなど野心的なクルマでしたが一般受けはせず、現在は半ば趣味車的に所有されているのを見かけるのがほとんどとなっています。
ツインが発売された頃の時代背景や特徴、そして限界とはなんだったのか、スズキ歴史館に展示されているツインハイブリッドの画像を交えつつ考えてみましょう。
2シーターマイクロカーが注目された時代
規格内で最大限大きいクルマを作ってスペース効率を追求する路線に背を向け、1998年10月以降の新規格で要求された登録車同様の衝突安全性能を満たしつつ、可能な限り小さなボディに2シーターと割り切って、2003年にスズキが発売したマイクロカー「ツイン」。
ツインが生まれた時代背景としては、1998年に発売されたヨーロッパのマイクロカー、「スマート フォーツー」があります。
メルセデス・ベンツを擁するドイツのダイムラーAG(現・メルセデス・ベンツ・グループ)のマイクロカーブランド、「スマート」の2シーターカーとして発売された「フォーツー」は、新時代のマイクロカーとして脚光を浴びました。
日本でも2000年に正規輸入販売が始まる以前から並行輸入されており、600ccターボエンジン搭載でリアフェンダーを少し削れば軽自動車規格に収まった頃から軽登録車も販売され、後に正規輸入の軽自動車版「スマートK」も2001年に発売されます。
結局マイクロカーの主流とまではならなかったスマート フォーツーですが、日本でもこの種の「2名乗車で割り切ったマイクロカー」が注目され、2シーターのツインや、運転席背後の後席は子供向けと割り切った3+1シーターカー、トヨタ iQ(2008年)を生みました。
小さく簡素、安価に見せた「ツイン」だったが…
ツインは全幅こそ1,475mmと軽自動車枠(全幅1,480mm)一杯だったものの、同時期のアルトに対してホイールベースは560mm、全長も660mm短く、最廉価グレードの「ガソリンA」はたったの49万円で、アルトバン最廉価グレード「Vs」の55.5万円より一見すると格安。
ただしアルトバンVsがパワステもエアコンもついて4人乗りなのに対し、ツインガソリンAはパワステもエアコンもなしで2人乗り。
同じK6AエンジンでもアルトバンVs(5MT)が車重630kgで54馬力に対し、ツインガソリンAは車重560kg、44馬力とパワーダウンでパワーウェイトレシオも劣り、馬力・トルクともにアルトより低回転型のため意外に走ったそうですが、少々物足りません。
「ガソリンB」を選べばパワステもエアコンもついて3速ATですが、そうなると価格は84万円と一気に跳ね上がり、ガソリンAにエアコンだけオプションでつけても58万円と、同程度の装備ではアルトより割高なクルマになってしまいました。
おまけに座席後ろにラゲッジスペースはあるもののテールゲートはなく、リアウィンドウを開くガラスハッチのみで荷物の積載性は悪いと、ハッキリ言えば「全長が短くて小回りが効く(最小回転半径はアルト4.2mに対し3.6m)以外、あまりいい事がないクルマです。
可能な限りアルトやワゴンRの部品を使うとはいえ、派生車も持たない専用プラットフォームでは安く作れるはずもなく、純粋に市場の反応を見るための実験的なクルマだったといえます。
そのため販売面では不振でしたが、ターボエンジンを搭載して(シングルターボ)でも「ツインターボ」を名乗ったり、アルトより少々軽く小回りの良さを活かしてレースやジムカーナに出たいユーザーにとっては、格好の遊びグルマでした。
軽乗用車初の「ハイブリッド」も設定
実験的な車種ゆえ、メーカーとしてもアレコレ試しやすかったためか、「ガソリンB」よりさらに高価な139万円の「ハイブリッドB」という、軽乗用車初のハイブリッド車もありました。
ただし、エンジンとミッション間の薄型モーターで発進加速をアシストする程度、モーター単独でのEV走行はできないマイルドハイブリッドに近いもので、4速ATも10・15モード燃費こそ発売当時のトヨタ プリウス(初代末期・31.0km/L)を上回る32.0km/Lを叩き出します。
ただし走行用バッテリーは12V鉛バッテリーを16個(8個直列×2)搭載というもので、現在でも鉛バッテリーを使うトヨタ車体のEVミニカー「コムス」の親玉じみたもの。
車重はガソリンBよりさらに130kg重くなったものの、モーターの恩恵で発進加速には問題がなく、リアに積んだバッテリーのおかげで前後重量バランスはむしろ優れていたそうですが、そのために「ガソリンB」より55万円高いのでは、やはり実験車種だったといえます。
「スズキ歴史館」では、ワゴンR FCVと並ぶエコカー枠でツインハイブリッドを展示していますが、おそらく実燃費ではWLTCモード燃費27.7km/Lを叩き出す現行アルト(マイルドハイブリッド)の方が上でしょう。
実用的な軽EVがスズキからも発売されれば、「かつてこういうクルマを作った経験が、現在のエコカーにつながっている」と、再び脚光を浴びる日がくるかもしれません。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...