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「丸目、涙目、鷹目で大迷走?」2代目インプレッサWRX STIから見えるスバルの苦労と苦悩【推し車】

初代のイメージを食い潰した2代目インプレッサWRX STI

「丸目」のGDBインプレッサWRX STi初期型…このアングルで見ればそれなりに引き締まっているのだが

2010年代半ばでランサーエボリューションを店じまいした三菱に対し、スバルは今でもレヴォーグの高性能セダン版的なWRXを販売しており、スバリストを喜ばせています。

しかし元から燃費など高効率化には難のあるスバルですから、CAFE(企業別平均燃費)がらみで2010年代までのようにMTの高性能版WRX STIは売れなくなってしまいました。

そう考えると、21世紀に入ってもWRX STiを売っていたのはアリガタイ事でしたが、2代目であるGDB型インプレッサWRX STIの時点でどうも「ランエボに比べて何か違う、正常進化じゃない」感があり、特にスバルの弱点であるデザインの迷走はひどかった気がします。

思えばここでランエボと大きく差がつき、インプレッサとWRXを分離独立させるまで続くスバルの苦労が始まっていたのかも?

たくましくはなったが…それで良かったのか丸目のGDB初期型

普段よく見かけるようなアングルだとスポーティさを感じさせず、STiバージョンの外装もボテッとした凡庸なイメージを強め、素の「WRX NB」(GDA型)の方がまだマシに感じられたほど

1992年に発売してから8年、当時としてはロングセラーとなった初代インプレッサが2000年にモデルチェンジ、スバリストならずとも当然のごとく大幅な進化を期待していた、当時のカーマニアは正直言って困惑しました。

まず4ドアセダンは「インプレッサWRX」のみとなり、2リッター自然吸気グレードの「NA」(GD9型)と同ターボの「NB」(GDA型)が登場するも、GDA型は250馬力で280馬力バージョンはなく、従来あった1.5リッターの量販グレードがありません。

初代から引き続き、ショートワゴン的な5ドアハッチバック車のスポーツワゴンには1.5リッター車の「I’s」系グレードを設定するもWRXはなし、売れ筋に絞ってグレード整理?とも思われましたが、1.5リッターセダンを使いそうな法人ユーザーは切って捨てるのでしょうか。

280馬力ターボはほどなく4ドアセダンに「WRX STi」(GDB型)が登場、競技ベース車のタイプRAも設定され、ワゴンにもWRXは名乗らぬものの280馬力ターボの「STi」を追加したので、とりあえずスポーツ派には一安心でしたが、パワー以前の大問題が。

ファニールックというほど可愛くもなく、有機的で精悍とも言い難いなんとも微妙な丸目ヘッドランプが、「カッコ悪い!」と酷評されてしまったのです。

同じ丸目でも、WRC(世界ラリー選手権)で活躍していたWRカーのごとく複数の灯火類を埋め込む複眼ならまだ良かったのですが、単に丸いだけで迫力不足のインプレッサWRX STiは、スマートな初代のイメージからかけ離れすぎていました。

「涙目」で巻き返すも、時既に遅しのGDB中期型

「涙目」の中期型インプレッサWRX STiは性能に見合った若々しい俊敏なイメージでGDBのベストだと思うが、これで終わらなかった

GDB初期型は先代GC8や2代目GDB型の5速MTから6速MT化、ツインストロークターボ採用で低中速トルク改善、さらに軽量化などで戦闘力を増した「スペックC」の登場など、中身の充実は進んだものの、デザインでイケてない事には変わりません。

その間にライバルの三菱 ランサーエボリューションはエボVII(2001年2月発売)でベース車のモデルチェンジで真っ当にカッコイイデザイン、インプレッサWRX STiの専売特許だったDCCD(ドライバーズコントロールデフ)を採用。

それでいてGDBより20万〜50万ほども安いのですから、スバルとしてはたまったものではなく、2002年11月には通称「涙目」と言われるフロントマスク大改造を受け、どうにか万人受けする程度にはカッコ良い姿となりました。

これと合わせてセダンWRX NAは分相応の「20S」へグレード名を改め、ワゴンWRXも追加、2003年9月にはワゴンと同じく5ナンバーボディで1.5リッターエンジンを積む「1.5i」シリーズを追加。

これで普通に「大衆向け小型セダンのインプレッサ」、「同小型ワゴンのインプレッサスポーツワゴン」、「セダン/ワゴンともターボ版のインプレッサWRX」、「セダンのみながら、高性能バージョンのインプレッサWRX STi」が出揃いました。

何のことはない、初代末期のグレード構成に近いところまで2~3年かけて戻っただけですが、それまでの珍妙なデザインとラインナップにより、「インプレッサ」としても、「インプレッサWRX」としても、初代で築いたイメージを台無しにしてしまった感があります。

エンジンの性能やボディ剛性など、クルマとしての基本性能は大幅に向上していただけに、この迷走はスバルにとって大きなダメージになっただけでなく、販売店でもそれまで掴んだ手堅いユーザーが流出するなど、苦労したのではないでしょうか(※)。

(※3代目へのモデルチェンジでも、同じようなことを繰り返すのですが)

実際、インプレッサの国内販売は復活したセダン1.5iやワゴンWRXの販売が軌道に乗る2004年まで低迷を続け、その後も巻き返すには長い時間がかかりました。

スプレッドウインググリルの評価が難しい「鷹目」GDB後期型

スプレッドウインググリルを採用しなかったら、戦闘的でカッコよくなっていたのでは…と惜しまれる「鷹目」後期型インプレッサWRX STI(後期型から「STi」ではなく「STI」になった)

2005年6月には再度のマイナーチェンジで通称「鷹目」と呼ばれる、つり上がった戦闘的なヘッドランプデザインを採用、評価はそう悪くなかったものの、やや迫力不足だった「涙目」より精悍なルックスを目指しました。

ただしそこでまたまた問題発生、新たなデザインアイコンとして採用した「スプレッドウインググリル」が、どうにも締まらない印象を与えてしまいます。

同時期にこのグリルを採用した軽乗用車のR2やR1、日本未発売のSUV「B9トライベッカ」で総スカンを喰らったのに比べ、GDB(この時から「WRX STi」から「WRX STI」へと改称)や通常版インプレッサセダン/ワゴンではまだマシでした。

しかし、モデルチェンジやマイナーチェンジの時期がちょっとズレただけのレガシィやフォレスターで採用しなかったのを見ると、インプレッサその他での不評がどれほどだったかがわかるというもので、「鷹目のGDB」もデザイン好評という話はあまり聞きません。

こうなると、どれだけ性能が良くなった、STIからS202〜S204というコンプリートカーが出たと言っても「デザインやグレード構成の混乱に振り回されたインプレッサWRX STI」というイメージばかりが強くなります。

モータースポーツの現場でも初代に比べ見かける機会は減りましたし、今も同時期のランエボVII~IXに比べても中古車価格はパッとせず、GDB型インプレッサWRX STIは性能以前にデザインでかなりワリを食ってしまった世代と言えるでしょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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