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国産スポーツカー界の“水戸黄門”?様式美を極め(すぎ)た4代目マツダ NDロードスター【推し車】
目次
国産スポーツカー界の「様式美」!
マツダ ロードスターほど、国産車の「様式美」を貫き続けているスポーツカーはないかもしれません。
昔の時代劇ドラマなら「水戸黄門」に匹敵するようなお約束の数々、常にキャスト(技術)は新しくなり、同じようで全く異なる物語を紡ぎ続ける…しかし最後は「このPPF(パワープラントフレーム)が目に入らぬか!」(※外からは見えないですよね。失礼!)
何しろ1989年に初代NA「ユーノス ロードスター」がデビュー以来、2023年現在までの34年間を代を重ねこそすれ、途絶えることなく続いてきた国産スポーツなんてそうそうありませんし、世界的にもポルシェ911など数えるほどではないでしょうか?
今回はマツダミュージアムに展示されている4代目「ND」ロードスターの画像を交えつつ、この日本が誇るべきスポーツカーの思い出と現在、そしてこれからを考えてみたいと思います。
- 最新「ロードスター」中古車情報
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本日の在庫数 1176台 平均価格 211万円 支払総額 40~543万円
意外やオンナにモテないクルマ?
筆者とロードスターの接点はそう数多くないのですが、ただ街を走る姿を見るのに留まらない「接近遭遇」のたびに、驚かされる事が多いような気がします。
何しろ今年で49になる筆者が運転免許を取る前から初代NAを売っていましたし、走りに縁がないと眼の前で出会わないものですが、ついにその日がやってきたのは1998年頃、当時勤めていた会社の同僚が、中古のNA6CE(1.6リッター車)を購入した時です。
「おぉ~!これがかの名車、ユーノスかい!」(※)
(※初代NAロードスターはマツダ5チャンネル販売体制時代の「ユーノス」店で目玉車種だったので、その後もちょっと通ぶって「ユーノス」と呼んでいました)
社内のクルマ愛好会的な集まりでステアリングを握らせてもらうと、初めてのFRスポーツがどんな刺激を与えてくれるのか、胸は高まりますが…。
「あれ?こんなもん?」
というのが正直なところで、一般公道を普通に走っていても正直面白くないどころか、夜だったのでリトラクタブルヘッドライトが前方視界をジャマして、走りにくいのです!
新型のNB(2代目)がリトラクタブルを廃止したのは正解だね…と思いつつ試乗を終えましたが、面白かったのは同僚のカノジョもどうやらロードスターを、あまりお気に召さない様子で?
「アンタもスポーツカーに乗るなら、こんくらいわかりやすいクルマに乗りなさいよ!」
と指さしたのは、コトもあろうに筆者が乗ってきた550ccターボのミラTR-XXでした…さすがにそれは思いましたが、純正フルエアロとインタークーラー用のボンネットインテーク、爆音マフラーの方が、小難しいヨーロピアン調オープンスポーツよりウケたのは確かです。
ある時は猛々しく、しかし一番似合うのは優雅な走り
その後ジムカーナだミニサーキットだと走りにハマった筆者ですが、ダイハツ ストーリアX4を駆ってホームコースの「サザンサーキット」(宮城県村田町)というミニサーキットで走り込むのがわが20代後半の青春。
グリップならともかく、ドリフト走行でわがX4に追いつくクルマなど!(当時はドリフトとグリップが混走でした)とドリ車はナメてかかってたのですが、ある日猛烈な白煙を上げながら高速ドリフトで迫る1台のNAロードスターが!
サザンのドリ車って大抵はまず滑らせて楽しむのが第一、スピードは二の次でしたが、そのNAロードスターはバックミラーで見てると進入から立ち上がりまで流しっぱの踏みっぱ!
うわぁ、あれが本物の高速ドリフトか、こりゃタマラン…とラインを譲ったらあっという間に抜いていきましたが、あれだけ猛々しいロードスターはそうそういませんね。
それから時は流れて2010年代、同じサザンサーキットで「ジムカーナ風」タイムアタックイベントを主催していた筆者は、2代目NBロードスター、それも1.6リッター車のNB6Cがやたらと速いのに気が付きます。
軽自動車向けに設定した細かいコースで、ストレートやコーナー、スラロームもターンも見てくれは速くないのにタイムは抜群のブッチギリ、いわゆる「つなぎの上手さ」というやつでロスせず無駄のない優雅な走りでオーバーオールを叩き出すんです。
そもそもパワフルさが売りではないロードスターは、こういう「いぶし銀の走り」がよく似合い、腕の違いもあってか、同じロードスターでも2リッターでパワフルな3代目NCより、テンロクのNB6Cの方がいいタイム出てました。
そういうのを考えると、やはり現行の4代目NDロードスターがスケールダウン&ダウンサイジングと軽量化、ロスの低減を追求したのは正解なんでしょうね。
原点回帰+正常進化を2で割らないのがNDロードスター?
さて、いよいよ現行NDロードスターとの遭遇ですが、これもサザンサーキットのフリー走行で出会ったドライバーで、まだ走り始め、NDも買ったばかりのピカピカで慣れないサーキット走行という感じでしたが、とにかくしなやかに動いてスッと前に出るんですね。
「グラム作戦」と呼ばれた徹底的な軽量化でNC比で100kgも軽量化し、全幅こそ5ナンバー枠に収まっちゃいませんが、全長もホイールベースも縮んでコンパクト。
前後オーバーハングは短く、重心から離れるほど軽い作りになっていますからコーナリングの姿勢に全く無理がなく、後輪(駆動輪)にしっかりトラクションかかって前に出るのは初代NA以来の伝統、PPF(パワープラントフレーム)の恩恵でしょう。
ミッションとリアデフをフレームで結合するPPFはFD3SやRX-8でも使いましたが、今はロードスター専用になっていて、よくもマツダは作り続けているものです。
CX-60が発売されるまでマツダのFR車なんて他にないのに、ミッションも内製ですし、マツダがスポーツカーにかける信念がハタから見てるだけでも伝わってきます。
軽くなったという意味では「原点回帰」なんですが、SKYACTIVテクノロジーを全面採用した第6世代マツダ車群の1台として、ロードスターというクルマをキッチリ正常進化させてますし、それで何かを犠牲にしたり、妥協して2で割ったりしてません。
一時期、トヨタもこの種の1.5リッター級FRスポーツに色気を出し、「S-FR」というコンセプトカーを発表しましたが、考えてみればオープンスポーツとはいえNDロードスターがすでにあるんですから、市販を断念してお蔵入りにしたのは正解だと思います。
これがホンダや日産のクルマならともかく、今のマツダはトヨタ陣営のメーカーですし。
パワフルなNCロードスターRHT後継車、ロードスターRFも
このクルマは直にスポーツ走行を見た事がないのですが、ソフトトップ・オープンスポーツ版に対するハードトップ版、ロードスターRFもよいクルマなようです。
もともと先代NCで電動ハードトップのRHT(リトラクタブル ハードトップ)の売れ行きがよく、NDでも設定されたモデル。
ただしNDではダウンサイジングとシートの後退で乗車スペース後方に十分な格納スペースがなく、ルーフのみ格納するRF(リトラクタブル ファストバック)になってますが、30年以上前のホンダ CR-Xデルソルと比べると面白いですね。
双方のルーフ格納動画を見ていると、CR-Xデルソルの電動トランストップがウィーン、ガション!と格納部がルーフの受け入れ体制整えてる間に、ロードスターRFはサッサと格納部が開いて収納を終えており、技術の進歩を感じさせます。
走りについては、1.5リッターエンジンを積むソフトトップ版国内仕様と違い、RFは2リッターなのでジムカーナではNDロードスターのイタリア版アバルト124スパイダーや、GR86/BRZなどと同じPN3クラス(1.5リッター以上のFF/FR車)で参戦中。
スペック面ではエンジンパワーでライバル車に劣るものの、しなやかな動きのソフトトップ版に比べ重厚感も感じさせますが、そこは2リッターエンジンのトルクの恩恵か、一歩も引かないイイ勝負で、全日本ジムカーナ2023第1戦(もてぎ)でもクラス優勝しています。
1.5リッター未満の後輪駆動車で戦うPN2クラスもソフトトップ版NDロードスターのワンメイクとなっていますし、ワンメイクレースの「ロードスターパーティレース」もありますし、舗装路でモータースポーツを手軽に楽しむなら、NDは最高の選択肢のひとつです。
今後のロードスターも、まだまだ楽しませてくれるのか?
現行のNDへモデルチェンジした際、「次のモデルチェンジはまた10年後くらい」と言われており、2015年発売でのNDもそろそろモデルチェンジへ向けた動きが本格化する頃です。
そこで「2025年にモデルチェンジしたとして、2035年まで売れるのだろうか?さらにその先は?」と心配する声はあり、マイルドハイブリッドで電動化した事にして、純エンジン車帰省を免れるのでは…など、さまざまな予想があります。
特に2035年を境に内燃機関の締め出し(新車販売禁止)を目論んでいたEUで売れなくなると、「日本で2割、残り8割は北米とヨーロッパで半々」と言われていた世界販売台数の4割が失われるため、ロードスターの存亡に関わるところでしたが。
ドイツメーカーの反対もあって、2035年以降も「カーボンニュートラルが可能な代替燃料を使った内燃機関は当面OK」という事になりました。
バイオガソリンを使ったMAZDA2でスーパー耐久レースに出たり、代替燃料にも熱心なマツダですから、これでしばらくは安心してSKYACTIVテクノロジーを使った純内燃機関型のロードスターを販売できるはずです。
筆者のように50歳目の前のドライバーはともかく、現在の20~30歳代のドライバーはまだまだこれから20年でも30年でも、イケるところまでエンジンをブン回してFRスポーツを楽しんじゃいましょう!
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...