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「サバンナにレシプロエンジン積んでみた」実はCVCCより早く登場してた環境対策車・マツダ グランドファミリア【推し車】

サバンナにレシプロエンジンを積んだ「グランドファミリア」

当初は「サバンナと同ボディでもレシプロの格落ち」だったグランドファミリアだが、1972年に追加したSシリーズではサバンナと同等の車格・装備となっていた

1970年代に発売されたマツダ車でロータリーエンジン専用車は?と言えば、ロードペーサーのようにマニアックな名前が出るかもしれませんが、大抵は「サバンナ」と答えるかもしれません。

ただ、ロードペーサーはオーストラリアのGMホールデン製レシプロエンジン車「プレミア」がベースですし、サバンナも実はレシプロエンジン版があって…というわけで今回紹介するのはサバンナの姉妹車である「グランドファミリア」。

MOBY編集部がAIに聞いた、「30〜50代のクルマ好きが興味を持つ名車」にもなぜかノミネートされていますが、その歴史や役割を思えば、通好みするクルマかもしれません。

意外とロータリー一辺倒ではなかったマツダ

角型2灯ヘッドライトで丸目4灯のサバンナと印象を変えていたグランドファミリア前期型

軽自動車のR360クーペで4輪乗用車市場へ参入した頃のマツダは、オート3輪を含めた商用車需要が旺盛な頃こそトヨタすら販売台数で上回る時期があったものの、戦前から4輪車を作って実績を作っていたメーカーに比べれば、売りに乏しかったのは確かです。

そこで、まだ西ドイツで完成したばかりのヴァンケル式ロータリーエンジンのライセンスを買って実用化に励み、世界初の2ローター実用車としてコスモスポーツを、その実用的バージョンとして2代目ファミリアにも搭載するなど、順次ラインナップを拡大しました。

しかし、全く新規のエンジンであり、その高性能や将来性はともかくユーザーが求める信頼性や経済性という面で不安はあり、マツダとしてもカペラやルーチェにもロータリーエンジンを搭載しつつ、従来型のレシプロ(ピストン)エンジン版も残しています。

1971年にファミリアとカペラの中間車種として「サバンナ」が登場した時もレシプロエンジン版を設定したのは同様でしたが、既存車種と異なったのはレシプロエンジン版に「グランドファミリア」と、全く別な車名を与えたことでした。

そもそもボディや内装はほぼ同一、前後の外装デザインや、グレードによって内装に差異があるとはいえ、「ロータリーではないサバンナ」には違いないグランドファミリアですが、当初のエンジンはファミリアプレスト(2代目ファミリア)にも積まれた1,300ccのみ。

よりハイパワーな10Aロータリー(当初)を積むサバンナを1,600cc相当として、車格も1ランク低いクルマとしてのスタートでした。

ポジションとしてはスポーティで高性能なサバンナに対し、地味で実用的といった具合で、ライトバンもグランドファミリアにのみ設定されています(※)。

(※ライトバンボディは後にサバンナスポーツワゴンとして転用され、一般販売されないごく少数ながら、バン登録の「サバンナバン」もあった)

作っておいてよかったレシプロ版?!

AP(低公害型)エンジンを積んだ後、後期型で丸目2灯ヘッドライトのアメ車風デザインになったグランドファミリアだが、「ロータリーではなくサバンナも名乗らない」のは、大きすぎるハンデだったらしく、地味な存在で終わったのは残念

いわば「ロータリーのサバンナがコケた時の保険」としてラインナップされたグランドファミリアですが、じきに「作っておいてよかった!」と思える事態が発生します。

発表当初は実現不可能とすら言われたアメリカの厳しい排ガス規制、通称「マスキー法」こそ、サーマルリアクター式と呼ばれる方式で軽くクリアー、未来のエンジンとしての面目を保ったロータリーエンジンですが、1973年に第四次中東戦争が起きると運命が暗転。

戦争の影響であらゆる石油製品の価格が高騰、ガソリンも当然のごとくで、大排気量のアメリカンV8エンジンより燃費が悪いと言われたロータリーは途端に毛嫌いされてしまいます。

やっぱりサバンナのレシプロエンジン版を作っておいて正解だったんだよ…と、にわかに脚光を浴びたのがグランドファミリアで、1973年には途中で追加された1,500ccエンジンから1,600ccの、それもAP(アンチポーリーション=低公害版)へと更新。

初代ホンダ シビックCVCCがレシプロエンジンではいち早くマスキー法のクリアを発表していたものの、グランドファミリア1600APの発売はシビックCVCCより早く、「レシプロエンジンで初の昭和50年排ガス規制クリア」という栄誉を手にしました。

もっとも、マツダ自体がロータリーのイメージが強すぎて販売不振に陥っている中、ロータリースポーツとして脚光を浴びすぎたサバンナの姉妹車として、グランドファミリアも肩身の狭い想いをしたようです。

あるいは「ファミリアの上級版というより、サバンナの格落ち車」という印象もあってか、オイルショック以降に販売が好調になったという話は残っていません。

1975年には丸目2灯ヘッドライト化など思い切ってアメ車風のフェイスリフトを敢行するも、1977年にモデルチェンジした4代目ファミリアが経済的で実用性の高い2BOXハッチバック&ワゴン/バンとして成功すると、グランドファミリアの役目も終了。

恵まれた生涯とは言えなかったものの、ロータリーエンジンの不振で苦しい時期のマツダを、他のレシプロエンジン搭載車とともに支えた、地味な功労車ではありました。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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