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CX-5

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「これが技術大国日本の実力か!」世界が度肝を抜かれた初代マツダ CX-5とは【推し車】

日本国内で初めて成功した、マツダCXシリーズSUV

マツダ CX-5(初代)

初代CX-5が2012年に発売される以前のマツダは、「スポーティで操る楽しさは認めるけども、今ひとつ方向性が定まらずにどこへ行くのかよくわからない」というイメージでした。

ロータリーエンジンは伝説として語られるも将来性はなく、ロードスターの素晴らしさは認めるものの実用車ではなく、さりとてスポーツカーメーカーではなく本質は大衆車メーカーであり、その限りにおいては「決め手がハッキリしない」メーカーだったのです。

その決め手をハッキリさせたのが初代CX-5であり、同社のCXシリーズで初めて日本国内でも成功、画期的な「SKYACTIVテクノロジー」を背景にしたプレミアム性も高まり、マツダという自動車メーカーのイメージを根本的に変えていきました。

最新「CX-5」中古車情報
本日の在庫数 3159台
平均価格 229万円
支払総額 51~401万円

SKYACTIVテクノロジーを全面採用した、新世代主力車

他社のSUVとは明らかに異なる、うねるような躍動感あるデザイン

かつて発売したCX-7(2006年)は日本国内だとパッとしない売れ行きで、高い評価を受けた北米ではミニバン(MPV)後継となる3列シートSUVのCX-9も生まれますが、マツダの国内向けSUVはトリビュート(2000年)以来、どうも冴えない状況です。

2000年代のマツダは1990年代に直面した深刻な経営危機を脱し、米フォード傘下で順調に回復、ファミリアからアクセラなど、伝統の車名も改めてイメージ回復に努めますが、これがあるから積極的にマツダを選ぼうという、「決め手」がありません。

そこで、従来は異なる時期に開発された各部品の集合体でしかなく、全体のバランスを撮るのが難しかったクルマづくりそのものを見直し、全てをまとめて一新、車両全体の最適化、品質向上、開発速度アップする新たな自動車開発技術を生み出します。

それが「SKYACTIV(スカイアクティブ)テクノロジー」の名の下に、自動車を構成する各要素のモジュール化で、これを組み込んで開発されたクルマは、全て同一の、高い水準での品質と性能を保証するというコンセプトでした。

後にトヨタが新設計アーキテクチャ「TNGA」で同じ路線に転じるなど、各メーカーが新時代へ対応するコンセプトを、マツダはいちはやくまとめ上げていたのです。

問題は、2010年代に入って既存車への部分的採用が始まったSKYACTIVテクノロジーを、どの段階で、どの車種へ全面採用するかで、それは単なる新型車ではなく、将来のマツダ車全てにとっての原点になるような車種でなければいけません。

そして白羽の矢が立ったのは、それまでのマツダにとってパッとしなかったイメージが強いクロスオーバーSUVであり、人々は驚きと期待が半々というモヤモヤを抱きつつ、その新型車を待ち受けました。

画期的なクリーンディーゼルSKYACTIV-D

初代CX-5へ搭載されたクリーンディーゼルターボエンジン、SKYACTIV-D2.2(SH-VPTS型)

2012年2月に発売された新型SUV、初代CX-5は初のSKYACTIVテクノロジー全面採用車種でしたが、従来車種ともっとも異なってわかりやすく、人々をもっとも驚かせたのは新型の2.2リッタークリーンディーゼルターボエンジン、「SKYACTIV-D2.2」でした。

ガソリンエンジン並の低圧縮比を採用することで軽量化…など技術的な説明にはチンプンカンプンでも、4リッター自然吸気エンジン並の最大トルクを低回転から発揮しつつ、高回転まで吹け上がるフィーリングは、ディーゼルエンジンのイメージを覆したのです。

さらに、高性能エンジンにありがちな環境性能の犠牲どころか、その頃にはクリーンディーゼルで一般的になっていた、定期的に尿素を補充しないと排ガス浄化が機能しない尿素SCRシステムなど、それ自体の価格も運用コストも高価な排ガス処理装置が不要。

一体どんなマジックを使ったのか、それとも検査室だけで実現する規制逃れなのかと怪しむ声もありましたが、環境省などが実施した実車テストにおいて、SKYACTIV-D2.2は他社のクリーンディーゼルが苦戦する中、何の特別な操作もなしに規制基準をクリアしました。

もちろん、画期的な機構につきものの初期不具合からは逃れられず、「SKYACTIV-Dは高性能だけど劣化も早い」という評価もありましたし、そもそも内燃機関自体がBEVへ取って代わり新車販売できる国・地域が限られる斜陽の時代になった、という問題はあります。

しかし、ライバルが苦戦したクリーンディーゼルをいとも簡単に(ハタからはそう見えた)手なづけた技術レベルは、マツダというメーカーを好むと好まざるとに関わらず、無視できない存在へと引き上げたのです。

今見ると未完成の「魂動」デザイン

ヘッドライトデザインの処理など、現在の視点からは古臭さが混在していると感じるが、それでも当時はものすごく新しく感じた

一方、2010年代からのマツダ車が新たなデザインテーマとした、ダイナミックな曲線による躍動感あふれる「魂動 ~Soul of Motion~」の全面採用車種になったとはいえ、現在の視点から見るとかなり中途半端、何か取ってつけたようなエクステリアデザインです。

これはデザイン決定の最終段階にかろうじて間に合ったため、細部の変更にとどまったからとも言われますが、初代CX-5の発売当時はこれでも抜群にスタイリッシュで、フロントマスクを隠せばどのクルマかわからないと言われた当時のSUVの中でも別格でした。

2代目CX-5(2016年)が発売された時、「ああ本当はこういう姿を目指していたのだな」と納得するほど、シャープで知的なデザインへと一変しており、2020年代に入った現在の視点だと、初代CX-5は「何か古臭い、ズングリしたSUV」という印象を受けます。

特に中途半端にパッチリして有機的なヘッドライトのデザインが影響を及ぼしていそうですが、もし部分的にでも「魂動 ~Soul of Motion~」の採用がなければ、CX-7に近いデザインになっていたと思われ、第一印象からの注目度はだいぶ違っていたでしょう。

独特の存在感を発揮する、現在のマツダの原点へ

初代CX-5は、マツダの重要な歴史的転換点に立ち会ったクルマとして今後も語り継がれていくに違いない

昔ながらの価値観を覆す画期的なSKYACTIV-Dを搭載し、クラスレスな動力性能とスタイリッシュなデザインがウケたCX-5は当時のヒット作となり、マツダというメーカーを根本から変えていきました。

もともと、何かひとつ決めると一直線に突っ走る傾向のあるメーカーだけに、SKYACTIV テクノロジーへの転換が急速に進むと同時に、日本のみならず世界的にヒットしたCX-5をはじめとするCXシリーズSUVは、マツダ社内でも基幹車種と定められます。

北米同様、日本でもミニバンを廃止して3列シートSUV(これも2代目CX-5ベースの「CX-8」)へ転換され、新たな直6エンジンもSUVから(CX-60・2022年)になるなど、マツダの最新技術が真っ先に搭載されました。

ライバルの追随によってかつてほどのインパクトはないとはいえ、その中心にあるのは今でもCX-5であり、マツダの成し遂げた技術的成功により、トヨタグループ陣営の各自動車メーカーの中でも、独自性のフル発揮を認められた別格の存在として扱われています。

もちろん、ロータリーエンジンやロードスターといった「三つ子の魂百まで」な部分は残っているものの、CX-5の成功がなければ、それらの伝統を守ったうえに、マツダという自動車メーカーが現在のような形で残ることはなかったでしょう。

それほどまでに、初代CX-5は歴史的に意義深いクルマです。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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