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【ジャガーXE300スポーツ試乗記】英国紳士なスポーツセダンはこんな人に乗って欲しい
目次
まずは「ジャガー」という自動車メーカーについて。
こちらはジャガーのエンブレム。動物のジャガーのデザインです。ジャガーのブランド・ロゴにもなっています。現在のジャガーの車の後ろに飾られます。1990年頃までのジャガー車には、立体的な彫刻のようなジャガーがフロントに飾られていました。(エンブレムという名ではなく「ボンネット・マスコット」「オーナメント」などと呼ばれていました)今は、安全上のリスクがあるため、ほとんどの自動車メーカーもフロントに立体的な造形をしたボンネット・マスコットがなくなってしまいました。(ロールスロイスは、今も「スピリット・オブ・エクスタシー」と呼ばれるオーナメントが存在しています)
こちらのジャガーの顔のマーク、グロウラーはジャガーのどの車のフロントグリルにも飾られています。昔のジャガー車にもついている伝統のマークです。
こちらは動物のジャガー。ネコ科ヒョウ属に分類され、肉食。体長は大きいもので180cmを超え、ネコ科の動物ではトラやライオンに次ぐ体の大きさとなります。
こちらは、ジャガー XE 300スポーツ。XEは現在、ジャガーから販売されるスポーツ・セダンです。Dセグメントと呼ばれる高級セダンに属します。全長は、4,680mm、現行型トヨタ クラウンの全長4,910mmより20cmほど短い、日本の道路事情にマッチした大きさとなっています。
前置きが長くなりましたが、ジャガーとは、イギリスの高級自動車メーカーです。創業は1922年(大正11)、創設者ウィリアム・ライオンズ。当時は「スワロー・サイドカーカンパニー」と呼ばれる文字通りサイドカーのメーカーで、ジャガーの名が冠されたモデルが登場したのが1935年、「ジャガー・カーズ」となります。
創業者の「ライオンズ」はジャガーと同じ肉食動物を連想させますが、メーカー名と関係があったのかどうかは全く不明です。動物のジャガーの持つ高い身体能力、スピード感やスマートなスタイルなどがマッチしたという説が有力ですが、定かではありません。
ちなみに、日本語では「ジャガー」と書かれますが、よりネイティブに近い発音は「ジャグァー」となります。「ジャグァー」という文字を見ると徳大寺有恒さんの名を思い起こしたあなたはかなりのクルマ好きでしょう。Googleで「ジャグァー」と検索してみてください。検索結果上位に「徳大寺有恒」があります。
すみません、また話が逸れてしまいました。お話は元に戻しましょう。
ジャガー車の特徴は、草食動物を俊敏な足で狙うスリムでスマートなジャガーのように、高い性能を持ったスマートでかっこいい車だということです。迫力あるデザインで押し出しが強く、いかつい高級車を作るメーカーではありません。
60年前のジャガー車と比べてみよう。
こちらは、1960年代に大ヒットしたジャガー Eタイプ。長いフロントが美しいです。
キュッと上がったお尻も素敵です。ジャガー Eタイプは「世界一美しいクルマ」とも世界中で評されており、今でも高い人気を誇ります。ジャガーのクルマ作りを象徴するモデルです。
現在のジャガー車も、昔の名車の血が流れるデザインではないでしょうか。獲物を狙うジャガーのイメージです。
フロントマスクは精悍な顔つきです。しかし、「私、お金持っています」的な高級感も、「君、道を開けなさい」と言わんとばかりの後方から無言の圧力をかけるような押しの強さもありません。
ヘッドライトだけ見てしまうと、目つきが悪いかもしれません。
「300スポーツ」のエンブレムは、必要最小限の主張。
試乗車のボディカラーは赤ですが、冠婚葬祭どれにでも対応できるスマートさがあります。簡単に言えば、高級車ですが「いやらしくない」。
リアのデザインは、セダンの正常形。テールランプ内の半楕円形のラインは、ジャガーのリアデザインのアイデンティティ。
ジャガーXEは「英国紳士」
真横からみても端正なデザインです。仕立ての良いフルオーダーメイドのスーツをビシっときめた英国紳士のよう。その走りも紳士的でした。
試乗車は「300スポーツ」というグレード名がついています。この「300」とは300馬力のことです。300馬力のスポーツセダンと聞くと、スポーツカーに乗り慣れていない人は身構えてハンドルを握るのが怖いと思うかもしれませんが、そんなことは全くありません
内装も「どうだ!スポーツカーだぞ!」いうコックピットのように、いかにも速く走りなさい的な演出はなく、落ち着いています。ジャガー XE 300スポーツは、エンジンのパワーの出し方やトランスミッションのシフトチェンジのタイミング、サスペンションの柔らかさ、硬さなどが段階的に調整可能。アグレッシブなモードを選ばなければ、普通にアクセルを踏んでいる限り、弾丸のように車がダッシュすることはありません。
しかし、スポーツ走行モードでアクセルをしっかり踏めば、獲物を追いかけるジャガーの如く、一気に加速していきます。300馬力は伊達ではありません。かといって、エンジン音や排気音が爆音になることはなく、そこそこの音を出しなら至ってスムーズに速度を上げていきます。スーツを着込んだ英国紳士が実はアスリートだった、といったところでしょう。
個人的にツボったのは、加速してアクセルを緩めたときターボの過給圧が抜ける「プシュッ」という音。窓を締めて走れば耳にその音は届きませんし、窓をあけていても周囲がうるさいときは耳を済まさないとわかりません。その音を聞くために無駄に窓を全開にしてしばらく走ったほどでした。その音は「あぁ、スポーツカーなんだな」と耳で感じさせてくれます。
「猫足」ジャガー
乗り心地もスマートです。スポーツセダンは乗り心地がよくない印象をお持ちの方が多いかと思いますが、ジャガーXEは違います。
ジャガーの車は昔から「猫足」と言われています。ネコ科ジャガーと洒落ている部分かどうかの話は割愛。高い塀から飛び降りても平気なしなやかな猫の足のようなのが、ジャガーの足回りです。ふわふわな乗り心地でもなく、船のような乗り心地でもありません。
しっかりと地面をタイヤが掴んで、荒れた路面はしっかりと衝撃を吸収、イメージ的な擬音で表現するなら、普通の車が大きな音で「どすん!」とするところ、ジャガーならボリュームを絞った「…どっすぅん…」でしょうか。わかりにくいですよね。
ジャガーの車はジャガー。他に似たような性質を持つメーカー、モデルはありません。主張は強くありませんが、きちんとした高級車であることを見る人、乗る人にしっかりと伝えることができる車です。
イギリス的おもてなしの内装
ジャガーXEの内装デザインは日本車的ではなく、かといって豪華絢爛さもありません。「300スポーツ」というグレード名ですが、「ザ・スポーツ」というデザインでもなく、それでいて安っぽさを感じさせないしっかりとした作り。センターの横長ディスプレイや、シフトチェンジがダイヤル式といった特徴はありますが、落ち着いた大人の室内空間だと乗る人に感じさせるでしょう。
これが英国式、英国車的おもてなしなのでしょうか。さまざまな角度からジャガーXE 300スポーツの内装を撮影したので、じっくりとご覧ください。
後席の快適性は特筆すべき点です。しっかりとした面積のある座面です。後席の座面の広さは同乗者へのもっとも重要なおもてなしポイント。座面が広いと体を支える面も広くなり、長時間の乗車の疲れにくさに貢献します。
後席にもきちんとエアコン送風口があります。ルーバーの下にはシートヒーターのスイッチがあります。真冬の後席も快適です。
試乗車はサンルーフを装備。
サンルーフは後席上部まで。晴れているときは気分爽快です。
きちんとペットボトルが置けて、且つ、運転時に邪魔にならないというのは、地味ではありますが大事なこと。
ジャガーXE 300スポーツのトランク。しっかりと広いです。
奥行きもあってたくさんの荷物が詰めます。
ドアミラーにLEDの方向指示器を内蔵。
ドアミラーの下部の普段目につかない場所にカメラと夜になると足元を照らすライトを装備。
ジャガーXE 300スポーツに丸一日乗って思ったこと。
インターネットでジャガーについて調べてみると、昔のジャガーはよかった、今のジャガーは…などというネガティブな声が散見されます。しかし、これはあくまで過去のモデルと比較したものであって、現在販売中のモデルがダメというイコールな話しではないでしょう。もちろん、熱心なジャガー・ファンにしてみれば、ネガティブな印象を持ってしまうことは否めませんが、2020年代にさしかかろうとする現在のジャガーのスポーツセダンという角度で見れば、十分に魅力があるのではと思いました。
ジャガー XEはこんな人に乗って欲しい。
宇野の独断と偏見ですが、ジャガーXEは次のような方々にぜひとも乗っていただきたいと思います。
・誰が見ても「高級車」とわかる車には乗りたくない人
・「羊の皮をかぶった狼」「能ある鷹は爪隠す」ということわざが好きな人
・複数車線ある道では、車の流れが速い方で走りたい人
・ジェントルマン
スペック表と価格
車名・グレード | ジャガー XE 300スポーツ |
全長 | 4,680mm |
全幅 | 1,850mm |
全高 | 1,415mm |
ホイールベース | 2,835mm |
車両重量 | 1,680kg |
乗車定員 | 5名 |
エンジン種類 | 2.0L直列4気筒DOHCターボ |
最高出力 | 221kW [300PS] / 5,500rpm |
最大トルク | 400N・m [40.8kg·m] / 1,500-2,000rpm |
使用燃料 | 無鉛プレミアム(ハイオク) |
駆動方式 | FR |
トランスミッション | 8速AT |
JC08モード燃費 | – |
WLTCモード燃費 | – |
サスペンション(フロント) | ダブルウィッシュボーン |
サスペンション(リア) | マルチリンク式 |
タイヤサイズ(フロント) | 試乗車:235/35ZR20 92Y(20インチ/ピレリP0) 標準:225/40R19(19インチ) |
タイヤサイズ(リア) | 試乗車:265/30ZR20 94Y(20インチ/ピレリP0) 標準:255/35R19(19インチ) |
車両本体価格:738万円
※ジャガーXE 300スポーツは2019年モデルで現在はカタログ落ちしています。同じ300馬力のエンジンを積んだジャガーXE HSEが現在のラインナップ。この新車車両価格は682万円より。詳しくは下記の公式WEBサイトをご覧ください。
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...