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3代目FD2シビックタイプRへ搭載するため、専用チューンが施されたK20A
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ホンダの「K20Aエンジン」とは?搭載している車やK20Cとの違いを解説

考え方によっては「最後のホンダエンジン」と思ってもいいだろう

3代目FD2シビックタイプRへ搭載するため、専用チューンが施されたK20A
3代目FD2シビックタイプRへ搭載するため、専用チューンが施されたK20A

現在もなお、ターボ仕様のK20Cが「世界最速のFFスポーツ用エンジン」として進化を続けている、ホンダのK型エンジン。

ただし、K20Cを搭載してからのシビックタイプRは4代目FK2が限定販売で販売店が早々に押さえ、プレミア価格で売る「資産化」してしまい、限定を外した5代目FK8や現行の6代目FL5も、元から高価なうえに諸事情で生産台数は少なく、容易に入手できません。

懐かしき初代のシビックRやインテRはどこでも走っていた安価なクルマでしたが、それは「タイプRの技術をいつでも誰でも味わえるように」というホンダの配慮があったからで、現在のタイプRとは根本的に異なります。

そういう意味では、B16BやB18Cの後継として2代目以降のインテグラタイプやシビックタイプRに積まれた通称「K20A specR」は、「ユーザーにホンダとは何かを実感させてくれた、最後のタイプR用エンジン」だったと言えるでしょう。

最新エンジンでもタイプRを味わってほしい

DC5インテグラタイプRとともに、初期のタイプR仕様K20Aを搭載した2代目EP3シビックタイプR
DC5インテグラタイプRとともに、初期のタイプR仕様K20Aを搭載した2代目EP3シビックタイプR

タイプR仕様のK20Aも存在したホンダK型エンジンは、まずは2000年に初代ストリームへ搭載、その後アコード、ステップワゴン、オデッセイ、CR-Vと2~2.4リッター級のホンダ車の多くへ搭載された事でもわかる通り、基本的には平凡な実用エンジンです。

確かに可変バルブ機構のi-VTECは、従来のカム切り替え型でバルブタイミングとバルブリフト量を切り替える「VTEC」に加え、位相変化型で進角・遅角を電子制御する「VTC」も組み合わせ、より緻密な制御を可能にしています。

しかし、さすがに2000年代ともなるとそれらはホンダの独壇場とは言えない技術で、ホンダ自身が普通の実用エンジンとして扱っているように、K型も「効率の追求で動力性能と環境性能の両立を図ったエンジン」でしかありません。

ただしそれは、VTECを初めて組んだB型エンジンから、「実用エンジンをベースなので安く作れ、多くのユーザーに提供できるメーカーチューンド」という点は不変。

「その実用エンジンをホンダが本気で仕上げたら、どんなエンジンになるか見せてやるよ!」というのが、過去の「SiR」グレードや、タイプR用のエンジンだったと思います。

K型エンジンにもタイプR仕様のK20Aが存在した理由も同じで、搭載車が大型化してもタイプRとしての性能を存分に発揮させるべく、2リッター級の新型エンジンがそのベースに選ばれたということでしょう。

つまりK20AのタイプR仕様、通称specRとは、「ホンダがどこかでテストした結果を自慢するためのエンジンではなく、多くのユーザーに味わってもらうためのエンジン」でした。

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モータースポーツで苦戦するK20A specR

期待とは裏腹に基本性能が伸び悩み、改造範囲の狭いカテゴリーでは先代DC2/DB8に及ばなかった2代目DC5インテグラタイプR
期待とは裏腹に基本性能が伸び悩み、改造範囲の狭いカテゴリーでは先代DC2/DB8に及ばなかった2代目DC5インテグラタイプR

タイプRへ初搭載されたK20Aは、2001年の2代目インテグラタイプR(DC5・220馬力)と2代目シビックタイプR(EP3・215馬力)、そして一般ユーザー向け最後のタイプRと言える3代目シビックタイプR(FD2・225馬力)で終わりを迎えます。

FD2にはさらに無限チューンのシビックMUGEN RR(240馬力)があるものの、これはチューニングカーとして別枠に考えていいでしょう。

EP3同様、FD2と同時期にヨーロッパからわざわざ輸入した3ドア版シビックタイプR(FN2・201馬力)も、K20Zというちょっと別物のエンジンですから除外します。

DC5、EP3、FD2はいずれも国内モータースポーツの各シーンで活躍し、特に筆者がいちドライバーとして参戦していたジムカーナでは、2リッターのK20A搭載車が1.8リッターのB18C specRを積む初代インテグラタイプR(DC2・DB8)後継として大活躍しました。

ただし…コストダウンが理由と言われますが、当時のホンダはインテグラにせよシビックにせよ、4輪ダブルウィッシュボーンサスペンションをやめてしまい、フロントはストラット式に変わっていました。

さらにK20Aは従来のB型エンジンとはエンジンの回転方向が逆になり、搭載位置も右側(右ハンドルだと運転席側)から左側へ変更、「運転席と逆側にエンジンがあるので、左右バランスがよい」というメリットがスポイルされています。

重量バランスはセッティングで詰められますし、何なら生産コストや効率面では右側エンジンの方が自然で設計も楽だったはずですが、サスペンション形式の変更は基本性能に大きく関わる部分で、どうにもなりません。

実際、かつてのジムカーナ主力クラス、改造範囲の広い「A車両」時代はK20Aのエンジンパワーにモノを言わせ、各種の新型タイプRへ勝利を味合わせる原動力にはなったものの、ほどなく改造範囲の制限された「N車両」が主力になると、アッサリ消えました。

チューニング次第でどうにかなるものの、その制約が大きければ初代DC2(3ドア)/DB8(4ドア)インテグラタイプの方が基本的な戦闘力は高く、ジムカーナではDC5やEP3など誰も乗らなくなったのです。

スーパー耐久などレースではまだ活躍できましたが、改造範囲が狭くて市販状態での性能が大きく左右するカテゴリーほど、いかにK20Aで大パワーを発揮しても無駄でした。

FD2シビックタイプRで開花したK20A specRの才能

高性能エンジンのポテンシャルを発揮すべく全てが注ぎ込まれ、それでいて300万円以下と安かった最後の「俺達のタイプR」、3代目FD2シビックタイプR
高性能エンジンのポテンシャルを発揮すべく全てが注ぎ込まれ、それでいて300万円以下と安かった最後の「俺達のタイプR」、3代目FD2シビックタイプR

ホンダとしても、「市販車へ大きく手を加えねば話にならないタイプR」ではイケないと思ったのでしょう。

元祖4ドアタイプRのDB8インテグラタイプR4ドア直系、そしてDC5やEP3の後継をも一手に引き受け2007年に発売されたFD2型では、足回りこそ先代同様のフロントがストラット、リアがダブルウィッシュボーンだったものの、思い切ったセッティングを行います。

すなわち、通常の街乗りでは支障が出るどころか、明確に「不快」なレベルにまで締め上げたガチガチの足として、その代わりにサーキット走行やジムカーナ走行で実力を発揮するセッティングとしたのです。

「不快」といってもミニバンなど実用車に対してのもので、昔のナンバーつき競技車や改造車に乗っていればさしたる障害でもなく、むしろエンジンパワーをフルに使い切るにはこうでなければ、というのがFD2シビックタイプRでした。

肝心のK20A specRも、以下のようにDC5用からチューンされます。

単管ショートインテークマニホールドのストレート化、ヘッドポートの表面をなめらかに仕上げるNSX製法の採用等により、吸気効率を高めるとともに、エキゾーストマニホールドの集合部鋭角化、デュアルエキゾーストパイプのストレート化などによって排気効率も向上。最高出力225PS(リッターあたり112.5PS)、最大トルク21.9kgf・mというハイパフォーマンスを現実のものとした

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これでジムカーナのステージにも帰ってきたFD2シビックRは、「4ドアセダンなんて鈍重で遅いんじゃないの?」という印象を覆すパワフルかつ軽快な走りを見せつけ、基本性能の高さをアピールしました。

しかも車両価格は283.5万円と、FK2以降に比べて安価!

ようやくエンジンのポテンシャルを発揮できる、しかも少し頑張れば買えるタイプRであるFD2は、2023年現在でも改造範囲のごく限られたジムカーナPN車両として現役であり、今も多くのユーザーがK20A specRの性能をフルに発揮しています。

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「世界最速FF車用」K20Cとの大きな違い

富裕層しか買えないメーカーの広告塔ではなく、実際に手に入れ、自ら踏んでこその高性能エンジンだ
富裕層しか買えないメーカーの広告塔ではなく、実際に手に入れ、自ら踏んでこその高性能エンジンだ

FD2シビックRは2010年で生産終了、その代で日本国内市場から販売不振のシビックそのものが消えたため、タイプRそのものが一旦消えました。

その後2015年にヨーロッパ仕様のFK2シビックに4代目タイプRが復活、搭載されたのは310馬力のVTECターボK20Cで、スポーツ派のクルマ好きには極めて評判の悪いトーションビーム式リアサスペンションのままで、ニュルブルクリンクのラップタイム更新へ挑みます。

ルノー メガーヌの記録を破るFF世界最速として大きく宣伝され、その後もVW ゴルフやメガーヌと三つ巴の戦いを繰り広げ、リアをダブルウィッシュボーン化した5代目FK8、最新の6代目FL5へと続き、現在も販売中。

しかし、FK2は限定車で日本への割当は750台、車両価格428万円とはいえ、実際はディーラーですぐ売り切れになったと思いきや、一般の販売店がいくらで仕入れたかわからぬものの500万円以上のプレミア価格で販売する「資産化」していました。

次のFK8は限定車ではなくなったものの450万円以上、最終限定車のリミテッドエディションは550万円に達し、最新のFL5でも499万7,300円と、気軽に買って乗り回せる金額ではなくなっています。

全日本ジムカーナではFK2が何台か参戦したものの下位に留まったので戦闘力が高いとはみなされず、FK8からは電動パーキングブレーキになってサイドターンできなくなったので、誰も使いません。

これで「世界最速」だの、「TCRレースなどレースでは活躍」と言われても一般ユーザーには無縁の話で、K20Cがどれだけ気持ちのいいフィーリングと言われても宝の持ち腐れです。

「普通のユーザーが、買って、乗って、ガンガン攻めて結果も出せる」という意味で最後のタイプR用エンジンはK20A supecRであり、「ホンダがユーザーとともにあった最後のエンジン」と言えるでしょう。

性能さえ良ければいいってものでは、ないのです。

今のホンダに、「どうだこれはすごいだろう?ちょっと頑張れば買えるような値段にしたから、キミもぜひ乗って、ホンダがどんなメーカーなのか確かめてほしい!」と言えるエンジンは、ありますか?

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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