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「考えた人はある意味天才」バブル崩壊を乗り越えたカローラワゴンとウイングロードの“マル秘”作戦【推し車】

バブル崩壊もワゴンブームでスバルが勝ち残った要因?

後のインプレッサスポーツワゴンと同クラスのワゴンとして、1970年代~1980年代には登場していた日産 サニーカリフォルニア(上)とトヨタ カローラワゴン(下)

1990年代、初代レガシィツーリングワゴンの発売を契機に突如湧き上がった「ワゴンブーム」に対する各社の反応はマチマチでしたが、レガシィ同様のワゴン専用ボディでスバルへ真っ向から対決するような例は、意外と少なかったような気がします。

あるいは最初はそのつもりがあったとしても、1991年のバブル崩壊でそれどころではなくなり、結果的に既存車種でなるべくカネをかけずにそれっぽい車種展開にならざるをえなかったかもしれず、それが結果的にスバルの独走を許したのかもしれませんが。

しかし中には、トヨタ カローラワゴンと日産 ウイングロードのように、「既存車種をなるべくお手軽にイジって、どうにかインプレッサスポーツワゴンには対抗できた」というケースもありました。

サニーカリフォルニアはレジャー向け国産ワゴンの元祖?

ワゴンブーム到来!というタイミングでADバン/ワゴンとさして変わらぬデザインにモデルチェンジしてしまった、4代目サニーカリフォルニア

ステーションワゴンそのものは初代レガシィで突然現れたものではなく、国産ワゴンも1960年代から販売されてはいました。

ただしあまり人気がないため長続きしないか、旧型をモデルチェンジせずズルズル作っているようなケースも多かったのですが、比較的熱心にモデルチェンジを繰り返していたのが、日産のサニーカリフォルニアです。

ライバルのトヨタ カローラ同様にライトバンベースでワゴンを作っても日本では売らなかった日産 サニーですが、4代目B310系から「サニーカリフォルニア」という名で5ドアワゴン(当初は5ドアセダン扱い)で国内でも販売開始。

次の5代目B11系からはサニーその他の同クラスライトバンを「ADバン」として別デザインで統合したため、サニーカリフォルニアは1981年という早くからワゴン専用ボディで展開していました。

しかしいよいよワゴンブームが始まり、サニーカリフォルニアも長い下積みが報われるかと思われた1990年、モデルチェンジしたY10系サニーカリフォルニアは、型式からもわかるとおりADバンのワゴン仕様へと、時代を「逆行」してしまったのです。

ああ痛恨のモデルチェンジ!というわけで、一応ビジネスワゴン的な用途には「ADワゴン」を準備し、サニーカリフォルニアはRV的なモデルという事にしていましたが、なんとも締まらない話です。

サニーカリフォルニア改め、「ウイングロード」誕生!

1996年に外装の大幅変更と改名を伴うビッグマイナーチェンジで人気となった初代ウイングロードだが、最初からこのデザインだったらブームに乗れたかも?と思えば、日産はずいぶん回り道をしてしまった

しかしやはり、ワゴンブームとして期待できる販売台数に達しなかったのでしょう、1996年にはADワゴンを生産終了するとともに、サニーカリフォルニアも当時の8代目B14系サニーとも、従来の2代目Y10系ADバンとも異なるフロントマスクへフェイスリフト。

さらにはテールデザインまで大胆に変更したY10系「ウイングロード」を発売しますが、型式が同じですから実際はビッグマイナーチェンジに過ぎません。

最近の例で言えば、三菱がeKスペース クロスの外装を中心にビッグマイナーチェンジしたうえで「デリカミニ」と改名、中身は同じでも好調なセールスを記録しているのと一緒で、中身はサニーカリフォルニアそのもののウイングロードも、そこそこヒットしました。

もちろんクルマ好きからすれば、「結局中身はADバンのままだよね?」とわかりますが、一般ユーザーはサニーでもADバンでもなく、名前すら異なる新型車と解釈してくれたのです。

もちろん中身はADバンですから、ベース車がモデルチェンジした1999年には早くも2代目Y11系へモデルチェンジ、その際にADバンのワゴン版とわかる程度の違いしかないデザインで、2001年にはまた大規模なフェイスリフトを余儀なくされますが…(※)。

(やはりコスト面で厳しいのか、2005年にモデルチェンジした3代目もADバンのワゴン仕様デザインで、もうあきらめたかのように2018年で廃止)

少なくとも初代ウイングロードは、お手軽なデザイン変更と改名で、同クラスのインプレッサスポーツワゴンに対抗できたと言えるでしょう。

改名もせず「カロゴン」で乗り切ったカローラワゴン

画像は1991年発売当初のE100系カローラツーリングワゴンだが、1997年のマイナーチェンジでもテール周りやフロントグリル以外はさして変えないまま、語呂がいい「カロゴン」という新たな通称と、CMソングだけで遅咲きの花を咲かせた

サニーカリフォルニア/ウイングロードよりもっとお手軽だったのはトヨタのカローラワゴンで、テール周りのデザインをちょっと変えた程度で改名もせず、ひたすら宣伝で乗り切って人気車種になってしまいました。

そもそもカローラは初代からステーションワゴンは海外のみ、日本ではライトバンの「カローラバン」だけでしたが、1980年前後の初期RVブームに合わせて4代目E70系「カローラワゴン」を1982年に国内でも発売。

1991年には7代目E100系カローラがベースの(国内では)3代目を発売するとともに、ビジネスワゴン的な「カローラワゴン」と、一般向けには名前からしてレガシィへ便乗したのが丸わかりの「カローラツーリングワゴン」を分けて設定しました。

バンと同じボディへ化粧直ししただけでなく、リアサスペンションもカローラバン/ワゴンのリーフリジッドと異なりパラレルリンクストラット独立懸架と作りわけるというマジメな仕事ぶり(日産はADバン/ワゴンもサニーカリフォルニアもトーションビーム)。

ある意味バブル時代の開発ならではの贅沢な作りでしたから、1995年にカローラが8代目E110系となってもバン/ワゴンは継続生産(※)され、1997年には内外装をちょっと改め、スポーツエンジン4A-GE搭載車には6速MTまで組むマイナーチェンジを敢行。

(※代わりに古いE90系で継続生産していたスプリンターカリブをE110系へモデルチェンジ)

それでも見た目がカローラバンと大きく変わらなかったものの、カローラツーリングワゴンを「通称カロゴン」と名乗らせ、篠原ともえとユースケ・サンタマリアによるユニット、「カロゴンズ」にCMで「カロゴンズのテーマ」を歌わせます。

カローラワゴン、略して「カロゴン」というわけですが、これを思いついた人は天才だったのでしょう、旧型の仕立て直しに過ぎず、新型車と名乗ったわけでもないのに新型車っぽかったカロゴンは、何とも安上がりなヒット作となりました。

これで手応えをつかんだトヨタは、2000年にモデルチェンジで「カローラフィールダー」と改名、これが3代続いて2023年現在もビジネスグレードの販売が続いており、一般ユース向けには2019年に「カローラツーリング」を発売。

おかげでトヨタは、スバル以外で今でもステーションワゴンを継続している、数少ない日本の自動車メーカーとなりました。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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