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もはや「ワゴン」と名前につけば何でも売れた?インプレッサ、ファミリア…謎の“ワゴン祭り”で生まれた車たち【推し車】

ワゴンのカタチだけでなく、名前に「ワゴン」さえつけば

日産 パルサーセリエ/ルキノハッチS-RVは「ワゴン」を名乗らず「RV」を名乗ったが、発想は同じ

1990年代の「RVブーム」で価値観が一変した結果、スポーティなロールーフミニバンに取って代わられるまでたった10年ほど、短く熱い大ブームとなったステーションワゴン

ダイハツを除く国産車メーカー各社が次々と新型車をラインナップし、その頃には既に時代遅れとして凋落する一方だったセダンの販売を補う…というより「セダンがあっても主力はワゴン」という時代が、今から20~30年ほど前にはあったのです。

それもセダンベースでワゴンを作るだけでは足りず、「とにかくワゴンと名付ければ何とかなるだろう!」とばかりに発売したら売れたクルマまであって、今思えばなんともムチャクチャな時代でした。

元祖「ワゴンとつけば」は初代スバル インプレッサ?

ワゴンということになっているインプレッサ スポーツワゴンだが、スバル公式の「技術資料車コレクション」では、初代も2代目もしっかりハッチバック枠に入れられている…つまりスバル公式も認めた「ワゴンという名の5ドアハッチバック」。

初代レガシィ・ツーリングワゴン(1989年)で、本格的なステーションワゴンブームの火付け役となったスバルですが、初代インプレッサ・スポーツワゴンも本来は「インプレッサ5ドアセダン」として発売されるところ、自らワゴンブームに便乗した説があります。

初代インプレッサが発売された1992年、既にワゴンブームに火が着いて各社とも新型車を続々と発表していましたし、インプレッサ・スポーツワゴンはリアのオーバーハングを伸ばすでもなく荷室が小さいままで、正直ワゴンとして積載能力は高くありません。

これなら日産 プリメーラUKや、トヨタ コロナSFなど5ドアファストバック、あるいはリフトバックセダンと何も変わらないわけで、ワゴンブームがなければ「スポーツワゴン」など名乗らなかったという説には、それなりに説得力があります。

筆者自身、昔のクルマ雑誌でそのような話を読んだ記憶があり、「ワゴンと名付ければ売れるだろうと発売されたクルマの元祖」と言ってよいのではないでしょうか。

「ワゴンもあ~る」と発売したら超大ヒットのスズキ ワゴンR

これが「ZIP」という車名で発売されていたら、少なくとも初期は知る人ぞ知るマイナー車になっていた可能性が…

今では軽トールワゴンといえば軽自動車ブームの牽引役として知られており、さらに背の高い軽スーパーハイトワゴンが日本市場における自動車販売の主力となっていますが、初代スズキ ワゴンRが発売された1993年当時、もちろんそんな認識はありませんでした。

「トールワゴン」という用語も当時の筆者レベル(ハタチそこそこの、ちょっとクルマが好きになった程度の若者)では知りません。

1970年代のライフステップバンはホンダが軽乗用車から一時撤退したため短命に終わりましたし、1990年に三菱が発売した初代ミニカトッポは、スズキ アルトハッスル(1991年)や日産 ADバン/ワゴンMAXなど、フルゴネット車の一種だと思っていました(※)。

(※実際、ミニカトッポの前席天井は小物入れで、頭上スペース拡大効果は薄かった)

発売直前まで「ZIP」という車名だったスズキの新型軽乗用車も、後に人気は出たかもしれませんが、その車名だとおそらく当初は「アルト派生で変なクルマが出た」程度だったでしょう。

それが当時の流行だった「ワゴン」を名乗り、Revolutionary(画期的)やRelaxation(くつろぎ)を表しつつ、なんとなくスポーティな感じもする「R」を組み合わせた結果、軽でも新型ワゴンだって…と人目を引いた結果、その良さも認められて大ヒット!

最初はターボエンジンすら設定がなかったほど期待されていなかった新型車は、その名に「ワゴン」を冠したおかげで発売直後から大ヒットとなり、軽自動車だけでなく日本車を根底から変えていきました。

長いワゴンを切り落とすCM、マツダ ファミリアS-ワゴン

赤いファミリアハッチバックも、最後の9代目は短いワゴン、S-ワゴンを名乗って地味なファミリアセダンの販売を補うヒットとなった。

渋滞にハマって身動きできない、全長のなが~いステーションワゴン(※)の前にサムライが現れ、日本刀でその前後をスパン、スパーン!…短くなったワゴンはクルマの隙間を縫うようにスルスルと走り抜けてメデタシ…ファミリアS-ワゴンは、そんなCMでした。

(※当時から、これはアノ車をディスってるなと…)

そもそも初代はスタイリッシュなライトバンがウケてヒット作になったファミリアですが、1985年に発売、1989年以降はバンの5ナンバー版ビジネスワゴンとして1994年まで販売したのを最後にワゴンを廃止、経営状況の悪化で時代の波に乗る力はありません。

しかし7代目の派生車で、4ドアクーペ(5ドアハッチバック)のファミリアスティナは後継のランティスが車格アップで日本国内ではファミリア一族から外れ、1994年発売の8代目ファミリアには5ドアハッチバック自体がなく、売れ筋を完全に外しています。

そこで1998年、最後のマツダ製ファミリア(※)では3ドア廃止、5ドアハッチバックを復活させますが、なんとそこで「これをワゴンということにしよう」となりました。

(※ファミリアバンは日産 ADバンのOEMで存続、現在もトヨタ プロボックスOEMで健在)

初代インプレッサにならって、普通にスポーツワゴンでもなんでも名乗ってよかったと思いますが、ここでヒネリを加え、「あえてボディが短いショートワゴン、名付けてS-ワゴン!」と決定。

初代インプレッサスポーツワゴンが売れたことでもわかるように、当時のユーザーは「荷物を積める便利なクルマ」ではなく「ワゴンそのもの」を求めている状況でしたから、「短いワゴン?おおそうか軽快そうでいいな?」とヒットしました。

日産がRVブームに便乗し、5ドアハッチバック版に化粧してRVということにした「パルサーセリエ/ルキノハッチS-RV」(1996年)もそうでしたすが、その頃になると単にワゴンというだけではなく、どういうワゴンかで差別化して売り込んでいた時期です。

そういう意味では、「ワゴンを名乗るけど、本来あるべきワゴンの姿じゃないのがイイ!」という、なんだかよくわからない「ワゴン祭り」みたいな、妙な時代でした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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