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今年の春も実施!「全国交通安全運動」の効果ってどれくらいあるか知ってる?
毎年春と秋に実施される全国交通安全運動。「取り締まりが強化される期間」というイメージを持った人も多いかと思いますが、実は全国交通安全運動の内容は毎年若干違いがあります。
令和4年の春は、4月6日(水)〜15日(金)までの10日間、全国交通安全運動が実施されますが、今回の内容はどのようになっているのでしょうか?また、期間中の交通事故は減少しているのでしょうか?
令和4年春の全国交通安全運動の実施内容
内閣府から発表されている今回の実施内容は以下の通りです。
- 子供を始めとする歩行者の安全確保
- 歩行者保護や飲酒運転根絶等の安全運転意識の向上
- 自転車の交通ルール遵守の徹底と安全確保
(1)は交通事故死亡者は歩行者の割合が多いこと、歩行者側にも法令違反が認められること、4月は入園・入学を迎える幼児や児童の歩行中の事故が増加する傾向にあることが理由です。
(2)は自動車対歩行者の死亡事故が多く発生していること、飲酒運転・妨害運転(あおり運転)が依然として発生していること、75歳以上の運転者についてハンドル・ブレーキの操作不適が多いこと、後席シートベルトの着用やチャイルドシートの適正利用が少ないことが理由として挙げられています。
(3)は自転車は身近な交通手段ですが、交通事故全体に占める割合が増加傾向にあること、自転車関連の重傷・死亡事故は自転車側の法令違反が多いこと、業務中の交通事故が多いことが理由となっています。
ちなみに令和3年の内容は「子供と高齢者を始めとする歩行者の安全確保」「自転車の安全利用の推進」「歩行者等の保護を始めとする安全運転意識の向上」となっており、若干ですが内容が違うことが分かります。
全国交通安全運動による交通事故死亡者数の減少率は2.5%
全国交通安全運動のような短期的なキャンペーンは長年に渡って行われてきましたが、実際に効果があるかどうかは、必ずしも明らかになっていませんでした。
このような背景もあり、筑波大学医学医療系の市川政雄教授率いる研究グループが、春の交通安全運動の効果に関する研究を行い、2021年に「全国交通安全運動による交通死亡数の減少は限定的」という結果を発表しました。
この研究では、1949年〜2019年の全国の月ごとの交通事故死亡者数と、交通安全運動が実施された月のデータを用いて分析しています。その結果、交通安全運動を実施した月は、それ以外の月と比較して、交通事故死亡者数が2.5%減少していることが分かりました。
最も効果が大きかったのは「1949〜1964年」の期間。この期間では交通インフラや安全対策が未発達であったため、運動の効果が大きかった可能性が示唆されています。
期間 | 交通事故死亡者数の変化 |
1949〜1964年 | -4.5% |
1965〜1989年 | -2.6% |
1990〜2004年 | -0.1% |
2005〜2019年 | -3.5% |
全期間 | -2.5% |
筑波大学プレリリースより作成
広報や取り締まり以外の対策が重要になる?
前述の研究結果では、全期間の交通事故死亡者数の減少は2.5%にとどまっていることが判明し、全国交通安全運動は交通事故死の減少に有効であるものの、効果は限定的であるとしています。
つまり、交通事故死亡者数をさらに減らすためには広報や取り締まり以外の対策が重要になります。
市川教授のグループは2020年に「ゾーン30が自転車や歩行者の重傷事故を予防している」という研究結果も発表していることから、「ゾーン30」の導入も一定の効果を期待できるでしょう。
そのほかにも、近年では「スムース横断歩道」などが注目され始め、全国各地で検証が進められています。こちらに関しても一定の効果は認められているため、”ハード面”での対策も有効であると考えられます。
もちろん交通安全運動や物理的な対策なども必要ですが、一人ひとりが交通ルールを遵守することが重要です。日頃から「譲り合い・思いやり」の気持ちを持って、安全運転に努めましょう。
横断歩道上の事故を防ぐ「スムース横断歩道」に注目!
事故を防ぐために注意すべきポイントとは
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- 執筆者プロフィール
- 成田 佑真
- 1993年生まれ。普段は医療機器販売を行っているが、暇があれば自動車関連記事を読み漁る。現在の愛車はA4。子どもの頃からマークⅡに憧れ、社会人になりマークXを購入。週末は必ず手洗い洗車を行い、ドライブに出...