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エンジンスワップとは?費用や注意点から旧車やロードスターなどの代表例まで
エンジンスワップとは?
エンジンスワップとは自動車に搭載されている元のエンジンを取り外し、別のエンジンに載せ換えることを言います。
昔から「排気量増に勝るチューニングはなし」と言われる通り、通常、エンジンスワップと言えば排気量の大きいエンジンに載せ換えることがほとんどです。
↓67年型アルファロメオ1300GTジュニア
じつは筆者の愛車である1967年型アルファロメオ1300GTジュニア(「段付き」と呼ばれる前期型ジュリア・クーペ)も、現代の交通環境下でも余裕をもって交通の流れに乗れるように、ストックの1.3L直列4気筒DOHCを降ろし、1750GTV(後期型ジュリア・クーペ)用の1.8L直列4気筒DOHCに載せ換えています。
おかげで半世紀前のクルマでもパワー不足を感じることはなく、高速でもゆとりをもって走ることができます。
↓1.8L直列4気筒DOHCにエンジンスワップされたアルファロメオ1300GTジュニアの心臓部
エンジンスワップの代表例
↓インプレッサのエンジンを搭載したVWビートル
トヨタ・スープラにセンチュリー用の5L V型12気筒DOHCを載せ換えたり、VWタイプ1(ビートル)にインプレッサ用の2L水平対向4気筒DOHCターボを移植したりと、異なるメーカー・車種の間でエンジンスワップを行う例もありますが、エンジンマウントや駆動系とのマッチングなどの問題があり、載せ換えに巨額の費用がかかります。
そのため、実際には同系の排気量の大きなエンジンをスワップするのが一般的なようです。
エンジンスワップの代表例① L型エンジン搭載車
↓「ハコスカ」こと3代目スカイラインGT-X
↓エンジンスワップをも待つ日産L28型エンジン
日産L型シリーズ(6気筒)は、2LのL20と2.4LのL24、2.6LのL26、2.8LのL28の4種類のエンジンがあります。
当時発売されていたスカイラインにはL20の設定がありませんでしたが、フェアレディZやセドリック/グロリアにはL24やL26、L28の設定がありました。
そこでスカイラインに排気量の大きなL型シリーズを登載するのがひと頃ブームになりました。
もっともメジャーだったのがL28への換装で、エンジンスワップした上で排気量をスープアップし、L28型改3〜3.2L仕様を作るのが定番となっていました。
ボアとストロークの両方を限界まで拡大すると最大でL28改3.5L仕様も作れましたが、専用のクランクが必要な上、費用面や耐久性などの問題からあまり一般的ではありません。
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本日の在庫数 1472台 平均価格 425万円 支払総額 30~8,252万円
エンジンスワップの代表例②マツダ ロードスター
ライトウェイトスポーツカーとして人気の高いマツダ・ロードスター。
その中でも3代目NC型はエンジンスワップが盛んに行われているようです。
マツダMZR型直列4気筒DOHCエンジンには、3代目ロードスターに搭載される2L以外に、アテンザやアクセラに搭載されていた2.3Lや2.5Lがありました。
これをエンジンスワップすると、2.3Lに換装しただけで180ps、吸排気計のチューニングを施せば200psまでパワーを引き出すことができました(ちなみにノーマルのロードスターは170ps)。
さらにMZR-L5型2.5Lエンジンにスワップし、チューニングを施すと最高出力は226psを叩き出すことができます。こうなるとライトウェイトスポーツカーというよりは、「ベビーコブラ」とでも言ったほうが相応しいかも知れません。
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エンジンスワップの代表例③ アメ車
↓シボレー350にエンジンスワップされたフォードA型5ウインドウクーペ
アメリカ車のチューニングの世界では、エンジンスワップが頻繁に行われています。
「ストリートロッド」と呼ばれる戦前のホットロッド、そのなかでも人気が高いフォードA型やB型は、標準で3.3L直列4気筒エンジンや3.6L V型8気筒エンジンを搭載していました。
これらはサイドバルブ(「フラットヘッドエンジン」とも言います)という現在では使用されていない旧式な弁方式を採用していることもあって、V8エンジンでさえ最高出力は65HP(初期型のスペック。のちに85HPにパワーアップします)に留まります。
そこでより近代的なシボレー350(5.7L)などのV8OHVにエンジンスワップするのが一般的です。
他にも直列4気筒や直列6気筒を搭載したクルマにV8エンジンスワップを行う例が多く、エンジンスワップがカスタムの主流となっています。
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↓V8エンジンに換装されたシビック
中にはマツダ・ロードスターにスモールブロックV8を搭載したり、ホンダ・シビックの駆動方式をFFからFRに改めた上でV8エンジンを搭載したりと、日本車をベースにしたエンジンスワップも盛んです。
アメリカではエンジンスワップを前提に、自動車メーカーが積み替え用に新品のエンジン(木箱に入れられて届けられることから「クレートモーター」と呼ばれます)が発売されているほか、エンジンスワップ用のキットも豊富に用意されており、メカチューンやターボチューンよりもエンジンスワップのほうがメジャーなエンジンチューニングとなっています。
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エンジンスワップにかかる費用はどれくらい?
中古エンジンをスワップする場合
エンジンを積み替えることで愛車をパワーアップできるエンジンスワップは、車種やエンジンによっても異なりますが、同系のエンジンに載せ換えるだけなら工賃は8〜20万円程度でできるようです。
あとはエンジンの購入費用ですが、これは搭載するエンジンによっても変わってきますし、中古エンジンを使うか、新品エンジンを使うかによっても価格が変わってきます。
中古エンジンを使用する場合、日産のRB26DETTや2JZ-GTEなどのメジャーなエンジンを解体屋などで買ってくるだけならば、走行距離や程度にも異なりますが5〜20万円程度で入手できるでしょう。
しかし、L型や2T-Gなどの旧車のエンジンの場合は、最近では中古エンジンの価格が上昇して30〜80万円ほどで取引されているようです。
また、エンジンスワップに合せてエンジンオーバーホ−ルやチューニングを施したり、補計器類を伸長したりすればその分の費用がかかってきます。
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新品エンジンをスワップする場合
新品エンジンを使用する場合、エンジンの購入費用は最低でも70〜100万円程度の予算を見ておくべきだと思います。
ちなみにニスモから限定200基で販売されていたRB26ファインスペックは部品代+工賃で131万5,000円〜(税抜き)で販売されていました。
アメリカで販売されているクレートモーター(載せ替え用の新品純正エンジン)の場合、最初からチューニングが施された状態でエンジンが販売されることが多く、価格は70〜150万円(邦貨換算)で販売されているようです。
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エンジンスワップの注意点や手続き
エンジンスワップはエンジンを乗せ換えるだけで性能を大きく向上させることができる一方で注意点もあります。
まず、異なるメーカー・車種の間でエンジンスワップを行う場合は、パワーユニットがエンジンルームに収まるかどうか念入りな計測が必要となります。
そして先ほども述べた通り、エンジンマウントやオイルパンなどもワンオフ製作、もしくは改造が必要になるので費用はどうしても高額になります。
また、同系のパワーユニットにエンジンスワップを行う場合でも、大幅にパワーアップする場合には、駆動系の見直しや足回り、ブレーキの強化を行わなければ危険なクルマとなってしまいます。
具体的にはクラッチやドライブシャフト、デフを上級グレートからコンバートしたり、ブレーキディスクやキャリパーの強化をしたり、スポーツサスペンションの装着などの対策が必要になります。
高速性能を向上させる場合にはファイナルギアを変更して適切な最終減速比を得る必要があります。
構造変更審査を申請する必要がある!
エンジンスワップを行った車両で合法的に公道を走るためには構造変更審査を受けて公認車検が受ける必要があります。
申請にはさまざまな書類が必要となります。
まったく違う車種、異なる排気量のエンジンなどにスワップする場合は、強度計算書や排ガス規制の適合書類などが必要になるため、費用的にも手間的にもかなり大変かと思われます。
エンジンスワップでパワーアップ
↓オースチン・ミニにホンダ製 VTECエンジンを搭載した例
エンジンスワップについてのまとめ記事はいかがでしたでしょうか?
モアパワーを求める方にはエンジンスワップは魅力的なチューニングとなりますが、トータルで考えると、コストや手間はどうしてもかかります。しかし、愛車の性能が大きく向上することを考えれば、こうしたコストや手間などを支払う価値があります。
エンジンスワップを考えている方は、まずは実績のあるショップに相談されることをオススメします。
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...
- 監修者プロフィール
- 鈴木 ケンイチ
- 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...