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ひき逃げを起こしたらどんな罰金・罰則が?後から自首しても前科・逮捕はされる?
目次
ひき逃げの1年間の発生件数や検挙率は?
法務省が公開している「令和3年版 犯罪白書」によると、令和2年には6,830件のひき逃げが発生しています。その内訳は軽傷事故が6,007件、重症事故が730件、死亡事故が93件となっており、軽傷事故が全体の9割弱を占めていることもわかります。
その他、死亡事故検挙率は97.8%で、重症事故検挙率は79.9%。全検挙率は70.2%に達しています。死亡事故のほうが重症事故より検挙率が高いことがうかがえます。
同白書では、ひき逃げ事件の件数は平成16年をピークに毎年減少している傾向にあり、重症事故検挙率及び全検挙率は年々高くなっています(平成16年の全検挙率は25.9%)。
このデータからわかるように、近年ではひき逃げを起こすと逃げ切ることは難しく、高い確率で検挙・逮捕されると言えるでしょう。
データ・画像出典:法務省「令和3年版犯罪白書 第4編第1章第2節3 ひき逃げ事件」
ひき逃げの罰金・罰則はどれくらい重い?
人身事故を起こした際、運転手は交通事故の当事者となった時に負傷者の救護や二次災害を防ぐ行動を取らなければなりません。これは道路交通法第72条(交通事故の場合の措置)で定められています。この他、警察官へ交通事故及びそれに関することを報告することも義務付けられています。
ひき逃げ行為は「救護義務違反」に該当し、違反点数は35点です。一旦停止無視や信号無視なども道路交通法違反の一種ですが、ひき逃げは飲酒運転等に並ぶ極めて罪が重い違反行為です。
例えば、前歴無しの運転手が累積加点15-19点となった時点で免許取消かつ1年間の欠格期間が付きます。それを踏まえると、ひき逃げ行為の救護義務違反の違反点数35点の大きさがわかります。(このほか、行政処分も課されます)
さらに、ひき逃げ時には救護義務違反以外の違反行為で累積される場合があります。詳しくは後述しますが、ひき逃げ行為と同じ違反点数なのは酒酔い運転だけ。そのほかの行為も一般免停や免許取消の処分が科されるものでありながら、ひき逃げよりは違反点数は小さいです。
ひき逃げの加害者に科される罰則
ひき逃げの加害者が科される可能性のある罰則をまとめると次のようになっています。
刑事処分
罪状・違反名 | 刑罰内容 |
救護義務違反(72条第1項前段) 危険防止措置義務違反 | 5年以下の懲役又は50万円以下の罰金(117条第1項) 10年以下の懲役または100万円以下の罰金(117条第2項) 1年以下の懲役又は10万円以下の罰金(117条の5) |
事故報告義務等違反(72条第1項後段) | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金(第119条第1項第10号) |
現場に留まる義務違反(72条第2項) | 5万円以下の罰金(第120条第1項第11号の2) |
自動車運転致死傷罪過失運転致死傷罪 | 7年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金 |
危険運転致死傷罪 | 死亡:20年以下の懲役 負傷:15年以下の懲役 |
殺人罪 | 死刑 無期懲役 懲役5年以上 |
懲役や罰金などの刑事処分が科された時点でそれは前科となりますので、轢き逃げの加害者は前科が科されると考えて問題ありません。
行政処分
免許に関する罰則は行政処分として扱われていて、点数制度によって免停や免許取消処分が科されます。
ひき逃げは付加点数が加算される違反行為です。ひき逃げとして処理されると、救護義務違反で違反点数35点で一発免許取り消しに加えて取消日から3年間の欠格が少なくとも確定します。違反種別や被害者の状況によって違反点数は大きくなる可能性もあり、例えば下記のような場合が考えられます。
違反種別・被害者の状況 | 点数 | 欠格期間※ |
救護義務違反 | 35点 | 3年 |
①死亡(違反者の不注意が原因の場合) | 55点(35+20) | 7年 |
②傷害(違反者の不注意が原因の場合 | 48点(35+13) | 5年 |
③酒酔い運転・死亡(①+酒酔い運転) | 90点(35+35+20) | 10年 |
④酒気帯び(0.25mg/L以上)死亡 | 80点(25+35+20) | 10年 |
⑤酒気帯び(0.25mg/L以下)死亡 | 68点(13+35+20) | 9年 |
⑥酒酔い運転・傷害 | 83点(35+35+13) | 10年 |
⑦酒気帯び(0.25mg/L以上)傷害 | 73点(25+35+13) | 10年 |
⑧酒気帯び(0.25mg/L以下)傷害 | 61点(13+35+13) | 8年 |
※行政処分前歴によっては期間が伸びる場合もあります。
自首するとひき逃げの罪は軽くなる?
刑法42条1項では「罪を犯した者が捜査機関に発覚する前に自首したときは、その刑を減軽することができる。」と記載があります。
これをひき逃げのケースに適応させると、「ひいた犯人がまだ特定されていない段階で自首(警察に出頭)すれば、その刑を減軽してもらえる」ということになりますので、自首によってひき逃げの罪が軽くなる可能性はあるでしょう。
実際に、裁判官の裁量によって刑が軽くなったり、略式起訴となり罰金で済んだり、不起訴となったりするケースもあるようです。
しかし、ひき逃げの理由が「飲酒運転していたことがバレるから」であったと判明した場合、過失運転致死傷アルコール等影響発覚免脱罪が適応され、さらに罪が重くなる可能性があります。
これは「一度逃げて、アルコールが抜けてから自首すれば、少なくとも飲酒運転の罪(危険運転致死傷罪)には問われなくなる」という事態を防ぐために設けられたもので、懲役12年以下の重い罰則となっています。
このように、現場から逃げてしまった時点で、様々な犯罪が成立してしまう可能性があるため、まずは逃げないこと、早期の自首を考えるべきでしょう。
ひき逃げで逮捕されたらどうなる?
勾留され、起訴・裁判への手続きへ移行する
ひき逃げの場合は、一度逮捕されてしまうと、手続きの途中で釈放されるケースは少ないようです。その場合、起訴前は留置所、起訴後は拘置所にて拘束され、1ヶ月ほどで裁判の手続きへ進むことになります。
逮捕後の勾留期間は原則として10日間、最大で10日間延長されます。勾留期間が終わると検察官は起訴するかどうかの判断を行いますが、ひき逃げの場合は悪質性が高いと判断され、不起訴となる可能性は低いようです。
よって、ひき逃げで逮捕されたら刑事裁判となる可能性が高いと言えるでしょう。
ひき逃げで前科はつく?
刑事裁判で有罪になった場合、また、略式起訴されて罰金刑となった場合は、前科がつきます。ひき逃げは刑事裁判となる可能性が高いため、前科がつく可能性は高いと言えるでしょう。
もしも自分がひき逃げの被害者になったら?
保険の加入条件によっては治療費が支払われる
十分に動ける(安全な場所へ避難したり消防に電話できる状態にある)のであれば真っ先に消防へ電話して救急車を呼びましょう。身体を動かせないほど怪我をした状態であれば、周囲へ助けを求めてください。
自転車あるいは歩行者と自動車によるひき逃げ事故は、加入している任意自動車保険の補償内容、犯人を検挙できるかどうか、そして検挙された犯人の任自動車保険の加入の有無によって、被害者へ補償が支払われるかが決まります。
加害者が任意自動車保険へ加入していない場合、被害者が多額の治療費の負担をせざるを得ない状況に発展する可能性があります。歩行時や自転車移動時の事故でも傷害補償を行うものがあるので、今一度ご自身が加入されている保険の内容を確認されることをおすすめします。
歩行者や自転車と交通事故を起こした時にとるべき行動
怪我人の救護・二次災害の防止・消防への連絡が最優先
歩行者や自転車と交通事故を起こした時にドライバーがまず取るべき行動はすでに述べた通り、怪我人の救護と二次災害の防止及び消防への連絡です。道路交通法第72条に則って行動することが求められます。
警察ではなくまずは消防へ119番通報するべき
まず消防へ119番通報電話する理由は、救助隊や救急隊をすぐに呼ぶことができるからです。消防へ連絡が通ればそこから警察へ連絡が届くようになっているので、被害者が怪我をしている場合にはまず先に消防へ伝えてください。
自転車や歩行者が「大丈夫」と返事をすると救急車を呼ぶかどうか悩んでしまいそうですが、時間が経ってから事故の影響が身体に出てくる可能性があります。
警察が現場へ到着したら事故の全貌を説明する
警察官が事故現場へ到着したら、事故時の状況等を警察官へ説明してください。ここまで対応すれば救護義務違反になることはありません。事故処理を終えたら、加入している任意自動車保険の代理店の営業担当や保険会社へ事故が発生したことを連絡します。
ひき逃げ現場に遭遇した時はどうするべき?
もし第三者としてひき逃げ事故の現場に遭遇したら、周囲の状況を確認して二次被害が発生しないように被害者の救護や消防への連絡を行います。一人で全て対応するのは難しいので、周囲に他に人がいれば応援を求めましょう。
可能であれば、ひき逃げ車両のナンバープレートや車種、運転手の特徴などの情報を控えて警察へ伝えてください。
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