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「スバルがキャンピングカー出してたってホント?」復活求む声も!RV界の小さな巨人・ドミンゴ【推し車】
ミニバンブーム以前の「ちょっと変わった名車」
後席まで含め4人乗車してなお、その後ろに広大な荷室がある軽1BOX車の余裕を活かし、荷室に変わって3列目シートを備え、強直なエンジンを積んだ小型ミニバン。
1998年に軽自動車が現在の「新規格」となってからも一時期流行りましたが、その元祖だったのが1983年発売のスバル ドミンゴでした。
サンバートライのハイルーフ車をベースに、回転対座シート付き3列シートを備えたドミンゴは乗車人数が多くとも小さくて扱いやすいので、日本でミニバンが流行する以前の「ちょっと風変わりな名車」として重宝されます。
1990年代を中心に青春を過ごした世代にはおなじみなクルマで、MOBY編集部がAIに聞いた「30〜50代のクルマ好きが気になる名車」へのノミネートも当然です。
RV界の小さな巨人あらわる!初代(1983年)
1982年にモデルチェンジした4代目サンバーの軽1BOXバンは「サンバートライ」と改名(※)、そのハイルーフ車をベースに3人がけの3列目シートで乗車定員を7人に増やし、新開発の1リッター直3SOHCエンジンEF10へ換装、1983年10月に発売したのが初代ドミンゴ。
(※1987年のマイナーチェンジで商用メインのグレードは「サンバーバン」へ戻り、乗用メインのハイルーフ上級グレードだけが「サンバートライ」として残った)
かつて1960年代には大型1BOX車より小回りが効き、軽1BOX車よりパワフルなのを売りにした小型1BOX車、トヨタ ミニエースやマツダ ボンゴ(初代)があり、どちらも3列シートで乗用登録の「コーチ」を設定していました。
厳しい排ガス規制に対応したパワーダウンで、1970年代半ばには小排気量エンジンによる3列シート車が成立できずに消えていった小型1BOX車ですが、1980年代に入る頃には排ガス規制対策が一巡、初期のRVブームもあって再び脚光を浴びたわけです。
小回りの効くミニバンを求めたユーザーに歓迎された割に、他社がなかなか追従しなかったのは「ユーザーが少ないスキマ商売」だったからだと思われますが、おかげで市場を独占したドミンゴは長く重宝されることとなります。
軽1BOX車がベースなので狭い印象を受けますが、高さ方向のスペースに余裕があるハイルーフ車なので車内は意外に広く、フロント回転対座シートとテーブルへの変形が可能な2列目シートによって多彩なシートアレンジが可能。
さらにスバルらしい4WD車が1986年8月に追加された際には、ワンウェイクラッチを使ってタイトコーナーブレーキング現象を防ぐというユニークな「フリーランニング式フルタイム4WD」を採用するとともに、排気量を拡大した1.2リッターエンジンを搭載しました。
デザインも角目四灯ヘッドライトや大型バンパーで通常のサンバートライと差別化されたドミンゴは、軽1BOXのサンバートライと同じボディとは思えないほど立派に見える、「RV界の小さな巨人」だったのです。
伝説的な「アラジン」もラインナップした2代目(1994年)
ベースのサンバーがモデルチェンジしてからもしばらく生産継続したドミンゴですが、1994年には5代目の1BOX上級グレード「サンバーディアス」をベースにした2代目ドミンゴへとモデルチェンジ。
エンジンは1.2リッターのEF12へ統一され、4WDも一般的なビスカス式フルタイム4WDへと変わりますが、従来の5速MTへ加えてECVT車も設定、オートマ免許でも運転できるようになって、より幅広いユーザーへ対応します。
ボディは相変わらずサンバーディアスそのままでしたが、シャシーは大型バンパーの位置まで前後延長されて衝突安全性とボディ剛性を両立、当時のミニバンでは唯一の後席左右スライドドアとするなど、シートアレンジが増えた3列シートと合わせ使い勝手が向上。
ユニークだったのは、ルーフ上に折りたたみ式のベッドスペースを設け、グレードによってはシンクまで備えるキャンパー仕様「ドミンゴアラジン」の存在で、ヒット作というより珍車扱いではありましたが、後に現れる軽1BOXキャンパーの元祖でした。
見た目も構造も性能面でもこだわって気合の入った2代目ドミンゴでしたが、その頃になると本格的なRVブームで各社から多数の本格ミニバンが登場、スバル自身もレガシィやインプレッサのヒットでプレミアム路線へ転じ、小型車の後継車開発を打ち切ります。
それで1998年に軽自動車の新規格化、サンバーディアスのモデルチェンジを機に、後継となる小排気量エンジンもないドミンゴは生産を打ち切りました。
ちょうどその頃、スズキ(エブリイプラス)、ダイハツ(アトレー7)、三菱(タウンボックスワイド)から同種の軽1BOXベース小型ミニバンが発売されるものの、ドミンゴほどのヒットとはなりえず、いずれも短期間で消えています。
面白い試みだったドミンゴですが、世界各国で通用するような安全性能や動力性能を求めると車体やエンジンの大型化は避けられず、それ以前の「軽1BOXベースでも何とかなった時期」にうまく現れ、いいタイミングで引き上げたのは見事でした。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...