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まさかの「レースでは勝たなくていい」?最も謎めいたスカイラインGT-RことKPGC110【推し車】

もっとも謎めいたスカイラインGT-R、KPGC110

速そうなインパクトは抜群だったKPGC110スカイラインGT-R

マニアからちょっとクルマに興味がある程度の人まで人気の高い歴代「スカイラインGT-R」ですが、その中で最も謎に包まれた…あるいは不可思議な存在が、2代目(スカイラインとしては通算4代目)のKPGC110型でしょう。

レースに勝とうと思えば、大きく重くなったボディへ従来のS20エンジンのままではマツダロータリー軍団へ到底勝ち目がなく、ならばL型の大排気量エンジンを積むかといえばそうでもないままS20を積んで市販、それも少数生産で打ち切り。

しかし、この「とびきり超レアなGT-R」という事実が、実力はさておきマニア心をくすぐるのも事実で、MOBY編集部がAIに聞いた「30~50代のクルマ好きが気になる名車」にノミネートされているのも、そのためでしょう。

歴代スカイライン最多販売を誇るC110系へのモデルチェンジ

ビス止めのオーバーフェンダーなどヤル気を感じさせたが、S20エンジンは先代からのキャリーオーバーで高い戦闘力は望めなかった

1957年に日産と合併以前のプリンスで生まれた「スカイライン」は、プリンス時代に2代作られ、日本グランプリでポルシェ904との激闘から「スカG」伝説を作り、3代目…通称「ハコスカ」ではデビュー時から日産車として販売されました。

それでもプリンスの血は続き、レースで勝つために生まれた初代スカイラインGT-R(4ドアセダンPGC10/2ドアハードトップKPGC10)は、レーシングカーのR380用を由来とする2リッター直6DOHC24バルブエンジン「S20」を搭載、期待通りの活躍を見せます。

しかし、スカイライン自体はブルーバード以上セドリック/グロリア未満の、アッパーミドルクラス大衆車というのが本質であり、1972年9月にはより大きく、伸びやかでグラマラスなデザインの4代目へとモデルチェンジしました。

この4代目C110系が歴代スカイライン史上最多販売台数を誇るヒット作になり、段階的に強化される排ガス規制に苦しみつつも、当時の日産や日産プリンス店を大いに潤す主力車種へと成長したのです。

しかし、エントリーモデルの排気量こそ1.5リッターから1.6リッターへ上がったものの、それ以外は基本的に同じエンジン(4気筒は当初プリンス系のG型で後に日産系のL型、6気筒は最初から日産系のL型)ですから、ボディが大きくなれば動力性能に悪影響が出ます。

それでも快適性やデザインがウケてのヒットでしたが、レースではそうもいかず…しかしそれでも1973年1月、2代目の「スカイラインGT-R」、KPGC110型は発売されました。

悲運か必然か、少数生産で終わったKPGC110

1972年10月の東京モーターショーへ出展されたものの、ワークス活動凍結で存在意義を失っていたレース仕様だが、厳しい排ガス規制やオイルショックがなければ、あるいはL型のチューニングエンジンでも積んで活躍したのだろうか?

しかしKPGC110が発売された時、日産は既に1972年いっぱいでレースへのワークス参戦を凍結しており、レースに勝つための存在だったスカイラインGT-Rは、最初からその意義を失っていました。

初代KPGC10型は既にマツダロータリー軍団の大本命、サバンナRX-3にレースで太刀打ちできなくなっており、S20エンジンの大排気量化や、フェアレディZ(初代S30)で結果と出していた、ハナから大排気量のL24を積んだテストでも伸び悩みます。

ましてや大柄で空気抵抗が不利、ワイドトレッド化でコーナリングを詰めても40mm伸びたホイールベースや重量増加といったハンデを抱えたC110系スカイラインで勝負にならないのは明らかです。

あるいは、クロスフロー化したLYヘッド、DOHC化したLZヘッドを積むL型の大排気量エンジン搭載車でレースを戦う選択肢があったかもしれませんが、排ガス規制対策に全社を上げて取り組まねばならない時に、レース用エンジンに熱を上げている場合ではありません。

それでも致命的なイメージ悪化を防ぐためか、KPGC110発売直前の1972年10月には東京モーターショーでレース仕様を出展したものの、ワークス態勢でのレース参戦が凍結されていたのでは、ただの「ハリボテ」も同然でした。

GT-R自体も一説には197台(諸説あり)と言われる少数生産・販売で終わり、「S20エンジンの在庫処分だけが目的だったのでは?」と邪推される始末です。

その実力を垣間見ることもなく消えていった、幻のような存在となったKPGC110型スカイラインGT-Rですが、それでも「R」の一族には違いないという見方や、歴代最高の希少率から、今でも話題になりやすい1台となっています。

その運命は果たして、排ガス規制という困難ゆえの悲運だったのか、それともレースで勝ち目がないがゆえの必然だったのか、今でもその詳細な真相は明らかになっていません。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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