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《徹底試乗》タイパ重視の方は要注目!日産新型アリアを買うべき人と注意点は?
目次
日産初のクロスオーバーEV「アリア」
日産は、日本の自動車メーカーのなかでも、最も電動化に注力しているところのひとつです。そんな日産から満を持して登場したのが、クロスオーバーSUVスタイルのEV、アリアです。
2020年7月に発表され、その後2021年6月に予約注文を開始、本格的に納車がスタートしたのは2022年に入ってからとなっています。
日産としては2010年に発売し、2017年に2代目へとフルモデルチェンジを果たしたリーフ以来、2モデル目のEVとなるアリア、その実力はいかほどのものなのでしょうか?
アリア 2WD受注開始受付時のニュースはこちらにて掲載
ボディサイズはやや大きめだが不安要素は無し!
世界戦略車として北米や欧州、中国などの各市場でも販売されるアリアは、全長4,595mm×全幅1,850mm×全高1,655mmという堂々たるボディを持っています。
ただ、このボディサイズ以上に、実際のアリアは大きく感じます。
それは、フロントグリル部分が「シールド」と呼ばれるスモークが掛かったパネルでカバーされていることに加えて、低く滑らかなルーフラインや19インチの大径ホイールが組み合わさることで演出される全体の「カタマリ感」のせいかもしれません。
ソナーが周囲の状況を知らせてくれるので狭い道も安心
アリアの決して小さくはないボディ、特に1,850mmという全幅は、都市部ではやや持て余すかもしれません。
しかし、全方位に向けたソナーによる周辺検知機能により、道幅の狭い道での走行や、混雑している駐車場への駐車に対する不安はほとんどありませんでした。
むしろ、圧倒的な存在感とゆとりのある室内空間を備えているという点で、アリアのボディサイズは大きなメリットを生んでいると言えます。
抜け感のある室内デザインに好印象◎
前席でも後席でも、アリアに乗り込んでみると広い室内空間に驚かされます。
それは、国産車としてはかなり大柄なボディサイズによるところももちろんありますが、後部座席まで続くパノラミックガラスルーフや、水平基調の洗練されたダッシュボードの与える役割も大きいように感じます。
前席の足元もゆったり!フラットな車内
そして、それら以上に大きく影響しているのは、前席も後席も足元がフラットである点です。ほとんどのクルマは、ドライブシャフトなどによってフロアの中央部に段差が設けられていますが、アリアではそれがまったくありません。
特に、前席のフロア中央部が完全にフラットになっているのは新鮮です。
カバンなどを置いてしまうと、アクセルやブレーキ操作に支障をきたす可能性があるため、物を置くスペースとして活用することは難しいですが、開放感のある足元は運転席に座る人にも助手席に座る人にもうれしいものです。
実用的な収納スペースと装備にも注目!
エアコン操作スイッチなどはダッシュボード上に配されていますが、タッチ式のフラットなデザインが採用されており、洗練された印象を与えています。
さらに、前席のダッシュボードには、助手席側のグローブボックスに加えて、中央部にも小物入れも用意されており、スペースを有効活用している印象です。
一方、スマートフォンやカギなどを置くスペースが少ないのは実用性の面では気になるところです。
可動式のセンターコンソールに非接触充電スペースなどが用意されてはいますが、ドライバーのななめ後ろに位置していることから、やや使いづらいと言わざるを得ません。
後部座席は足元も広く、センターコンソールの背面には2つのUSBソケットも用意されているため、後部座席に乗車する人も快適に乗ることができます。
後部座席はフルフラットにならない
アリアの残念なところは、路面の突き上げを強く感じる機会が多いという点です。走行中の「ゴツゴツ」とした感じは、後部座席では特に強く感じるかもしれません。
ラゲッジルームは、深さこそありませんが奥行きは十分で、実用的と言って差し支えありません。後部座席を倒すことでさらにスペースを広げることができますが、フルフラットにはならない点には注意が必要です。
普段使いなら航続可能距離も問題なし!
今回試乗したアリアは、WLTCモードで450kmの一充電航続可能距離を持つ「B6」です。同じく610kmの「B9」に比べれば控えめですが、スペック通りであれば日常的な走行で困ることはほとんどありません。
実際、アリアを引き取った際にはほぼ満充電であったため、メーターに表示される航続可能距離はカタログ値に近い440kmでした。
しかし、まだ安心することはできません。
というのも、筆者がかつてリーフを借り受けた際、メーター上には200kmと表示されていたにもかかわらず、エアコンを使用した状態で走行していると、みるみるうちに表示が減っていってしまい、実際には100km程度しか走れなかったという経験があるからです。
また、テスラのモデルXで高速道路を走行した際にも、回生ブレーキによる充電ができないためか、実際の走行距離以上に、メーター上の航続可能距離は減っていきました。
EVに対する不安の最も代表的なもののひとつが、この航続可能距離の問題です。
実際の航続可能距離はメーターとほぼ同じなので安心できそう
アリアの場合、エアコンを使用した上で一般道路および高速道路を200kmほど走行したところ、メーター上の航続可能距離は実際の走行距離とほぼ同じでした。走行中の数値の推移も違和感はなく、この点はかなり意識したつくりとなっていると感じました。
たしかに充電スポット数の問題はありますが、基本的には自宅駐車場で充電できることが前提であることを考えると、バッテリー容量の小さい「B6」を選んでも、ふだんの生活のなかで困ることはほとんどなさそうです。
維持費は経済的だが注意すべき点も……?
EVの維持費は、基本的にはガソリン車やハイブリッド車に比べて有利になります。
例えば、アリアと同クラスのSUVであるエクストレイルのWLTCモード燃費は19.7km/Lですが、レギュラーガソリン価格を160円としたとき、1万kmの走行にかかる費用は約8万1,218円となります。
自宅に充電設備を設置できるかがカギになりそう
一方、電気料金を27円/1kWhとして、アリア(「B6」)で1万kmを走行すると、かかる費用は約3万8,028円となり、比較的燃費の良いハイブリッド車のエクストレイルと比べても、4万円以上安くなります。
電気料金は契約内容によっても変化するため、単価の安い深夜帯に充電することで、さらにコストを下げることもできます。
ただ、外出先で充電スポットを利用すると、場合によっては数千円の料金が必要となります。このような点から見ても、EVは自宅に充電器があることが前提と言えそうです。
充電器の設置にも費用が発生しますが、補助金などもあるため、自己負担は数万円程度で済む場合がほとんどです。
バッテリーの劣化には注意したい。何年乗るかは要検討
また、各種税制優遇も得られるため、維持費に関してはガソリン車やハイブリッド車の比ではないと言えそうです。
ただし、バッテリーの特性上、使用すればするほど劣化は避けられません。一方、バッテリーの交換は事実上不可能であり、現在のところ現実的ではありません。
10年もしくは10万kmの走行のレベルでは致命的な劣化はないと言われていますが、「乗り潰す」つもりでEVを選択するのはリスクがあるのも実情です。
- 執筆者プロフィール
- 瓜生洋明
- 自動車を中心としたクリエイティブ・エージェンシーである株式会社ピーコックブルー代表取締役社長。仕事柄、国内外の自動車業界の動向に明るく、EVや自動運転など最先端のテクノロジーを専門とする一方で、1996...