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「クソッ!インテRと同期なばっかりに…」ホントに最高の2リッター級FFスポーツクーペなんです!三菱 FTO【推し車】
FF2リッターV6スポーツの名車、三菱 FTO
現在ではダウンサイジングターボ化や部品点数削減によるコストダウン、重量軽減といった要素から直列4気筒に取って代わられ、同じ6気筒でもターボチャージャーや電動化による各種補機類などの配置が容易という理由でも直列6気筒に変わりつつあるV6エンジン。
しかしかつてはエンジンルームがコンパクトな小排気量小型FF車でも、滑らかなエンジンフィールなどの高級感、高回転まで気持ちよく吹け上がり高出力を叩き出す高性能エンジンとして、2リッター級の小型車向けでも多用されました。
特に国産スポーツカー向けに2リッターV6を積んだ代表的な車種のひとつが三菱 FTOで、MOBY編集部がAIに聞いた、「30~50代のクルマ好きが気になる名車」としてもランクイン、まさにその世代ど真ん中である筆者にとっても、想い出に残る1台です。
ランサー/ミラージュセダンをベースとしたFFスポーツクーペ
ホイールベース2,500mm、フロント:マクファーソンストラット、リア・マルチリンクという足回り形式からもわかる通り、三菱が同世代のランサーおよび、ミラージュセダンをベースに開発、1994年に発売した2ドア2+2シーターのFFスポーツクーペがFTO。
バブルが弾け、急速な景気後退に直面した日本での国内専用車としてデビューするという、今なら正気かと言いたくなる時代ではあったものの、一方で三菱そのものはRVブームに乗って販売は比較的堅調。
それどころか日産、マツダといったバブル崩壊からの急速転落組に比べれば好調と言ってよく、トヨタがRVブームに乗り切れていない事も考えれば、スバルともども成長期にあったと言ってよいほどです(※)。
(※何しろオデッセイがヒットする以前のホンダが、三菱に買収されるという噂まであったくらい)
現在では考えられないことですが、日産を抜いて国内2位メーカーへ浮上するチャンスすらあった三菱はイメージリーダーとなるスポーツカーのラインナップ拡大を目論んでおり、ヘビー級のGTOにとって弟分となる2ドアスポーツクーペを望んでいました。
そうしてデビューしたFTOは、成り立ちこそ1.3~1.8リッター級小型大衆車のランサー/ミラージュセダンをベースに、FFスポーツクーペボディとする無難なものでしたが、曲面を多用したデザインは「ガンダムチック」と言われがちなカクカクした三菱車から一変!
短いオーバーハングは俊敏な旋回性能を予感させ、キャビンを小さくまとめ、前後から上へと絞り込んだボディラインは、優れた高速性能をイメージさせました。
搭載するエンジンはトップグレード用で最高出力200馬力と、気持ち良い吹け上がりを予感させる2リッターV6 DOHC MIVECに、廉価版には1.8リッター直4も準備し、手頃な価格の小型高性能FFスポーツクーペとしては申し分ありません。
そう、初代インテグラタイプR発売までは。
「GPバージョンR」の痛快な想い出
筆者がFTOに関わったのは1997年、大学を卒業したばかりの頃で、三菱ディーラーに就職した同級生が、200馬力のGP系グレードへ硬く締め上げた足回りやヘリカルLSD、ディスチャージヘッドランプを組んだスポーツバージョン「GPバージョンR」を買った時です。
本人としては「採用面接ではスタリオンが欲しいと言ったけどいいタマがないし、GTOは無駄に重くてデカいのがイヤだからFTOにした」だそうですが、当時コロナEXiV(初代)が愛車の筆者としても、こりゃいい比較対象が来た!と喜び勇んで貸してもらいました。
不快感までは感じさせないほどよく狭いコクピットでエンジンをかけると、DOHC MIVEC版6A12エンジンは抵抗なく吹け上がり、スタートダッシュでもホイルスピンひとつさせずトラクション性能は抜群!
2速、3速とシフトアップしただけですぐスピードリミッターが作動し、さて後ろから筆者のコロナEXiVで追尾してくるはずの友人は…とバックミラーを見ると、姿形もなし。
2リッターハイメカツインカムで120馬力出てるか怪しい3S-FEを積み、4速ATのコロナEXiVでは「気がついたら点になってた」ほど加速性能が違ったらしいのですが、FTOに乗っていた筆者はただ3速までパワーバンドを確かめつつ普通にシフトアップしただけです。
こりゃ三菱もすごいクルマを作ったものだ…!と驚き、2リッター級のFFスポーツクーペとして最強じゃないの?!と思ったものでした…そう、インテグラタイプRに乗るまでは。
珠玉の名車とほぼ同期という不運
実はFTOにはクルマとしての出来・不出来以前に、「発売翌年にホンダが初代インテグラタイプRを発売してしまった」という不運がありました。
あれだけ軽快で頭の入りが良いと思ったコーナリングも、抜群に感じた加速性能も、3ドアのDC2インテRに比べれば「悪くはないけど、驚くほどではない」というレベルに…競技でもFTOなどあっという間に誰も使わなくなり、販売も低迷。
しかもホンダにしてやられたのはFTOだけではなく、ミラージュもテンロクスポーツ勝負ではEK9シビックタイプR(1997年)に屈し、RVでもオデッセイやステップワゴン、CR-Vで攻勢をかけられ、パジェロなどヘビー級クロカンはブームの主役から降ろされます。
日産の背中が見えたと思ったらホンダに追い越され、しまいには数々のスキャンダルで低迷、ダイムラークライスラー傘下で再建を余儀なくされ、FTOはGTOともども「不要車種」となってしまい、2000年にはアッサリ廃止されてしまいました。
今思えば、「あの頃が三菱の全盛期だったな…」という雰囲気を象徴していたFTOですが、それだけに気持ちのいい走りの想い出は忘れられず、ランエボともども「三菱がまた、ああいうクルマを作らないかな」と思ってしまう古いクルマ好きは、結構多いかもしれません。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...