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もはやブランド力だけではやっていけない?メルセデス・ベンツ唯一のミニバン・ Vクラス 七難の歴史【推し車】

それでもブランドは七難隠す…か?

日本でもこういうノリで使えるといいんですが、今や新車が900万円オーバーとなるとなかなか…(3代目Vクラス・W447)

「メルセデス・ベンツのスリーポインテッド・スターがついて豪華内装な代わり、300万から700万円ばかり高価な、グランエースの超高級版に乗りたいか?」と聞かれた場合、それでもメルセデス・ベンツのVクラスを選ぼうというユーザーは、どれくらいいるでしょう?

クルマ好きの間でよく語られる、「ベンツなんてヤナセが高級車ブランドに育てたけど、ドイツ本国に行けばトヨタみたいなメーカーだよ?」という陰口が、あながち間違いでないのを知らされるのがVクラスでしょう。

ヴィトーという商用バンの乗用モデルですから、トヨタでいえばアルファード/ヴェルファイアというより、ハイエースやグランエースのメルセデス・ベンツ版というのが正解。

「さすがベンツ」という褒め言葉も、Vクラスの場合は質実剛健的な頑丈さや高速安定性の意味で使われるらしく、快適性や使い勝手がよい部類でもなく…日本でももうすぐ発売と言われるレクサスLMが、バーゲンプライスに感じられるかもしれません。

あるいは、この種のクルマでもブランドが大事な用途、あるいは見栄が大事というシチュエーションならば、あえての選択もアリだとは思いますが。

最新「Vクラス」中古車情報
本日の在庫数 243台
平均価格 549万円
支払総額 65~1,222万円

あえて言えば商用ベンツの真骨頂:初代W638(1996年)

初代Vクラス(W638)

歴代Vクラスで唯一のFF車、しかし動力性能不足でモアパワーを求められた時、当時のメルセデス・ベンツにはそんなパワフルなFF用エンジンなどないので、フォルクスワーゲンの2.8リッター狭角V6エンジン(VR6)を積んだというあたりで、もはや出オチ感。

「ヴィトー」という商用バンの乗用モデルをMPV(多用途車)として売り込もうとしたのはいいものの、スリーポインテッド・スターがなければ、日本では「ヴァナゴン」の名で売っていた、フォルクスワーゲンのミニバンの最新モデルかと思ってしまいます。

そのボディは「ひたすら箱」で、荷物を積むのに便利だから、人を乗せても大丈夫だろうというだけの割り切りが感じられますが、これを日本でベンツの一種として販売するのに抵抗感ですとか、これまで築いてきたブランドイメージが…と考えなかったのでしょうか?

もっとも、Gクラスがゲレンデヴァーゲンと呼ばれていた頃も、「これをベンツだと思ったら大間違いで、軍用車両上がりのスパルタンな本格クロカンだ」と呼ばれつつ、立派に高級SUVとして成長したのですから、どこでバケるかわかりません。

少なくとも、日本国内での販売を始めた1998年当時はそう考えていたのでしょうが、その頃でも初代日産 エルグランドに比べてあんまりだ、という気はします。

ただ、1990年代は高規格救急車にフォードやメルセデス・ベンツ車が採用されていた時期でもあり、こんなクルマでも素人目線では「ベンツ」というだけで、カッコイイと思っていたのも事実です。

え、ビアノ?Vクラスじゃないの?:2代目W639(2003年)

モデルチェンジ当初は「ビアノ」を名乗った2代目Vクラス(W639)

2代目にモデルチェンジすると、ミニバンとして販売するのにパワー不足では困るとベースの商用バン、ヴィトーもろともFR化されて、ちゃんとメルセデス・ベンツ製のパワフルで大排気量のV6エンジンを搭載可能になるとともに、「ビアノ」へと改名。

とにかくミニバンとして売るならシートアレンジも含めて使い勝手を向上させなければ!と気合を入れて、2列目・3列目シートはともにスライド可能で、3列目を外せば荷室も広々、キャプテンシートの2列目も広々と豪華な4名乗車ロイヤルミニバンになります。

いやいや、2列目も外せます!そうすれば広大な荷室が生まれて荷物がたくさん…そこまで来ると素直にヴィトーを買った方がいいような気がして本末転倒なうえに、メルセデス・ベンツらしく重厚感タップリのシートですから腰が抜ける重さで、脱着は容易ではなく。

頑張って外しても日本ではシートの置き場所がありませんし、無駄な装備もいいところでしたが、そこはベンツ、日本製ミニバンのように、快適性やスペース効率に多少難が出ても、左右跳ね上げや床下収納で楽しようなんて考えないようです。

しかもそれで2列目・3列目の座り心地がいいなら救われるのですが、そういうわけでもなかったらしく、FR化したことでもわかる通りベンツのバッチをつけたハイエースそのものの遮音性や快適性で、いい評判は聞こえてきません。

スライドドアは電動ではないので開閉は力技ですし、2列目のキャプテンシートはアームレストつきがアダになって3列目へのウォークスルーができないしと、使い勝手は商用バンと同レベル。

しかも「ビアノ」という車名もベンツらしくなかったようで、途中でVクラスへ改名するドタバタもあり、なかなか超高級ミニバンとして定着しませんでした。

ようやくミニバンらしくなってきた:3代目W447(2014年)

かつては日本仕様の3代目Vクラス(W447)にも「マルコポーロホライゾン」として設定されていた純正キャンパー仕様

2014年にモデルチェンジした3代目Vクラスでは、色気に欠けるボディ後半部デザインを見れば「やっぱりヴィトーの乗用版だよね」と思わせるのは変わらないものの、フロント回りはセダンやSUVに近い「メルセデス・ベンツらしいフロントマスク」を得ました。

この代から搭載された直4クリーンディーゼルターボは遮音性がイマイチ、商用バン上がりで2列目以降の快適性もイマイチ、脱着可能なシートは相変わらず重すぎて非現実的、という難点はあるものの、途中から9速ATも得て高速クルージングはそれなりに楽な模様。

軽くて2,370kg、もっとも思いグレードで2,540kgに達する車重は7人フル乗車だと総重量はゆうに3tを超え、標準ボディで4,905mm、エクストラロングでは最長5,385mm、全幅1,930mmに達する大柄ボディも、FR車ゆえ取り回しは以外に楽だと言われています。

日本人からも「ああ、ようやくミニバンらしくなってきたね」と思えるのが電動スライドドアで、ドアハンドルの操作だけで力をこめずとも電動開閉可能なほか、センターコンソールのスイッチやエレクトロニックキーでも開閉可能と「おもてなし感」が出てきました。

3列目シートをフルリクライニングして、ラゲッジセパレーターというラゲッジにかぶせるボードと組み合わせれば、3人が縦に横になれるフルフラットなベッドが現れる…というのも、超豪華キャンパー、あるいは車中泊用途でイケてる部分かもしれません。

ただし、国産ミニバンに対抗するにはもう一歩!というところまできたVクラスですが、マイナーチェンジや円安進行による価格見直しで最低価格が926万円からとなってしまったのは痛いところ。

アルファード/ヴェルファイアやレクサスLMに対抗する超高級大型ミニバンとしては、ブランド料込みで高額になるのは仕方ないとしても、もう少し使い勝手をよくするか、ブランドに恥じない快適性を手に入れないと、有望な選択肢にはまだならなそうです。

これくらい大型の輸入キャンパーベースだと、最近はフィアットから「デュカト」という手頃な価格(512.5万円から)の商用バンも入ってきていますし、ブランドを活かした改良や販売戦略を立てていかないと、日本でのVクラスに明日はないでしょう。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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