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【新型マツダ MX-30 EV】今までのEVとは違うぞ!|試乗レポ
撮影・文:宇野 智
マツダの量産車では初となる電気自動車「MX-30 EV MODEL」がついに国内発売。プレス向け試乗会のレポートをお届けします。意外にもEVらしくない、いかにもマツダらしいクルマでした。
目次
国産EVに新たな選択肢
2021年1月18日、菅首相は2035年までにすべての新車販売を電気自動車(EV)にすると明言、大きな波紋が広がりました。しかし、この日の時点で生産販売中の国産EVは、日産 リーフのみ。Honda eはデビュー済ですが、2020年秋からの一時受注停止が続いています。
その10日後の1月28日、マツダは初の量産EVの「MX-30 EV MODEL」の国内発売開始を発表しました。国産EVに新たな選択肢が加わりました。
【動画】実際の車室内走行音とEVパワーユニットにカメラ潜入
「MX-30 EV MODEL」とはどんな車?
「MX-30」は、2019年開催の東京モーターショーで世界初公開された、コンパクトSUV。先に発売されているコンパクトSUV「CX-30」「マツダ3」とプラットフォームは同じです。
エクステリア上の最大の特徴は2つ。1つは「フリースタイルドア」と名付けられた観音開き式のドアを有し、センターピラー(前後ドア間の支柱)がないこと。かつてのスポーツカー(厳密にはスポーツセダン)のRX-8と同じ方式です。もう1つは、フロントマスクがこれまでのマツダのSUVの共通デザインではない、という特徴があります。
東京モーターショー2019では、MX-30をEV専用車の扱いと受け取れる発表をしていましたが、2020年7月31日、クラシックカーの祭典といわれる「オートモビルカウンシル」で突如、マイルドハイブリッドエンジンを搭載したMX-30の国内導入を発表、我々自動車メディア含めて「あれ?EVじゃなかったっけ?」と驚かせました。
そして、2021年1月28日に「MX-30 EV MODEL」を国内発売開始となり、今回のメディア向け試乗会が開催された、という経緯です。
MX-30のボディサイズは、全長4,495mmとコンパクト、全幅は1,795mmの3ナンバーサイズ、全高は1,565mm。立体駐車場の車高制限で多い1,550mmあたりで、なんとか入るか入らないかくらいな低めの設計です。モーターのパワーや航続距離は次項以降で説明します。
「MX-30 EV MODEL」の走りはどうだったか?
EVの走行音といえば、周波数が高い「ヒューイン」といった未来的な音で、鋭い加速とともに走り去っていくイメージをお持ちではないでしょうか?
私もそういうイメージがあります。実際にこれまでに乗ったEVはそうでした(輸入車を含めて)。
しかし、MX-30 EVは違いました。どう違ったのかは、文章だけでは伝わり辛いので、本記事冒頭の動画でご確認ください。実際の走行音をたっぷりとお届けしています。
はたして、航続距離256kmで十分か?
MX-30 EV MODELの航続距離は、256km(WLTCモード)となっています。他のEVと比較すると短いスペックです。まだ長距離を試乗していないので、実際の電費と航続距離がどうなのかは不明ですが、150km前後ぐらいの航続距離ぐらいになるのでしょうか。
MX-30 EVのバッテリー容量は35.5kWと小さい仕様です。ちなみに、日産リーフの標準モデルでは、40kWhと62kWhの2つのバッテリー容量を設定しています。
しかし、MX-30の開発主査、竹内都美子氏は「初めからバッテリー容量を、35.5kWhに決めて開発を進めた」といいます。やはり、EVの開発の要はバッテリーだったのだと認識させらるとともに、EVの車両価格で最も大きなウェイトを占めるのはバッテリーであることも再認識させられます。
はたして、256kmの航続距離で十分か?
結論から申せば、日常生活の範囲内であれば、おおむね十分だといえるでしょう。
ただ、休みの日のレジャー、旅行で車を使うとなると心許ないのは否めません。満充電で高速道路を走れば、2時間も経たないうちにSAでの充電が必要となるでしょう。しかし、これをどうとらえるかだけのお話。
長時間運転するとき、約2時間おきの休憩が安全運転のススメとされています。EVで高速道路を走れば、自ずと充電のタイミングで休憩時間を確保できます。
先を急ぐには不向きですが、休みの日にはのんびりとしたカーライフを楽しみたいという方なら、コンパクトSUVに新たな価値観を提供したMX-30のコンセプトとマッチするでしょう。
EVライフの概念に一石を投じたMX-30
MX-30 EVの走りは、電気自動車らしくないのです。
そもそも、MX-30(マイルドハイブリッドモデル)というクルマ自体が、カーライフそのもの、クルマそのものの概念に一石を投じたといって過言ではない、と筆者は思っています。実際に、ディーラーで実車を見て触って乗った人が「今までのクルマと違う何か」を感じ、それに惹かれて購入していく、という話しを訊きました。
観音開きの「フリースタイルドア」という独特なドア形式をもったクルマで個性は強め、これに加えてEVらしくないEVとなると「EVライフの概念に一石を投じたMX-30」と言わざるを得ません。
なんとなく、ぼんやりとした試乗レポートになりましたが、MX-30は一見ぼんやりとしたクルマなので、それで良いと思っています。そのぼんやりとした中に「なんか、いいな、これ」を見つけた方に乗ってほしいと思うからです。
MX-30開発主査 竹内氏が「ディーラーの営業担当には、MX-30は積極的なセールスをしないでほしいと伝えた」と以前の取材時に語っていたのが、今でも印象に残っています。
さて、筆者はMX-30の長距離試乗テストをこの春に実施することにします。2,000〜3,000kmの距離をMX-30 EVと一緒に過ごしながら、日本の電動化について考え、現状を再確認してきます。
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...