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「経営がヤバいと名車を生む」マツダの“不死鳥経営”はここから始まった?社会現象を起こした「赤いファミリア」|マツダ 5代目ファミリア【推し車】
「広島の不死鳥、マツダ」を決定づけた1台
5代目BF型ファミリアで注目すべきは、単にその頃の流行となりつつあったFF2BOX化を果たしたという面だけではなく、優れた収益性と、マツダらしいスポーツ性の確保の両立でした。
ボディを平滑化したフラッシュサーフェス化は、1970年代までの日本車に多かった曲線的で抑揚のあるグラマラスなデザインに対し、手の込んだプレス工程を要せずスマートで先進的なイメージを低コストで実現しています。
搭載されるエンジンは平凡なキャブレター式SOHCエンジンで、特筆すべき動力性能を持ち合わせていなくても、左右分割可倒式でリクライニングも可能な後席と、目一杯倒せる全席とでフルフラットの広い室内を実現可能なパッケージが魅力なので、問題なし!
このあたりの工夫は、再度の経営危機から立ち直るキッカケを作った初代デミオ(1996年)でも忠実に再現されたマツダのお家芸となっており、収益性の高い低コストで魅力のあるコンパクトカー開発としては、他メーカーも大いに参考とすべきところです。
しかも、マツダらしいスポーティな走りを同社初のFF車でも実現することに抜かりはなく、2本のロアアームと長いトレーリングアームによってトーコントロールを行い、リアに高い追従性を与えた「SSサスペンション」による操縦安定性は絶賛されました。
低コストで走りが良くパッケージングは秀逸なコンパクトカーは、ユーザーの満足度が非常に高いだけではなく、メーカーにとっても利益率が高くイメージアップという大きなメリットがあり、売れるほどユーザーもメーカーも嬉しいのが特徴。
「いい車を作れば売れる」というだけではなく、「売れれば売れるほど儲かる」ことに徹底して取り組んだマツダは、どれだけ失敗して傾こうとも大事な技術を持つメーカーとして誰かが助けるという、現在まで続く構図をこの5代目ファミリアで確立させました。
単に売れただけではなく、マツダが傾くことはあっても、決して倒れない自動車メーカーであることを決定づけた1台として、このファミリアは記憶されるべきでしょう。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...