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デミオディーゼル(XD)を解説|実燃費はアクアよりもいい?エンジンのリアルな評判などを紹介
目次
- マツダ・デミオディーゼルXDの全て
- マツダ・デミオの誕生前
- マツダ・デミオ誕生【1996年】
- マツダ・デミオにディーゼルを追加【2014年10月】
- ディーゼルエンジンとは?
- スカイアクティブ・テクノロジーとは?
- スカイアクティブDとは?
- デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【1】
- デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【2】
- デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【3】
- デミオディーゼルXD・音や振動の課題クリア
- デミオディーゼルXD・燃費向上の秘策
- マツダ・デミオディーゼルXDの内観・外観
- マツダ・デミオディーゼルXDのスペック詳細
- マツダ・デミオディーゼルXDの実燃費やエンジンのリアルな評判
- デミオディーゼルXDはマツダの戦略車
マツダ・デミオディーゼルXDの全て
マツダ・デミオディーゼルXD
スノーフレークホワイトパールマイカ(2016年11月モデル)
マツダ・デミオの誕生前
当時のマツダは? 【1989年~1990年始め】
マツダ・クロノス(1991年モデル)
バブル期に突入した1989年、マツダは「販売多角化」という経営戦略を打ち出します。
「販売多角化」とは、車種によって販売網を5ディーラーに分けるというもので、「マツダ」が商用車・小型車・高級車を、「アンフィニ」がRX-7などの高級スポーツカーを、「ユーノス」がロードスターなどのヨーロッパスタイルの車を、「オートザム」が軽自動車を、「オートラマ」がフォードブランドの車を扱うというものでした。
しかし、1990年代始め、企業規模を超える急激な経営多角化は、却ってブランドイメージを分散するだけで、当初の販売目標を達成することが不可能となり、深刻な経営不振に陥ってしまいます。
このブランド戦略の失敗は、当時マツダ車の主力車だったクロノスとギリシャ神話を掛け「クロノスの失敗」と呼ばれることとなりました。
その後、マツダは経営戦略の見直しを図り、販売網は統合することと決め、次世代を担う車種の開発に心血を注ぐことに専念します。
マツダ・デミオ誕生【1996年】
デミオはマツダの救世主
マツダ・デミオ初代(1996年8月モデル)
経営立て直しを迫られていたマツダは、バブル景気がはじけたその時期、到来していたミニバンブームに焦点を合わせ、コンパクトカーといえどもスペースや実用性を備えた車を開発することに決定します。
短期間・低コストを心掛け、プラットフォームはオートザム・レビューの流れとなる「DWプラットフォーム」を使用し、エンジンは1,300cc直列4気筒SOHCと1,500cc直列4気筒SOHCとしました。
こうして1996年、初代マツダ・デミオが誕生したのです。
デミオとは、スペイン語で「de Mio(私のもの)」から名付けられ、「私なりの楽しみ方を見つける車」となるようにとの思いが込められたといわれています。
無駄な装飾を極力施さず、見た目より室内空間を充分に確保することで「小さく見えて大きく乗れるデミオ」「自由形ワゴン」をキャッチフレーズにした「初代デミオ」は、市場の幅広い層から人気を博し、日本カー・オブ・ザ・イヤー特別賞を受賞するに至ります。
まさにデミオのヒットが、マツダを経営危機から救うこととなり、当時「デミオはマツダの救世主」と称されたのです。
マツダ・デミオにディーゼルを追加【2014年10月】
そもそもディーゼルエンジンって何?
マツダがデミオシリーズに、新開発のテクノロジー「スカイアクティブ・テクノロジー」を使い、クリーンディーゼルエンジン「スカイアクティブD」を搭載した「マツダ・デミオディーゼル XD」を販売したのは2014年10月でした。
マツダ・デミオディーゼルXDの要ともいえるこの革新的な開発には、いったいどのような秘密が隠されているのでしょうか?
そもそも「ディーゼル車とはどういった構造なのか?」という初歩的なことから説明していきます。
ディーゼルエンジンとは?
ディーゼルエンジンは、燃焼室に吸い込んだ空気を圧縮・高温とし、それに軽油を噴射し、爆発させることによって、そのエネルギーを駆動力として使用します。
ガソリンエンジンと大きなしくみは変わりませんが、ガソリンエンジンが空気とガソリンの混合気を圧縮するのに対し、ディーゼルエンジンは空気のみをあらかじめ圧縮するのです。
これは、ガソリンと軽油の性質の違いによるもので、ガソリンが常温・常圧でも燃えやすいのに対し、軽油は高温・高圧の場合に燃えやすいという違いがあるためです。
そのため、ディーゼルエンジンは空気を高温・高圧として「圧縮率を高く」して、燃えやすい形を作ってから、軽油を噴射するという方法をとっているのです。
圧縮率が高くなれば、爆発する力はそれだけ大きくなるので、燃焼効率が上がります。
ディーゼルエンジンのメリット
ディーゼルエンジンの持つメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
いくつかあげてみます。
【1】燃焼効率が良いため、二酸化炭素(CO2)の排出が少ない(二酸化炭素(CO2)の排出量は、燃料の消費量に比例します。燃焼効率が良いということは、それだけ燃料を使う量が少なくなるため、二酸化炭素(CO2)の排出量が少なくなるのです)
【2】低速回転時に最大トルクとなるため、スムーズな発進や低速走行に力がある(トルクとは、エンジンを回転させる力のことをいいます。また、最大トルクとは、エンジンを回転させる力の最大値です。車を発進させたばかりの状態やスピードが出ていない時はエンジンの回転数が低速であるといえるため、その状態で回転させる力が大きいディーゼルは、低速走行に力を発揮するといわれています)
【3】燃焼効率が良く、低速回転時に最大トルクを得られるため、高速回転を必要としない運転では、燃費が良い(逆に高速回転時には、エンジン装置の頑丈な材質などにより、多くの燃料を必要とするため、燃費はあまり伸びないとされています)
【4】高圧縮に耐えるようににエンジン装置が頑丈に作られるため、耐久性に優れている
【5】ガソリンと比べ、燃料となる軽油が安い
ディーゼルエンジンのデメリット
今度は逆に、ディーゼルエンジンのデメリットとしてどのようなものがあるのか、いくつかあげてみます。
【1】高圧縮とするための機械的な装置の形状などから、騒音・振動が大きい(ディーゼルエンジン独特の音や振動は、エンジンの燃焼による圧力波と、頑丈に作られた部品の構造上の震えが掛け合わさって発生します)
【2】ディーゼルエンジンの機構上となる拡散燃焼により、燃焼にムラができ「黒煙・有害物質(PM)」が発生したり、「窒素酸化物(Nox)」が発生しやすく、有害物質除去のための後処理技術が高価となる(拡散燃焼の場合、ある部分はよく燃え、ある部分は燃えないなど、均一に燃焼しないしないため、燃焼にムラができます)
【3】高温・高圧縮とするためにエンジン装置を頑丈としなければならず、コスト増となる
【4】高温・高圧縮に耐えるため、エンジン装置・部品も頑丈としなければならず重くなるため、慣性質量が大きくなり、最高回転数がガソリンに比べ低い(慣性質量とは、装置・部品が重いために発生する「動きにくさ」といえます)
スカイアクティブ・テクノロジーとは?
マツダ・デミオディーゼル XDに使用された統合技術
マツダ・デミオディーゼル XDには、マツダの新技術「スカイアクティブ・テクノロジー」が使われています。
最近よく耳にするこの「スカイアクティブ・テクノロジー」とはどういった技術なのでしょうか?
スカイアクティブ・テクノロジーとは、マツダが2010年に発表した新技術です。
これまで、車の製造・開発には従来のモデルのユニットを流用したり、そのまま使用したりしながらモデルチェンジしていくのが一般的でした。
マツダは、この従来の製法を見直し、「エンジン」「トランスミッション」「シャシー」「ボディ」を1から作成しなおし、統合的に制御することで、作成時期や形成内容によって車の真の走行性能とスペックにズレが発生しないようにしたシステムなのです。
スカイアクティブDとは?
マツダ・デミオディーゼル XD搭載のディーゼルエンジン
マツダ・デミオディーゼル XDのエンジンは、クリーンディーゼルエンジンといわれる「スカイアクティブD」が搭載されています。
従来のディーゼルエンジンは圧縮比が高いというのが一般的でした。
マツダは、「ディーゼルエンジン=高圧縮比」というのを見直したらどうなるか?と考えました。
ディーゼルエンジンを低圧縮比にすることができれば、従来の重たいエンジンの形状を見なおすことができ、コストや燃費を向上させることができます。
後は、低圧縮比にした場合の課題を解決し、ディーゼルエンジンのメリットだけ残せばいいという考え方です。
まさに逆転の発想ですね。
それでは、マツダは、低圧縮比にした場合の課題やさまざまな問題をどのようにクリアさせたのでしょうか?
次の章で説明してみましょう。
デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【1】
混合気に火がつきやすくする
低圧縮比とした場合、問題となるのは「低温時の燃料の着火性」です。
なぜなら、ディーゼル(軽油)は、「高温・高圧時に燃えやすい」という性質があるのです。
マツダは、この問題をクリアするために、圧縮した空気に燃料を噴射する際に使用する「噴射器」に高性能インジェクター「ピエゾ駆動インジェクター」を採用しています。
このインジェクターは、非常に高圧で燃料を噴射することができます。
また、エンジンの燃焼室もムラのない混合気が作れるよう「卵型」の形状にしているのです。
これにより、低圧縮比とした場合の、低温時の着火性は確実に改善され、またムラのない混合気が作れることから、有害物質が非常に少ないクリーンディーゼルエンジンとなりました。
デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【2】
低負荷からターボ過給する
低温時の燃料の着火性の問題を解決するために、マツダが考えたのは「空気がエンジンに入る前にあらかじめターボで加圧する」ということでした。
入る前にターボで加圧してしまえば、エンジンに入ってから、たとえ低圧縮比であったとしても、ピストンが真上にくる時点での圧力が高くなり、問題をクリアできます。
また、本来ディーゼルエンジンが持つ低速回転時の大トルクから、ターボを使用することで、高速回転時にも伸びのある加速を得ることができるようになりました。
デミオディーゼルXD・低圧縮比の課題クリア【3】
排気バルブの排熱を利用する
低圧縮比の低温対策にマツダが活用したのは、「排気バルブ」の排熱を利用して、温度を上げるということでした。
スカイアクティブDの排気バルブは2度開きとなっていて、2度開きで熱くなった排気をエンジンのシリンダーに戻してやることで、排熱を利用して下がりがちな温度を上げるというものです。
デミオディーゼルXD・音や振動の課題クリア
ナチュラル・サウンド・スムーザーの開発
ディーゼルエンジン独特の音や振動は、エンジンの燃焼による圧力波と、部品の構造上の共振が掛け合わさって発生・増幅します。
マツダは、デミオディーゼルXDに「ナチュラル・サウンド・スムーザー」を取り入れることにより、音や振動を抑えています。
ナチュラル・サウンド・スムーザーとは、ピストンピンに組み込まれた「ダンパー」によって、音や振動のエネルギーを吸収し、抑えるシステムです。
デミオディーゼルXD・燃費向上の秘策
部品の軽量化・低剛性化で実現
マツダは、デミオディーゼルXDのディーゼルエンジンを低圧縮比としたことにより、これまで高圧縮比であるがゆえに部品の重量を重たくしたり、高剛性(頑丈・強固)としなければならなかったものを、ピストンを始めとする「回転系部品」の重量を軽量、低剛性にすることが可能となり、燃費の飛躍的向上を実現することができました。
マツダ・デミオディーゼルXDの内観・外観
デミオディーゼルXDの外観
マツダ・デミオディーゼルXD
エターナルブルーマイカ(2016年11月モデル)
コンパクトとはいえ、いかにも走りそうな「精悍な顔つき」が特徴の「マツダ・デミオディーゼルXD」。
ボディは、一見手塗にも見える「匠塗り」という塗装技術で、濁りのないツヤ感のある仕上がりとなっています。
デミオディーゼルXDの内観
ドライビング・ポジションにも徹底的にこだわり、デミオディーゼルXDには「オルガン式アクセルペダル」が採用されています。
コンパクトながら、体にしっくりなじむ空間は、これこそが「人馬一体」といわれるスカイアクティブ・テクノロジーの醍醐味といえる乗り心地となっています。
オルガン式アクセルペダルに関する情報はこちらの記事
オルガン式ペダルとは?吊り下げ式と比べたメリットやデメリットについて
マツダ・デミオディーゼルXDのスペック詳細
デミオディーゼルXD 6速AT 2WD(FF) 2016年11月モデル
全長×全幅×全高 | 4,060×1,695×1,525mm |
ホイールベース | 2,570mm |
車両重量 | 1,130kg |
エンジン | 直列4気筒DOHC16バルブターボ |
圧縮比 | 14.8 |
排気量 | 1,498cc |
最高出力 | 105ps/4,000rpm |
最大トルク | 25.5kgm/1,500~2,500rpm |
燃料 | 軽油 |
燃費(JC08モード) | 26.4km/L |
デミオディーゼルXD 6速MT 2WD(FF) 2016年11月モデル
全長×全幅×全高 | 4,060×1,695×1,525mm |
ホイールベース | 2,570mm |
車両重量 | 1,070kg |
エンジン | 直列4気筒DOHC16バルブターボ |
圧縮比 | 14.8 |
排気量 | 1,498cc |
最高出力 | 105ps/4,000rpm |
最大トルク | 22.4kgm/1,400~3,200rpm |
燃料 | 軽油 |
燃費(JC08モード) | 30.0km/L |
デミオディーゼルXD 6速AT 4WD(FF) 2016年11月モデル
全長×全幅×全高 | 4,060×1,695×1,550mm |
ホイールベース | 2,570mm |
車両重量 | 1,210kg |
エンジン | 直列4気筒DOHC16バルブターボ |
圧縮比 | 14.8 |
排気量 | 1,498cc |
最高出力 | 105ps/4,000rpm |
最大トルク | 25.5kgm/1,500~2,500rpm |
燃料 | 軽油 |
燃費(JC08モード) | 22.8km/L |
マツダ・デミオディーゼルXDの実燃費やエンジンのリアルな評判
マツダ・デミオディーゼルXD Touring L Package(2016年11月モデル)
マツダ・デミオディーゼルXDの実燃費やエンジン性能に関してユーザーのリアルな評判をいくつか紹介してみましょう。
- 価格が安い。このクラスでなかなかこの価格はないと思います。燃費がよくとても経済的です。エアコンの要らない時期だと走行状況にもよりますが、18~20km/Lほどだと思います。
- クリーンディーゼルエンジンのパワーがすごい。経済性も併せ持つのでハイブリッド嫌いな人は選択肢としてアリ。2500cc並みのトルクは評判どおりで、低速から高速までよく回る。
- 主に片道100kmの峠越えの通勤に使用してますが、最高で37km/L、飛ばしても25km/L以上、平均で29km/Lです。
- 燃費も高速実走行で18km/L程度なのでまずまずの低燃費だと思います。
- 登り坂でも余裕の加速。加速力は馬力だ!と思ってましたが、トルクって大切ですね。
- 国産コンパクトカーでは最良であろう安定感。
- 俊敏ではないが中高速でも安定感のあるコーナリング、素直なブレーキフィール 。
- 最適な運転姿勢がとれる。前車フィットから腰痛が7割減りました。
実燃費・エンジン・リアルな評判を総合すると
実燃費・エンジンのリアルな評判を総合すると、マツダ・デミオディーゼルXDは、燃費がいいとされるトヨタ・アクアの実燃費と同等の実力があるようです。
走る場所や速度にもよるので、断定はできませんが、燃費に関しては多くのユーザーの方が満足されているようです。
エンジンの評判に関しても、力・加速とも高評価のようです。
また、軽油とガソリンの価格差を考えた場合には、ガソリンを必要とするトヨタ・アクアより、マツダ・デミオディーゼルXDに軍配が上がりますね。
デミオディーゼルXDはマツダの戦略車
デミオディーゼルXDのテクノロジーからエンジン・燃費までを徹底解説してきましたが、いかがでしたか?
古くは、ロータリーエンジンの開発も試みていたマツダ。
独創的な技術開発は、まさにマツダの真骨頂といえるようです。
高評価のデミオディーゼルが将来どのように変わっていくか、楽しみですね!
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- 執筆者プロフィール
- MOBY編集部
- 新型車予想や車選びのお役立ち記事、車や免許にまつわる豆知識、カーライフの困りごとを解決する方法など、自動車に関する様々な情報を発信。普段クルマは乗るだけ・使うだけのユーザーや、あまりクルマに興味が...