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『ワイスピ』にも登場!アラブの王族専用ハイパーカー?ライカン ハイパースポーツは世界7台限定車【推し車】
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7台限定に100件以上のオファーが殺到!あるトコには金が…
最近、行きつけのバーのボトルキープをジャック・ダニエルからトリスに変えた筆者にとって全く縁のない話ですが、中東のドバイに本社があるWモーターズというメーカーでは、ライカン ハイパースポーツという340万ドルもするハイパーカーを販売していました。
340万ドルは2013年発表当時の日本円で約3億4,000万円、だいぶ円安が進んだ2023年6月現在では約4億7,000万円!にも達し、さすがにそんなクルマを買う人は大層限られると思いきや、7台限定に100件以上のオファーがあったそうで…。
単に生産数が高くて高性能なだけではなく、値段なりに超豪華!さらに彼らがリバース・ダイヒードラル・ドアと称するユニークな後ろヒンジのシザースドアという特徴を持つライカン ハイパースポーツとは、どんなクルマでしょうか?
アラブ世界初のハイパーカー
日本では安くて800万円台あたりから、おおむね数千万円台あたりまでの高性能スポーツカーが「スーパーカー」と呼ばれ、最近ではさらに高性能で希少な億単位のスーパーカーを「ハイパーカー」と呼ぶようで、スーパーカーでさえ稀な田舎で見かける事はほぼ皆無。
しかし世界的にはそんなハイパーカーでも発表されるやすぐにオーダー殺到、すぐ完売となるのが定番となっており、古くからの自動車大国が誇る大衆車やちょっとした高級車メーカー以外に、さまざまな国の小規模メーカーから発売されています。
そのため全く馴染みのないメーカー、それも意外な国からリリースされた聞いたこともないハイパーカーは結構あるもので、大メーカーのように大量生産ラインは不要、エンジンも大メーカーの高性能なものを載せればいいので、どこでも作れるのが特徴です。
ただしそれでもある程度は政情不安がなく、安定して平和な国でなければいけませんから、世界の火薬庫じみた中東など、アラブ世界のハイパーカーというのはほとんどありません。
そのため、2013年1月のカタールショーで「ライカン ハイパースポーツ」が、当時レバノンのベイルートを本拠とした「Wモーターズ」というメーカーから初公開された時、中東、あるいはアラブ世界初では初のハイパーカーとして話題になりました。
大衆車では意味がない
英語でWolF、つまり狼を意味する頭文字から始まる「Wモーターズ」は、レバノン人のラルフ・デバスと、フランス人のアンソニー・ジャナレリーによって設立された事から、アラブ初のスーパーカーメーカーとも言われます(※)。
(※イランのサーイパーなど、中東・アラブ諸国に自動車メーカーがなかったわけではない)
特にジャナレリーは「ジャナレリー・デザイン-1」など少数生産の高性能スポーツカーを得意としたデザイナーで、ライカン ハイパースポーツや、その廉価版(それでも185万ドル)、ファニア スーパースポーツも存分に腕を振るってその名を轟かせた代表作です。
彼らが全く無名の新興メーカー、Wモーターズ初の市販車としてハイパーカーを発売したのは、とにもかくにも話題性。
トヨタやフォルクスワーゲンなど世界的大メーカーが、長い時間をかけて築き上げたブランドや信頼性で売りさばく大衆車に対し、中東の新興メーカーがいきなり大衆車を売っても「新興国がそれなりのクルマを作った」くらいにしか見られません。
しかしそれが莫大なオイルマネーをバックボーンとする超贅沢なハイパーカーであれば人々は注目しますし、自分たちが設計したボディの内部はポルシェチューンで知られたドイツのルーフが開発し、オーストリアのマグナシュタイア(※)が生産するとなれば納得です。
(※マグナシュタイアはさまざまな自動車メーカーから少量多品種生産から大量生産まで受託しているアウトソーシングメーカーで、トヨタ スープラ / BMW Z4も同社製)
超豪華で高性能!しかし本質は細かなオーダーメイドにあり
ライカン ハイパースポーツはルーフの3.8リッター水平対向6気筒ターボエンジン(780馬力)をリアミッドシップに搭載し、公称最高速度は395km/h、同じく0-100km/h加速2.8秒、0-200km/h加速9.4秒とされています。
極めて戦闘的なルックス、コンセプトカーのような内装、「リバース・ダイヒードラル・ドア」と呼ばれる後ろヒンジで後上方へ開くシザースドアや、大きく開いてメンテナンス性も高そうな前後カウルが特徴です。
しかし何より凄まじいのは「15カラットのダイヤモンド420個を埋め込んだLEDヘッドライト」であり、「それでも足りないならルビーやサファイアを埋め込むオプションもあり」とされている贅沢さ。
初期の発表では「もっと排気音が大きい方がいい」と言われれば爆音マフラーにしちゃいますし、せっかく7台しか作らないのだから、顧客の要望に大再現応えるべきであり、そこが従来からある量産車メーカーと最大の違いとしています。
しかもその7台のうち、ドバイ警察とアブダビ警察に1台ずつ納入(※)されたので残りは5台、実際に何台売れたかは不明ですが、340万ドルもするのに100件以上のオーダーが殺到し、宝石まで埋め込まないスーパーカーのファニア スパースポーツも作りました。
(※高性能を買われた高速パトロールカーというより、観光資源のようです)
世の中、100人かそこらくらいなら3億4億のハイパーカーにポンと払うセレブがいるもんですね…。
生産台数の誤解と、「ワイルド・スピード」でも使われたレプリカ
なお、生産台数は「5台」と言われる事もありますが、これはアラビア語の7が「٧(サブァア)」と、英語の「V(ファイブ)」に似ているための誤解で、実際は7台だそうです(ほかにオープンスポーツのライカン ロードスターを5台作ったとか)。
また、2015年に公開された映画「ワイルド・スピード SKY MISSION」には、高層ビルの間をジャンプして飛び移るライカン ハイパースポーツが登場するものの、これは本物ではありません。
Wモーターズ製ではあるものの、同じ金型でカーボンファイバーではなくグラスファイバー製のボディを作り、ポルシェ ボクスターをベースにホイールベースを延長したもので、10台作って9台は撮影で破壊したと言いますから、レプリカでも贅沢な話。
他にもボクスターなどをベースにレプリカが作られており、Wモーターズ製の純正レプリカ?ばかりではないそうで、各種イベントで展示されているものもどこまで本当か…宝石展で使われるイミテーション(展示用の偽物)みたいですね。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...