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ランボルギーニ ウラカン EVO RWD/スパイダーW試乗「五感で愉しみ、脳汁噴出。しかし毎日乗れる」
撮影(特記のない画像) 宇野 智
夏の真っ盛りにランボルギーニ の試乗会に参加してきました。場所は御殿場。この試乗会では2020年5月に発表されたばかりの「ウラカン EVO RWD」と、スーパーSUVこと「ウルス」の2モデルをドライブ。この記事では、「ウラカン EVO RWD」のレポートをお届けします。
ウラカン EVO RWDはクローズドルーフの標準ボディと、オープントップの「スパイダー」のW試乗。試乗コースは東名高速御殿場インターから、新東名高速駿河湾沼津SA付属スマートICを往復。インストラクターが先導、計3台で走行し、駿河湾沼津SAでクルマを乗り換えてのドライブ・エクスペリエンス。
前回のウルスの試乗レポートのタイトルに「脳汁」を使ったので、この記事でも重ねて使うことに躊躇したのですが、使います!ランボルギーニは脳汁を出させるクルマなんですよ。
ランボルギーニ ウラカン EVO RWDについて
既にご存知の方はお読み飛ばしを。
Lamborghini(ランボルギーニ)の現在のモデルラインナップは、V12エンジンの「Aventador(アヴェンタドール」)、V10エンジンの「Huracan(ウラカン)」、そしてスーパーSUVの「Urus(ウルス)」の3モデル。
アヴェンタドールがV12に対して、ウラカンはV10であること、車両価格がアヴェンタドールが4,000万円台後半に対してウラカンが2,000万円台後半であることから、アヴェンタドールの下位モデルがウラカンというヒエラルキーが存在しているという認識をお持ちの方が多いでしょう。しかし、それは誤認識となります。
ランボルギーニの歴史を辿ると、同社初となる量販市販車が「350GT」でV10エンジンを搭載して1964年にデビュー、その後1966年デビューの名車「ミウラ」はV12エンジンを搭載、以降、V12とV10の2つのエンジンを軸とした系譜となります。このとき、ランボルギーニは決して「V12の下のクラスを埋めるモデルを開発しよう」という考え方ではなかったはず。
1990年代は、かのトランプ大統領の愛車だったこともあるV12のディアブロのみのラインナップとなった時期がありますが、2001年になってV12のムルシエラゴがデビュー、2003年にガヤルドがデビューし、現在の「アヴェンタドール」、「ウラカン」のラインナップへと受け継がれていきます。2000年代に入る前の開発期間中も、ヒエラルキー思想で2モデルを設定したわけではないはずです。
V12とV10、たった気筒数2つの違いではありますが、クルマの性格は大きく異なります。サーキットなどでドライビングを究極に愉しむのなら、V10。音の迫力で言えばV10の方が勝ります。
話は長くなるのでこの辺りで書き止めますが、アヴェンタドールとウラカンに上下関係はない、と筆者は強く訴えたく思います。
前置きが長くなり過ぎましたが、ウラカン EVO RWDについての簡潔にご紹介。
「EVO」とは「EVOLUTION」のことで、意味は進化。ウラカンの進化版と文字通りに解釈されて付けられた名称です。ランボルギーニによると、ウラカンをさらに進化させたモデルを開発したいが、ウラカンのデザインはマーケットで非常に好まれている、このためデザインは変えずにパフォーマンスのみを進化させた開発をした旨を語っています。
ウラカンには「ペルフォルマンテ」というモデルがあり、これは簡単に言えばサーキット仕様。ターゲットとするユーザーも限定的。対して、EVOは多様なシーンでの走行を想定、サーキットも日常生活の足としても使えるように設計されています。
また「RWD」、後輪駆動でもあることも特筆すべき。他のウラカンは四輪駆動であることに対して、こちらは後輪駆動を採用。ちょっとクルマに詳しい方ならお気づきかもしれませんが、そうです、ドリフトも可能です。ドライブモード「SPORT」はドリフト走行に最適なセッティングに設定されています。
最高出力は610hp、最大トルクは560N・mを発生、排気量は5.2Lの90度V型10気筒自然吸気エンジン、車重は軽量シャシーを採用して1,389kgに抑えられています。
ウラカン EVO RWDは2020年1月にジャパンプレミアされたモデルです。EVO AWDは先行してデリバリーされています。新車車両価格はクローズドルーフモデルで24,126,941円(税別。1円の端数どうにかならんのかと野暮なことは言ってはいけません)、オープントップのスパイダーで26,539,635円というお求めやすい価格設定となっています。なお、新車購入時は内装、シートを素材、色をオーナーが望むものに設定、リアビューカメラ(日本なら絶対欲しい。なぜなら後方視界は日本の駐車場事情に合わない)やスポーツパッケージなどなどオプションをモリモリつけるのがランボルギーニの買い方になりますので、試乗したモデルでざっくり600〜700万円ぐらいがプラスされます。オプションと消費税を含めたトータルプライスは、クローズドボディ約3360万円、スパイダー約3,640万円となります。
筆者は買えません。
乗って100mで感じた扱いやすさ
前回のウルスの試乗レポートでもこう書きました。ウラカンEVO RWDも扱いやすい。そりゃ、まぁ、ボディ形状からしてコンパクトカーや軽自動車のような扱いやすさとは全く次元は異なります。しかし、どう贔屓目に見ても、運転しやすそうなクルマではありません。
それがですよ、一旦走り出してしまえば、あら不思議。逆の意味で期待を裏切られます。運転しやすいのです。ドアを開け地面にお尻をつけるようにシートに座るのは、最初は違和感あるでしょう。車両感覚は乗ってすぐは掴みづらく、細い道では神経を使ってしまうことは否めませんが、コンパクトなボディは(アヴェンタドールに比べて)慣れるとクルマとの一体感が生まれるような車両感覚に。
ウラカンにもドライブモード「STRADA(ストラーダ)」を備えています。このモードはエンジン音がおとなしくなり、エンジンパワーの出方もおとなしくなります。深夜のコンビニに行っても、白い目で見られることはないでしょう。これはウルスも同じでした。
ウラカン EVO RWDのボディサイズは、全長4,520mm、全幅1,933mm(サイドミラー除く)、全高1,165mm。サイドミラーを含めると2m超えの車幅はちょっと辛いシーンがありますが、現行プリウスより少し短い全長なので、なんとかなります。
乗り心地も期待を裏切ります。スーパーカーとは思えない乗り心地の良さ。足回りはビシっと引き締まってはいるのですが、しなやか。路面の凹凸は体に伝わりますが、正しく減衰処理された感じで不快ではありません。
ウラカン EVO RWDの扱いやすさを形容するなら「毎日乗れるスーパーカー」。
ウラカンとの一体感を全身で感じる
高速道路では「至高」の走りを五感で味わうことができます。最初に書き始めるべきなのは、音でしょうかね。
ドライブモードセレクターを「CORSA」にすると、ウラカンのV10は本来の姿を見せます。ランボルギーニといえば、音。アクセルを戻したときの「パンッ、パンッ」は至高です。特にトンネル内では。
ランボルギーニの音を120%愉しむなら、スパイダーを選択すべき。オープンにすればエンジン音、排気音がダイレクトに耳に入ります。
試乗を終えてランボルギーニ・ジャパンの広報担当者と音についての話をしていたとき、「クルマと会話しているみたいですよね」と言われました。確かに。
ランボルギーニが自然吸気にこだわるのは、この音とアクセルレスポンスの良さのため。乗ればなるほどと理解できます。
ブレーキのタッチ、効きも素晴らしい。安心して止まれるブレーキ。クルマが「あとは任せて飛ばせ!」と言わんばかりに効くブレーキ。よく効くブレーキは、高速巡航の安心感を高めます。広報担当者はこれを「後ろから抱きかかられるような効き」と言っていました。物書きの筆者よりうまいことをおっしゃいます。そのまま使わせさせていただきます。
時速100kmの巡航では、余裕そのもの。エンジン音の余裕からして200km/h巡航も余裕なんだろうなと。ドリフト走行向けのセッティング「SPORT」モードなら、サーキットで100km/hを超えるスピードでパワースライドさせるんだろうなと。そんなことを想像しながら走った筆者の顔はたぶんニヤニヤしていたはず。
加速の良さは詳細を言うまでもなく。アクセルを奥まで踏み込めば、脳汁噴出間違いなし。マニュアルシフトモードで、きちんと回転がおいしいところでギアチェンジをスパっと決めればさらに脳汁が出ます。スパイダーでルーフを開ければ、さらに脳汁の量が増えるでしょう。
ステアリングホイールから伝わる路面状況、クルマの挙動といった手の感覚、身体にかかるGの感覚、耳に入るエンジン音と排気音、風の音と、全身でクルマとの一体感を感じることができる、そんな「ウラカン EVO RWD」でした。
また乗りたい!
試乗会の裏側
一般公開されることがない、メディアやモータージャーナリスト向けの試乗会。その模様はあまり表に出ることはありませんが、各自動車メーカー、ブランドはそれぞれの個性を出した演出を行うことが多々あります。今回のランボルギーニ ウラカン EVO RWD/ウルスの試乗会の一部をお見せしましょう。
会場は御殿場にある「Ristorante Italiano 桜鏡」、「ミュゼオ御殿場」が最近までの名称でした。富士山が望める広大な芝生があります。ここではさまざまな自動車メーカー、ブランドが新型車の撮影会や試乗会を開催しています。他のクルマで同じような背景の画像をご覧になった方は多いことでしょう。
会場内は一般公開向けかと思うほどのレベルに装飾されています。
「え?メディア向けなのに?」と思われるかもしれません。「メディアやモータージャーナリストをもてなすだけではないの?」とも思われるかもしれません。
しかし、我々、取材する側にとっては、会場がしっかり世界観をもって作られているかどうかは、読者にどう伝えるかにとても大きな影響を及ぼします。単にもてなしや取材の労いの目的ではありません。ブランディングはこういった裏側もしっかりと行われて、読者や視聴者へ伝播していきます。
コロナの影響で一人でのお食事を頂きました。平時は広報担当者や技術担当者、開発担当者などと意見交換、歓談しながらのお食事となることがほとんどです。また、ブランドのノベルティやグッズなどもいただくこともよくあります。ランボルギーニさんから、いくつかの品を頂戴しました。どうもありがとうございました!
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...