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ホンダ存続のため短命に終わった悲劇の車…「生まれる時代を間違えた」ライフステップバンとは【推し車】

ワゴンRより20年以上前にデビューの「早すぎたクルマ」

軽乗用車ライフの派生車種とわかる「ライフ ステップバン」のエンブレム

2022年現在の日本でもっとも売れているクルマのカテゴリーと言えば、ホンダ N-BOXを筆頭に、スズキ スペーシア、ダイハツ タントが激しいシェア争いを繰り広げる「軽スーパーハイトワゴン」、FF軽乗用車でもっとも背の高い、超ハイルーフな軽乗用車です。

2003年発売の初代タントが始まりですが、もうちょっと背の低いハイルーフ軽乗用車自体は1993年発売の軽トールワゴン、初代スズキ ワゴンRが初のヒット作で、それまでの「小さいから狭いが当たり前のガマングルマ」に大革命を引き起こし、今に至ります。

しかし、実はそれより20年以上も前の1972年、似たようなコンセプトで時代を先取りしすぎた軽自動車、ホンダ ライフステップバンが発売されました。

軽乗用車ではなく軽商用車、しかもFF車という意味では、ワゴンRやN-BOXより現在のホンダ軽商用車、N-VANの先祖とも言えるクルマです。

最新「ライフステップバン」中古車情報
本日の在庫数 7台
平均価格 134万円
支払総額 110~170万円

ホンダの重要な転換点、初代ライフの派生車種

短いボンネット、FFゆえの低床キャビン、スクエア形状のハイルーフボディにドアミラーと、現在販売しても問題なさそうなデザイン

一般的にベース車の「ライフ」を省略、「ステップバン」と通称されるこのクルマは、まず1972年当時、ベーシックモデルのプラットフォームへ全く別のボディを与えた派生車種という、今では当たり前の手法が斬新でした。

ベースとなったライフ(初代・1971年発売)も、前身のN360で慣れた空冷ではなく水冷エンジンを、現在のFF車と同じくエンジンとミッションを横置きに直列配置したジアコーサ式レイアウトの独立トランクまたはハッチバック式の2BOX車という斬新なクルマです。

ホンダとしては、初代シビック(1972年)の特徴をほぼ備える先行開発車をベースに何ができるか試したかったようで、エンジンルームを限界まで縮めキャビンと荷室スペースを最大化。

1980年代に広くアピールする「MM思想(マシンミニマム・マンマキシマム)」を、1970年代に先取りしていました。

本当に1972年に発売されたクルマなのか?と驚くばかり

フロントマスクはシボレー ステップバンなどアメリカのウォークスルーバンと似ており、車名ともども影響を受けたと思われる

発売当時のプレスリリースには、こう書かれています。

「実用性のなかにも乗用車的感覚が取り入れられており、乗降頻度の多い集配業務からレジャーまで、大きな機動力を発揮して巾広い用途に応えます。」

N-VAN(2018年発売)のリリース文かと思ってしまいそうですが、1972年発売のステップバンでこの感覚、未来からタイムスリップした誰かが書いたのか、と思ってしまいそうです。

それだけではなく、ハンドルの傾斜角、シート位置、シフトレバーなどボディ形状に合わせ最適化された運転席と助手席の前方には、センターメーターと平べったいデスク状のダッシュボードがあります。

座面を前方へ引き起こした跡へ、前に倒した背もたれを格納すれば、そのまま広くフラットな荷室床面となるダブルフォールディング式リヤシートなど、これでエアバッグなど安全装備がつけば、今発売しても十分通用しそうです。

軽自動車市場の冷え込みと、社運をかけた戦略変更で短命に

使い勝手を追求した上下に開く2分割式テールゲート。センタータンクレイアウトではないため、荷室口の下端が高いところはかろうじて昔のクルマと感じる。

しかし、1990年代以降の価値観と、1972年当時の価値観はもちろん異なります。

1966年にマイカー元年を迎え、レジャーに行くなら軽自動車では貧乏臭いという時代、あくまで軽商用車に過ぎないステップバンは荷室容積で軽1BOX車に劣ります。

1970年代末まで販売すれば、初期のRVブームでチャンスはあったものの、カリスマ創業者、本田 宗一郎氏が注力したホンダ1300(1969年)は大失敗、軽自動車市場の冷え込みで半ば死に体のホンダにそれは許されません。

オイルショックで省エネ対策にピッタリ、厳しい排ガス規制をクリアする画期的なCVCCエンジンも準備した初代シビックへ自動車メーカーとして全てを賭け、軽トラ以外の全生産ラインを譲り渡し、ステップバンも1974年生産終了。

20年後なら大ヒット間違いなしでも当時の価値観に合わないなら、わずか2年の短命も仕方ありませんでした。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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