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別名「ステップバンピックアップ」割り切った遊び車《ホンダ ライフ ピックアップ》【推し車】
目次
軽トラ以外の軽自動車から一時撤退直前のホンダ軽は面白い
現在はN-BOXが軽自動車販売で圧倒的なNo.1街道を進むホンダですが、1974年から1985年までの約11年間、軽トラ/軽1BOX商用車のTN/アクティ系を除いて軽自動車市場から撤退、シビックなど小型乗用車へ専念していた時期がありました。
しかし撤退直前には、従来からのベーシックモデルやスポーティな派生モデルとは別に、独創的かつ先進的な個性あふれる軽自動車をいくつか発売しており、手頃な価格になった小型車に押されて冷え込む軽自動車市場を活性化しようと努力していたのです。
いずれも当時は理解されずに販売不振だったとはいえ、後のRVブームまで販売していれば人気が出そうな面白いクルマばかりで、そのうちのひとつがライフピックアップでした。
- 最新「ライフステップバン」中古車情報
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本日の在庫数 7台 平均価格 134万円 支払総額 110~170万円
ライフ派生最大の特異点、別名「ステップバンピックアップ」
N360後継のFF軽乗用車として開発、環境性能向上に不可欠な水冷エンジン、限られた寸法で乗車スペースを最大化するMM(マン・マキシマム/メカ・ミニマム)思想に不可欠なジアコーサ式FFレイアウトなど、初代シビックを先取りした画期的な初代ライフ(1971年)。
そのライフには、これも画期的…どころではなく、初代スズキ ワゴンRを20年以上先取りしたようなFF軽トールワゴン型商用車、ライフステップバン(1972年)が存在しますが、さらにステップバンを軽トラ化した、ライフピックアップが1973年に発売されました。
ベースはあくまで「ライフ」だからということか、ステップバンではなくライフのピックアップ版として名付けられていますが、荷台部分を除けばステップバンそのもの、後席と荷室部分のボディ上半分を撤去し、後方1方開き式の荷台にしただけのクルマです。
そのため「ステップバンピック」や「ステップバンピックアップ」と呼ばれる事もありますが、販売台数はごく少数で終わりました。
実用トラック/ピックアップとしてはかなり珍しいFF車
昔から軽ボンネットバンやフルキャブオーバー式の軽1BOXバンと、軽トラックは同時にラインナップするのが当たり前で、ホンダのようにフルキャブオーバー軽1BOX車を持たないメーカーでも、軽トラの荷台に2名分の座席を設けて4名乗車を可能にしていました。
しかしそれらの駆動方式は大抵FR/MR/RRレイアウトの後輪駆動で、軽ボンネットバンはFF車もありましたが、実用的な軽トラのFF車となると、FFしか作れなかった時代のスズキが初代スズライトSPという軽ピックアップトラックをラインナップしたくらい。
実用車以外でもスズキがマイティボーイ(1983年)を作ったくらいで、近代的なFF軽トラックはライフピックアップが唯一、軽自動車以外でもいすゞがエルフマイパック(1972年)を発売したくらいでしょうか。
かなり珍しいFF軽トラ、正確にはモノコック構造の後半部を荷台にしたFF軽ピックアップのライフピックアップですが、レジャー用途も意識したライフステップバンと異なり、純然たる実用車です。
プレスリリースでは「使用ひん度が高く、しかも小口輸送という都市部での集配業務需要の増加に応えて開発」と紹介し、カタログでも都市部での配達用途などに使われていました。
実用車としては致命的欠点ありだが、近年のレジャー用途なら
現在こういうクルマがあれば、カスタム軽トラブームに乗ってリフトアップや大径タイヤを装着、悪路走破性はともかく快適性では軽乗用車並で、レジャー用途向けの面白いクルマになっていたと思いますが、1970年代前半当時にそういう思想はほとんどありません。
そうなると純粋な実用商用車として使う事になり、FF低床車ゆえにTNシリーズ軽トラより荷台床面地上高が低くて荷物の積み下ろしが容易、最大積載量も普通の軽トラ同等の350kgを確保しています。
しかし、短いながらもボンネットを持つため、「荷台長が軽トラよりだいぶ短い」という致命的な欠点がありました。
マツダ ポーターキャブなど、FRの軽ボンネットトラックが当時まだ存在しており、それらより短いボンネットで荷台は長かったことや、ステップバン譲りのビジネス用途に使い勝手のいい内装で勝負できると考えたかもしれません。
しかしフル積載時のトラクションや操縦性への影響が心配されるFF車なのも致命的だったか販売は伸び悩み、1974年にTN系軽トラ以外の軽自動車生産ラインがシビックへ転用されるまでの1年2ヶ月で、1,132台しか生産されなかったとも言われます。
当時は使いみちのなかったFF軽ピックアップですが、ホンダがアクティトラックを廃止した今、N-VANベースで復刻したらレジャー用途で一定の需要が見込めそうです。
また、最近になって意匠登録した超小型モビリティと思しきEVピックアップトラック(※)がライフピックアップの再来として期待されており、こういう1〜2名乗車に割り切った遊びグルマがあると、新世代のモビリティ普及にも弾みがつくかもしれません。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...