更新
Honda eってぶっちゃけどうなの?営業担当者と本音トーク【現役レーサー試乗レポ】
目次
「気持ちいい!」Honda eの走りに驚愕
今回の試乗にあたり最も楽しみにしていたHonda eの走り!
「電気自動車の走りは一体どうなのか?」
「電気モーターのトルクに注目されがちだけど、コーナリングフィールやドライバビリティはどう感じさせてくれるのか?」
ここからはマシンに乗り込み実際に試乗走行をしていく。
リアドライブの高レベルな走行性能にビックリ
Honda eではリアドライブを採用している。この手のコンパクトカーの部類でいうと、リアドライブ駆動の車種はかなりレアだ。
同じホンダのコンパクトカーであるフィットやトヨタのヤリスにおいても、フロントドライブ(FF)を採用するのが一般的。というより、部品点数の少なさやエンジン搭載位置の制約上、FFにせざるをえないというのが正しいかもしれない。
しかし、電気自動車のバッテリーは、エンジンよりも搭載位置の制約が薄いため、Honda eはリアドライブという選択肢も検討できたのである。
このリアドライブ採用という点は、走りの側面から考えても、
「うん、さすがホンダ、わかってる!」
と言いたくなる選択だ。
実際に、公道に出てアクセルを踏み込んだ瞬間からこのリアドライブの恩恵をすぐに感じることができた。
FFの前輪が引っ張って加速してくれる感覚ではなく、リアドライブならではの後ろから蹴ってくれるようなトラクションを背中から感じたのだ。
「うおーー!、やっぱりこのトラクションがいいんだなー!」
さらに、試乗走行を進め、いよいよカーブが連続するエリアに突入していく。
ステアリングを右に左に連続して切り込んでいくのだが、やはりここでもリアドライブならではのコーナリングフィールを体験させてくれる。
「めっちゃハンドリング良い!スポーティだ!」
もしこのカーブを、一般的なフロントドライブ(FF)のコンパクトカーで走行していたならと考えてしまうと様々な妄想がふくらむ。
“今のカーブ、FFならもっと切り込まなきゃ曲がりにくかったのでは?”
“加速できるタイミングがもっと鈍っていたのではないか?”
など、一般的なコンパクトカーでの妄想をふくらませるも、これらのカーブをクリアしていく度に、Honda eのコーナリングフィールがすべてを上書きしてくれる。
リアドライブならではのステアリング追従性は、目の前に迫ってくるカーブに対して自分が切り込みたいステアリング舵角量と完璧に一致しており、カーブを曲がり終えた頃には“キレイに走れた!”という快感を与えてくれる。
やはりこの体験はFFでは再現が難しいと感じており、“前輪は曲がる+後輪は加速する”という分業ができるリアドライブでしか体験できないと感じている。
まさか、この体験がコンパクトカーで、しかも電気自動車で感じられるとは、想像以上のコーナリングフィールで驚いた。
高剛性なボディワーク
そして、Honda eのコーナリングを支える“クルマの体幹”といえるボディワークにおいても非常に好印象だった。
ボディ剛性といえば、ドイツ車などをはじめ、外国車が圧倒的に強いイメージだが、前回試乗したGR86を含め、近年の国産車もすばらしいボディ剛性をもって市場に登場している。
しかしコンパクトカーにおいては、最新の現行車だとしても、ボディ剛性に関して不満を感じることが少なからず筆者にはあった。
そのためHonda eの試乗においてもボディ剛性に関しては不安を持ちながら、試乗に挑んだというのが正直なところだが、その不安を打ち消すほどのボディ剛性をHonda eから感じたということもお伝えしておく。
さすがにGR86などのスポーツカーほど高剛性とは言い難いのだが、一般的なセダンやクーペと比べてもHonda eの剛性はコンパクトカーとは思えないほどしっかりとしていた。
クルマに乗り込みドアを閉めるときから、すでにボディ剛性の高さの片鱗は示していて、
「お、これは普通のコンパクトカーとはちがうぞ?」
と、思わせてくれる剛性感を感じた。
普通のコンパクトカーは、段差を乗り越える時や、路面から伝わってくる凸凹など、エンジンやエキゾーストから伝わってくる以外の振動が、「やはりコンパクトカーだな」思わせるクオリティである。しかし、Honda eでは一つ上のクオリティでそれらの振動をドライバーに伝えてくれる。
もちろん電気自動車であるHonda eにはエンジンがついていないため、それらから発生する振動は一切存在しないのだが、しっかりとサスペンションが働き、ドライバーに正確な路面インフォーメーションを伝えてくれる。
ボディワークの剛性はコーナリングフィールに直結していると筆者は考えており、ステアリングの応答性能やメカニカルグリップを底上げしてくれる重要な役割をしているのだが、この部分もHonda eはすべて想像以上のクオリティだった。
段々と、このレポートを書きながら、“ボディサイズは小さいけど、コンパクトカーと比べるのはもしかして間違ってる!?”と思えてくるほどだ……
やっぱりモーターのトルクはすごかった
まさかのディーラーさんから、
「真っ直ぐのところで、アクセルを踏み込んでください!きっと驚きますよ!!」
と加速テストのお薦めを受け、なにもない直線区間で強めにアクセルを踏み込んでみることになった。
するとモーターの電気音とともに、自分の身体がシートに押し付けられ……
「おおーー!加速すげーー!」
電気自動車で話題になりやすいモーターの“トルク”に関してだが、やはりHonda eにおいてもエンジン車と比べると抜群の加速性能を持ち合わせていた。
普通のエンジンの場合、どうしてもトルクに“山”ができてしまうのだが、Honda eのような電気自動車はモーターから一定したトルクを得ることができるため、アクセルを踏み込んだ瞬間から、強力なモーターパワーでクルマを加速させることができる。
Honda eは0-100mの加速が約6秒とのことだが、これはホンダ S2000とほぼ同等の加速性能を実現している。
Honda eが113kW (154馬力)でS2000が240馬力と、馬力の差がありながらも、200馬力クラスのスポーツカーと同等と考えると、Honda eの加速性能のすごさが伺えると思う。
体感、フォーミュラリージョナルくらいの加速感があった…ほんとに…
コンパクトBEVはサーキットで走れるのか?
さて、公道での試乗チェックも終えたところで、実際のところ“Honda eはサーキットに持ち込んで、走れるか&楽しめるか”ということを真剣に考えてみる。
“リアドライブの走行性能”、“高剛性なボディ”、“強力な加速”。
これらを考えると、筆者的には、サーキットに持ち込んで走れる!楽しめる!という結論に至った。
おすすめはストップアンドゴーが多いミニサーキットか
ここまで筆者の想像を越え続けたHonda eだが、サーキット走行をもしするのであれば気をつけておきたい点がいくつか挙げられる。
まず、ハイパワーなモータートルクだが素晴らしい加速性能を持ち合わせているのにもかかわらず、マックススピードが150km/hで頭打ちしてしまうという事実だ。
一般道の走行であれば、150km/hで十分すぎる最大速度の設定なのだが、Honda eの加速性能から考えると、150km/hなんて一瞬で到達してしまうと想像できる。
例えば、サーキットで日本の最長のストレートは富士スピードウェイの1.5kmなのだが、もしHonda eで富士スピードウェイを走ろうものなら、ほぼ150km/hに頭打ち状態で走ることになり、かなり“暇”になってしまうと予想できる……
サーキットを走行しながら片手でドリンクも飲めちゃう!ってほど退屈なスポーツ走行になる可能性があるため、もし本当にHonda eでサーキット走行を楽しもう!と考えた場合は、ミニサーキットがおすすめなのではと、筆者は考えた。
筑波サーキットや地方のサーキットであれば、小さいコーナーでストップアンドゴーが多いつくりとなっているため、Honda eの小回りが効くハンドリングと強力な加速性能を武器に、常においしい所を使ってスポーツ走行ができるのではないか。
しかし、バッテリーの航続走行距離が著しく低下してしまうため、ただでさえ電気自動車の中でも航続距離が少なめであるHonda eでは他の電気自動車よりも充電スポットのことは常に念頭に置いておく必要がある。
最近では、そんな電気自動車のことも考えられ、大きな国際サーキットでは急速充電スポットが設けられていることが増えており、そのようなサーキットをしっかりと調べてから走行にいくべきだと考える。
まとめると、「ミニサーキット向き」「サーキット内に急速充電スポットは必須」という点を考えると、鈴鹿サーキットや富士スピードウェイに付属しているミニサーキットがおすすめかもしれない、と思った。
例えば、鈴鹿サーキットに付属している“南コース”や富士スピードウェイの“ショートコース”なら、ミニサーキットドライブを楽しみながら適宜充電スポットを利用するという、Honda eにとって理想的な環境下でスポーツ走行を楽しむことができるかもしれない!
ぜひ、Honda eでサーキット走行をしたい方は検討してみてほしい。
いや、もしサーキットに行ってHonda eが走っていたらレアすぎて絶対にガン見してしまう気がするが……
サーキットでカスタマイズするならこうする!
サーキットでスポーツ走行する際にやっておいたほうがいいことについても考えてみる。
残念なことに、そもそもHonda eはサーキットのスポーツ走行をすることなど全く想定されていないクルマのため、スポーツ走行をするためのアフターパーツが販売されていないというのが現状だ。
ブレーキ系はしっかりと準備したい!
アフターパーツが充実していないHonda eだが、それでもスポーツ走行の安全上、ブレーキ周りはしっかりとメンテナンスしておきたい。
筆者が調べたところ、ブレーキパッドに関してはいくつかのメーカーから販売されているようだ。ガチガチのスポーツ走行をうたっている物は少ないものの、ブレーキパッドの予備を常に持っていけるようにしておき、何かあればすぐに交換できる状態にしておくのがおすすめだ。
また、ブレーキオイルなどをケチらずに、しっかりとスポーツ走行が保証されているものがマスト。
Honda eの最大のネックだと考えている、意外な“重さ”もあって、約1,500kgのマシンを止めることはブレーキにとってかなり過酷なため、サーキットで走行する際も、“1周フルプッシュしたら1周クーリングラップ”といったケアが必要になる可能性がある。
ホイールは軽量なものを!
手前でも話した通り、Honda eは意外にも重量が重く、1,540kgと発表されている。
コンパクトカーながら、この重量が非常にネックで、街乗りでもスポーツ走行でもかなり足を引っ張ってしまう可能性がある。
純正でも17インチのアルミホイールを装着しているが、スポーツ走行でより良い走りがしたい!と考えた場合、バネ下荷重を減らすためにより軽量なホイールを装着することがおすすめだ。
純正はアルミホイールは17インチ6.5JのPCD114.3オフセット55mmとなっており、特殊なホイールサイズでもないため、探せば自分が理想とするホイールに出会える可能性が十分にある。
社外品で不安な方は、ホンダアクセスよりHonda e専用のアルミホイールが販売されているため、そちらを装着することも全然アリ。
ただし、キャンバー角などをさらにつけることができないため、自身でホイールを探す際は、オフセット問題は常に気にかけておきたい!
ガチでタイムを狙うならハイスペックタイヤしかない!
Honda eでは、エンジン車のようにチューニングをすることができず、足回りなどを考えても自身でクルマを速くすることはほぼ不可能。
一応、Honda eには“スポーツモード”というモードが存在し、通常よりもパワー感のある走行をすることができるのだが、それ以外にクルマを速く走らせたい場合は、ハイグリップなタイヤを入れるしかないと考えている。
サスペンション強化でメカニカルグリップ力を向上させることもできないので、タイヤのグリップ力が頼りになるのだが、そこでハイグリップなタイヤを装着することによりタイムアップを計るというわけだ。
純正ではミシュランのパイロットスポーツを装着してあるので、十分なグリップ力がある。それ以上となると、ダンロップのZ3やブリヂストンのRE-71RSなど……
場合によっては、小径なタイヤにして車高を下げてみたり、16インチにインチダウンした方がグリップ力を得られたりと、色んなメーカーのタイヤを試して、タイヤチューニングを試す楽しさを味わえそうだ。
ダンロップ(DUNLOP) サマータイヤ DIREZZA Z3(ディレッツァZIII) 195/50R16 84V 327892 1本
- 執筆者プロフィール
- だいち
- 1998年生まれ。高知県出身のリアルレーサー&バーチャルレーサー。フォーミュラリージョナル、FIA-F4、スーパーFJなどのミドルフォーミュラや、マシン開発&タイヤ開発ドライバーとしての経験が豊富。現在の愛...