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日本車神話が崩壊?日本上陸した中国車最高級ブランド「紅旗」ってどうなの
2021年12月、中国の自動車ブランドである紅旗が、大阪なんばに日本初となるショールーム「紅旗エクスペリエンスセンター」をオープンさせました。
長い歴史のなかでも、これまで中国車が正規輸入された例はなく、日本人にとって中国車は物珍しい存在といえます。
今回、日本に進出した紅旗とはどのようなブランドなのでしょうか。また、この時期の日本市場へ参入した中国にはどのような意図があるのでしょうか。
なぜ日本で中国車を見かけない?
中国には国営と民営を合わせて120を超える自動車メーカーがあります。にもかかわらず、これまで中国車は日本に導入されていませんでした。なぜなら中国は「58協定」の締結国ではないからです。
58協定とは、1958年に締結された多国間における『車両等の型式認定相互承認協定』であり、締結国間では輸入時の排ガス検査や衝突安全試験などが免除されることで手続きが容易になるメリットがあります。
58協定を締結していない中国の車を日本で走らせるためには、どうしても手続きが煩雑になってしまうため、これまで日本の中国大使館の公用車として使われる例はあっても中国車の輸入・登録が難しい現実がありました。
とはいえ中国車は環境基準に劣るわけではありません。それどころか現在の中国は欧州のEURO6よりも厳しい国内基準を義務づけています。加えて今回導入された車は、はじめからグローバル販売を見越して設計された車であったため、容易に検査をパスして日本での販売に至りました。
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中国車の最高級ブランド「紅旗」とは
この度日本に進出した紅旗は中国三大自動車メーカーの一角である第一汽車の最高級車ブランド。「紅旗」は中国語で「ホンチー」と読み、英語では「HONGQI」と表記されます。
第一汽車は1953年に設立された中国初の国営自動車メーカーであり、中国政府にとって非常に重要な位置づけにあることは、中国の国旗である五星紅旗を象徴することから伺い知ることができます。
また、ブランドロゴである「紅旗」の文字には、中国建国の第一人者であり、第一汽車の創設者でもある毛沢東の筆跡がそのまま用いられているそうです。
ラインナップはLシリーズとHシリーズの2つ
紅旗のカーラインナップはレトロデザインのLシリーズと、モダンデザインのHシリーズに分けられています。
LシリーズのフラッグシップモデルであるL9は、国家主席の移動や式典で用いられる車です。中国の軍事パレードなどで歴代指導者が乗っている車といえば、思い当たる方も多いのではないでしょうか。
しかもL9とL7と呼ばれるLシリーズのストレッチモデルは、政府機関にしか納入が許されておらず、中国人であっても一般人は購入できないほどに珍重されている車です。日本車で言えばトヨタ センチュリーのような位置付けの車といえるでしょう。
一方で、Hシリーズは誰でも購入可能。今回日本に導入されたのはHシリーズ最高ランクの大型高級セダンです。本国のHシリーズには各サイズのセダンのほか、SUVのEHシリーズや、EV(電気自動車)のE-Hシリーズもラインナップしています。
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日本導入第一号車!紅旗 H9はどんな車?
日本導入第一号車となる紅旗 H9は、レクサス LSやBMW 7シリーズなどが該当するFセグメントセダンであり、ボディサイズは全長5,137×全幅1,904×全高1,493mmです。
もっとも目を引くロールスロイスのような縦格子のフロントグリルは滝を表し、グリルを囲むように配置されたメッキ装飾のデイライトは龍の髭がモチーフのデザイン。フロント中央部には象徴的な赤いモールドラインが鎮座しています。
リアルーフラインは、近年のセダンに多く見られるファストバック風であり、特徴的なテールランプは天安門広場の赤い旗もしくは五星紅旗を表しているそうです。
内装は高級セダンとして遜色ない落ち着きある意匠に仕上げられており、フルデジタルメーターやアンビエントライトも装着され、近年のメルセデス・ベンツのような上品な室内空間に演出されています。最上級グレードのリアシートにはクーラーボックスやマッサージチェアも備わります。
パワートレインは、252phを発揮する2.0L 直列4気筒ターボエンジンと、283phの3.0L V型6気筒スーパーチャージドエンジンの2種類。それぞれにDCT(デュアルクラッチトランスミッション)が組み合わされ、高級セダンらしく後輪を駆動させます。
そして驚くべきことに、この紅旗 H9の価格はおおよそ600万〜900万円。一般的なFセグメントセダンの半額近い価格設定でリリースできる点は、中国車に対して驚異的と言わざるをえません。
この紅旗 H9に続き、今夏には大型SUVである「HS7」の導入も予定されています。
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中国車って実際どうなの?日本車に対抗できるの?
車に限らず、中国では国内で生産活動する場合には現地メーカーとの合弁会社を設立しなければならないというルールが制定されており、中国の国営自動車メーカーのほとんどは日本を含む海外の自動車メーカーとの合弁会社です。
そのため21世紀における世界の工場であると同時に、世界最大級のマーケット規模を誇る中国には、世界中のあらゆる自動車メーカーが合弁会社を設立し、技術やデザインが流れ込みます。
中国車や中国製品に目新しさがなく、どこかで見たことがあるような印象を受けてしまうのは、その政策の功罪とも言えるでしょう。
さらに各メーカーは技術流出を抑えるため、中国車に反映されるのは既存技術に留まります。そのため、中国ベンチャー企業が革新的な商品を開発する一方、家電や車のように大メーカーが参画して広く普及する中国製品は1世代古いものとなる傾向にあります。
高級車には採用されなくなりつつあるDCTを採用しているあたりからも、紅旗 H9の設計の古さが伺えます。それもそのはず、H9が本国で発表されたのは2020年。最低限の信頼性は備えていると思われるものの、それはあくまで世界の平均的な水準。それゆえ信頼性において世界一と言われる日本車の対抗馬となることはないでしょう。
また、H9の車両システム等の言語は中国語、英語、アラビア語のみで日本語には対応しておらず、現段階では主に日本で働く中国人経営者向けの販売としているようです。とはいえ、この紅旗 H9の導入を受けて、在日中国人は日本で祖国の車に乗れることに大喜びである様子。
紅旗は日本だけでなく欧州や韓国、東南アジアへの進出も積極的に行っており、対応言語にアラビア語が入っているとおり中東でも人気の車となっています。
このタイミングで中国が海外進出する意図は?
紅旗の車は日本車の対抗馬とはならないでしょう。ただし、それには「ガソリン車において」という但し書きが付随します。中国は世界有数のEV先進国であり、政府の脱炭素化方針によって、大手自動車メーカーの幾つかはすでに内燃機関車の製造を停止しています。
それを裏付けるかのように中国国内のEV販売台数は急速な伸びをみせており、2021年のEV販売台数は日本がわずか1%であるのに対し、中国は前年比2倍以上の21%。EVが売れれば相対的にガソリン車の販売台数は落ちることは明白です。となれば、自国内で不要になりつつあるガソリン車は、まだ需要がある海外のEV後進国に売るしかありません。
今回の紅旗の日本進出は、いわばガソリン車の在庫処分に近いのではないかと想像できます。またいまのうちに自国のEV市場が飽和した際の受け皿となる販路を海外に開拓しておく必要もあるでしょう。
紅旗の海外進出が中国製EVの販路拡大の布石であるとすれば、このガソリン車需要が先細りしつつあるタイミングでの海外進出にも合点がいきます。現に紅旗はノルウェーへのEV輸出を皮切りに欧州へ販路拡大も狙っているといいます。
他メーカーではあるものの、中国には日本円で55万円程度の格安EVや、航続距離1,000kmの高性能EVがあり、これらを武器に今後中国が世界各国に対してEVの売り込み営業をかけてくるのは間違いありません。
このまま原油高が続くところに中国の格安EVが輸入されれば、日本でもガソリン車に比べていくらかランニングコストが安い中国製EVへの移行を考える人が一定割合で出てくることでしょう。
このままではEVシフトを契機に中国のEV戦略によって、日本車神話が崩れ去ってしまう恐れすらあります。
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- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...