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エンジンのオーバークールって知ってる?冬場の燃費が30%以上悪化する原因とは
冬場は夏に比べて燃費が悪く、車内が暖まりにくいのが困りものです。寒いのだから仕方ない、と我慢していませんか?実はそれはエンジンの故障による「オーバークール」が原因かもしれません。
夏場によく聞くオーバーヒートに比べて耳慣れない言葉ですが、一体どんな不具合なのでしょうか?
冬場は燃費が30%悪化することも!
気温が低下する冬季は、燃費が悪化しがちになります。財団法人省エネルギーセンターによる燃費データの季節変動調査結果によると、もっとも気温が下がる2月がもっとも燃費が悪く、とくに寒冷地では全国平均に対して30%弱も悪化するとのこと。
気温低下による燃費悪化の原因は、雪道走行やアイドリング時間の増加などに加え、水温が適正値になるまでの時間を短縮する目的で使用燃料を増量するよう制御されるためです。
それに追い打ちをかけるのが、冷却系の故障によって引き起こされるオーバークール症状です。
オーバークールとは、冷却性能にエンジンの発熱量に追いつかなくなり水温が過剰に低下する状態をいいます。
故障が原因でオーバークールが起こると、暖機完了までの時間が長くなったり、走行中でも水温も低いままになるため燃費はさらに悪化します。
原因は?オーバーヒートよりなぜ気づきにくい?
オーバークールの原因の多くは、冷却系統に備わるサーモスタットと呼ばれる弁の故障です。サーモスタットは温度に応じて自動開閉することでラジエターへ流れ込む冷却水量を制御する働きを持ちます。
水温が低い状態では、バネの力でサーモスタットが閉じられているため、エンジン始動直後は冷却水をエンジン内だけで循環させて素早い水温上昇を促します。
水温が規定の温度まで上がると弁が開かれ、冷却水がラジエターに流れるようになるため、水温はおおむね80〜90度を維持するように制御されます。
ところが、サーモスタットが開いたまま固着してしまったり、破損して開いたままになったりすると、常時ラジエターに冷却水が流れ込むようになり適切な水温調整ができなくなってしまうと、水温が過剰に低下してしまいます。
こうなると、暖機運転完了までの時間が長くなるため極端に燃費が悪化します。また、速度が高くエンジン回転数が低い状態が続くと、低い気温と走行風によってラジエター内の冷却水がどんどん冷やされ、走行中にもかかわらず水温はどんどん下がってしまいます。
オーバークールは、エンジンが過熱して故障にまで至るオーバーヒートのように、致命的な故障ではないため見過ごされがちです。とくに近年の車は水温計が備わらないため、ますます気づきにくくなっています。
車内が暖まりにくくなり、時には事故の原因にも
適正温度で稼働できないエンジンは燃費が悪化するだけでなく、さまざまな不具合も引き起こします。
まず、オーバークールによって燃料が増量された状態が長く続くと、不完全燃焼が起こりエンジン内部が汚れやすくなります。
またエンジンが適正な熱膨張ができず、ピストンとシリンダーの隙間が大きくなるのも問題です。その状態では、圧縮圧力や燃料が隙間から逃げやすくなるためエンジン出力は低下し、流れ落ちた燃料はエンジンオイルに混ざりオイルの寿命を縮めます。
車内暖房は冷却水の排熱を利用しているため、オーバークールの状態では暖房の温度が上がらず、車内が温まりづらくなります。同時にデフロスターも十分に機能しないため、ガラスの曇りや凍りつきも防げません。極寒冷地におけるオーバークールは、安全や生命維持にも関わる重篤な故障といえるでしょう。
サーモスタットの寿命は一般的に10年・10万kmとされているものの、冷却水の交換頻度や使い方によって劣化の速度や故障の程度は異なるため、症状は車によって千差万別。
自動車整備工場関係者によると、「軽度のオーバークールは故障と判断されづらく、気づかずに乗っている人が多い」とのこと。
走行中に水温計が下がったり、水温警告灯が点灯するほどの症状なら故障に気づきやすいのですが、水温計や警告灯の反応がない場合は、気づきにくいのがオーバークールの怖いところです。
新車購入もしくはサーモスタット交換から5年以上が経過している車で「水温が上がりにくい」「暖房の温度が低い」と感じるなら、本格的な寒波が来る前にサーモスタットの点検や交換をおすすめします。
見落とされがちなオーバークールを解消して、冬のカーライフを安全・快適に過ごしましょう。
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- 執筆者プロフィール
- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...