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サラダ油や灯油を燃料として使用してはいけない?代用すると脱税に?
インフレや円安でいろいろなものが価格高騰している昨今、燃料も例外ではありません。日々の給油時に値上がりを何となく肌で感じ、車を使った外出を控えている人もいることでしょう。
そんな時にふと、「ガソリンや軽油に代わる燃料があれば」と想像しながら所に目を向けるとサラダ油、そして居間にはヒーターに使う灯油が。燃料は石油から生まれているし、サラダ油や灯油も油だから、もしかしたら代用できたりしないの?という疑問にお答えします。
サラダ油や灯油は燃料にできる?
一般的に車に使われる燃料は、ガソリンエンジンディーゼルエンジンの2種類。ガソリンエンジンはガソリンと空気の混合気に点火して動力を生み出します。ディーゼルエンジンは発火点以上の温度に圧縮した空気に軽油を噴射して自然発火を発生させて動力を得ています。
これらの働きをサラダ油と灯油が果たせるのかが問題になります。空気とサラダ油の混合気がスパークプラグで燃焼したり、シリンダーで圧縮された空気に灯油を噴射すると自然発火するのでしょうか。
注目すべき要素の1つは引火点です。引火点とは、揮発した燃料と空気の混合気に火を近づけて着火するのに必要な最低温度のこと。もう1つのポイントは発火点、つまり火がなくても発生する(つまり自然発火)時の温度です。
以下に各引火点と発火点をまとめました。
物質 | 引火点 | 発火点 |
ガソリン(JIS K2202) | -43℃以下 | 300℃ |
軽油 | 45℃〜70℃ | 250℃ |
大豆サラダ油 | 322℃(平均値)* | – |
灯油 | 40℃〜60℃ | 255℃ |
*参照:農林水産省食品産業振興課 編「我が国の油脂事情 2009年10月」
ガソリンエンジンとディーゼルエンジンの特徴に当てはめると、引火点はガソリンエンジンに、発火点はディーゼルエンジンに重要な要素です。
サラダ油は引火点が高すぎるので代用できない!
ガソリンは引火点が極めて低いので引火しやすいですが、食用油は200℃をゆうに超えています。ゆえに代わりを担うことは難しいでしょう。
そもそも、仮にサラダ油がガソリンの代わりをできたとて、一斗缶(18L)で販売されているサラダ油は6,000円くらいで、リッター単価にすると約330円。ハイオクが2021年12月時点でリッターあたり170〜190円ですから、代用してもお得感はありません。
また、ガソリンの引火点は軽油や灯油などと異なり、「以下」となっているのが興味深いところ。これについてとある石油専門団体に問い合わせたところ、「厳密な引火点は確かめられていません。安全性には問題ないことから、この表記になっています」とのことでした。
ちなみに近年は、家庭から集めた使用済油から精製したバイオディーゼル燃料(BDF)で走る低公害のごみ収集車も登場しています。
こちらはトラックやトラクターなどで、軽油の代わりに使用できるとのこと。とはいえ、家庭用サラダ油をそのまま使用しているわけではありません。
灯油を燃料として使用すると脱税になる!?
軽油と灯油の引火点・発火点は共に近い数値にあるので、灯油はディーゼル車の燃料になりうるものといえます。軽油も灯油もガソリンスタンドで購入できるのでラッキー!…と思いきや、これは不正軽油、いわゆる脱税行為にあたってしまいます。
ガソリンスタンドで軽油を購入すると軽油引取税が発生する一方、灯油や重油には軽油引取税が課せられていません。灯油のリッター単価は軽油よりも安いのはそういった理由です。
そもそも、ガソリンエンジンやディーゼルエンジンは使用燃料を前提として設計されていますから、基本的にはその燃料を使うのが当然でしょう。
寒冷地で販売されている軽油は低温度の環境でもエンジン始動できる仕様にしているわけですから、そのような地域を軽油と灯油を混ぜた燃料のディーゼル車で走るのは危険です。燃料や油は、本来の用途に合わせて利用するのが「安全」なのです。
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