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世界中のメーカーが血眼で開発!今後のEVに必要不可欠な「全固体電池」って何?
各自動車メーカーが少しずつラインナップを増やしている電気自動車。未来の電気自動車の駆動バッテリーとして、全固体電池が期待されています。全固体電池とは一体何なのでしょうか。
全固体電池は電解質が液体ではなく固体
電池は正極・負極・電解質の3要素で構成されています。負極で発生した電子が正極へ移動することで電気が発生する仕組みです。
全固体電池と従来のリチウムイオン電池(二次電池)は電解質の状態が異なります。前者は固体の電解質で、後者は液体の電解質です。
つまり固体か液体かの違いですが、従来型リチウムイオン電池の電解質である有機電解液は可燃性で、交通事故時などに発火するリスクがあります。
一方で、全固体電池の電解質の無機固体電解質は難燃性のため、従来型より安全です。その他、低温域・高温域で動作できる点も注目されており、充電時間の短縮や冬場のバッテリー能力低下防止が期待されています。
ネックだった高速充電も可能になりつつある
全固体電池はまだまだ開発・研究段階にあり、さまざまな研究データや開発データが発表されています。
その中から1つ、東京工業大学・物質理工学院の一杉太郎教授、日本工業大学の白木將教授、産業技術総合研究所物質計測標準研究部門の白澤徹郎主任研究員らの研究グループによって発表された研究「全固体電池実現のネックを解明-界面抵抗低減の指針を確立し実用化の道拓く-」(2018)を紹介します。
固体電解質と電極によって形成される界面の抵抗(界面抵抗)は基本的に高い傾向にあります。
この値が大きいと大電流を送った時の電気エネルギーの損失が大きくなり、電気を高速で充放電することが難しくなるため、全固体電池の実用化には高速充電という課題が残っていました。
しかしこの研究では、良好な界面で抵抗値5.5 Ω㎠の全固体電池の作成に成功。全固体電池で低い界面抵抗値を実現する鍵は電極表面の規則的な原子配列にあることがわかりました。
この数値は全固体電池の従来報告の値に対して1/40の値(2.5%)、液体電解質の界面抵抗に対して1/6の値(約16%)に該当。これにより、高速充電可能な全固体電池の実現・実用化へ期待が高まりました。
日本でEVを通年不便なく使うにあたり、地域によっては冬季のバッテリー性能の低下が懸念されます。このような地域でEV・BEV含めて電気自動車を普及させるとなれば、低温に弱い液体電池のままでは難しいところがあるでしょう。
EV普及のためにも全固体電池の実用化・市販化が待たれますが、現段階では全固体電池を使用し、市販化された製品はまだありません。
2020年代前半あたりに全固体電池が搭載された電子機器や車が発売されるのではとの声も聞かれますが、全固体電池自体の開発、実用、量産化にはまだ時間がかかり、全固体電池搭載EVが誕生するのはまだ先だと思われます。
まずはこの先の数年で、全固体電池が採用された工業製品が市販化されるかどうかに期待しましょう。
参照:国立研究開発法人産業技術総合研究所「全固体電池実現のネックを解明」
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