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ダブルウィッシュボーン式サスペンションとは?特徴・構造から採用車種まで
目次
ダブルウィッシュボーンとは?
独立懸架式サスペンションの1つ
自動車のサスペンションは独立懸架式と車軸懸架式に大きく分けられますが、ダブルウィッシュボーンは独立懸架式サスペンションに該当するものです。
独立懸架式にはマクファーソン・ストラット式やマルチリンク式などがあり、その中でもダブルウィッシュボーンはマルチリンクと共に高価なサスペンション形式として知られています。
サスペンションについて知っている人にとっては、ある種のステータス感を感じられるほどです。実際、高級車やスポーツカー・レーシングカーなどに、ダブルウィッシュボーン式サスペンションは積極的に採用されています(理由は後述)。
2本のアームが特徴的
ダブルウィッシュボーン式サスペンションの構造において特徴的なものは、ロワアームとアッパーアームの2つでしょう。
ダブルウィッシュボーンの「ウィッシュボーン(wishborn)」とは叉骨(さこつ)・暢思骨(ちょうしこつ)を意味しています。
ロワアームとアッパーアームがそれぞれ叉骨のような形状をしていることから、ダブルウィッシュボーン(=2本の叉骨)と呼ばれているのです。
F1マシンのサスペンションはダブルウィッシュボーン
世界最高峰のレースと言われるF1(フォーミュラー1)。そこで使われるF1マシンのサスペンションにはダブルウィッシュボーン式が採用されています。
世界最高峰カテゴリーのマシンに使われていることからも、このサスペンション形式の優秀さがわかります。
他の独立懸架式サスペンションと何が違う?
マクファーソン・ストラット式との比較
ダンパーやコイルスプリングといったパーツなどで使われている点は、ストラット式もダブルウィッシュボーン式も同じです。
しかし、ストラット式に組まれているアームはロワアームの1本のみで、この点でアッパーアームとロワアームの2本のアームが存在するダブルウィッシュボーン式とは決定的に異なります。
マルチリンク式サスペンションとの比較
ダブルウィッシュボーン式と比べて、マルチリンク式ではたくさんのロッド状のアーム(リンゲージ:リンク)が装着されている点が特徴的です。ストラット式ではこのようなアームを見ませんから、独立懸架式の中でもマルチリンクならではの構造と言えます
ちなみに、マルチリンクの英語表記は multi-link を直訳すれば「たくさんのリンク」になりますから、言い得て妙な名称といえます。ダブルウィッシュボーンよりも、その名称だけで構造を端的に表現しています。
ダブルウィッシュボーンを採用するメリット
アライメント調整の選択肢が増える
ダブルウィッシュボーン式サスペンションでは、トー角・キャンバー角・キャスター角など(さらにはキングピンやスクラブ半径も)のアライメント調整を純正サスペンションでできるようになっています。
トー角をいじってコーナーリング時のノーズの入り方の違いを体感したり、キャンバー角を変えてコーナーでタイヤのトレッド面をきれいに使えるようにするなどして楽しんだりと、自動車のサスペンションとアライメントについて広く深く学ぶ機会を与えてくれます。
高級感がある
多くの高級車へ採用されていることから感じる高級感、そしてダブルウィッシュボーン式サスペンションが採用されているという事実への満足感などにも良さを感じさせられます。
軽自動車やコンパクトカーのような、比較的お求めやすい価格帯の車種にはほぼ採用されていません。
採用車種のエンジン排気量は大きく、車両重量も重たく、タイヤサイズも大きいなどの要因を鑑みますと、車に使える予算があってこそ体感できるサスペンションとも考えられます(コスト面については後述)。
ダブルウィッシュボーンを採用するデメリット
アライメント出しに手間がかかる
アライメント調整の際に調整しなければならない箇所が多数あるため、正確にアライメントを出すのに手間がかかります。
アライメントをいろいろ弄ってセッティングを楽しめることはメリットと紹介しましたが、正しく弄らないと折角の乗り心地や運動性能が台無しになるということです。
なお、ダブルウィッシュボーンのアライメントでは少なくともトー角・キャンバー角・キャスター角を調整します。
バネ下重量が重くなる
部品点数が基本的に多いため、バネ下重量はストラット式と比べて重たくなる傾向にあります。
この対策として、アーム類やサブフレームをアルミ製にするといった(想像を絶する)研究・開発(=企業努力)にメーカーは取り組んでいるのです。
コストが高くなり、車両価格が高くなる
これら2つのことからわかるように、ダブルウィッシュボーンには質・量・調整のどの要素でも高い費用がかかってきます。
ストラット式サスペンションよりも当然ハイコストです。事故を起こしてサスペンションのアッセンブリーにもなった際には、覚悟をしておきましょう。換言すれば、このような車種にこそ自動車保険の車両補償を掛けておくべきです。
- 執筆者プロフィール
- 監修者プロフィール
- 鈴木 ケンイチ
- 1966年9月15日生まれ。茨城県出身。国学院大学卒。大学卒業後に一般誌/女性誌/PR誌/書籍を制作する編集プロダクションに勤務。28歳で独立。徐々に自動車関連のフィールドへ。2003年にJAF公式戦ワンメイクレー...