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車のトレッドが変わると走りにどう影響する?ボディとタイヤで違う意味と役割
頻出自動車用語の1つであるトレッドは、車体全体から見るトレッドと、タイヤの観点から見るトレッドの2種類に分けられます。今回はそれぞれのトレッドの意味を解説します。
目次
タイヤにおけるトレッド
タイヤにおけるトレッドは、実際に地面に接する部分、より厳密にはタイヤの平行な部分にあたります。縦溝や横溝が入っている部分です。
タイヤを平置きしたとき、最も外側にはトレッドで、そこから内側へ向かってショルダー、サイドウォール、ビードの構造になっています。
このうち地面に接することがあるのはトレッドとショルダーの2つのみです。タイヤのトレッドは路面と車体に接地(摩擦)させる重要な部分になっています。
タイヤのトレッドの役割
車両を走らせる(タイヤと路面を摩擦させる)
トレッドの役割は車を走らせることに尽きます。より厳密に言えば、タイヤと路面の間に摩擦を発生させ、それを用いて必要に応じて発進、加速・減速、停止といったように車両を操るということです。
また、先にも述べたように様々な溝がトレッド表面にあります。これはトレッドパターンと呼ばれるもので、トレッドパターンごとに違いはありながらも、タイヤの放熱や排水の役割を担うだけでなく、駆動力や直進安定性にも影響します。
トレッドパターンは、リブ型、ラグ型、リブラグ型、ブロック型の4種類に分けられます。例えば今のシーズンに大活躍中のスタッドレスタイヤはブロック型に分類されるトレッドパターンです。
タイヤの交換時期を知らせる
トレッドはタイヤの交換時期を知らせる役割も果たしています。
各タイヤにはスリップサインと呼ばれるものがあり、タイヤが摩耗して限界まで近づくと露出してきます。新品の状態では縦溝と縦溝の間にあるスリップサインが、交換時期に達するとトレッド面と一体化したような状態になるのです。
タイヤ交換の時期は、スリップサインが露出した、あるいはタイヤの年数経過で判断するのが一般的です。
スリップサインが出てきたタイヤは、圧倒的にグリップしなくなる(特に濡れた路面)ので、お持ちの車両のタイヤがその状態になっていたらすぐに交換するようにしましょう。
タイヤのトレッド面(接地量)が変化するのはどんなとき?
タイヤのトレッドと地面の接地量が変化する要因として空気圧が考えられます。
メーカー指定の空気圧を基準とすると、それよりも空気圧がたくさん入っていれば接地量が少なくなり、反対に空気圧が少ないと接地量が多くなります。
タイヤの接地量は摩擦抵抗を生み出しますから、理屈ではトレッドが地面とより接していれば燃費が下がり、反対に接する量が少なければ燃費が上がる計算です。
タイヤのトレッドを上手に使う方法
使用されたタイヤのトレッド面には様々な情報が載っています。また、使用場面に合わせたちょっとした工夫で、車両の乗り味等が変化することも。いくつか例を紹介します。
まずは指定の空気圧に合わせる
1つはタイヤの空気圧をメーカー指定値に合わせることです。純正タイヤサイズ時の空気圧を示しているので、この数値に合わせてとけば間違いないでしょう
メーカー指定空気圧は車両のボディに貼られたシールに記載されていることが多いです。車種にもよりますが、運転席のドアを開けた時に見えるBピラーあたりに貼られています。
純正タイヤサイズと異なるものを装着した場合、タイヤメーカーが公開している推奨空気圧検索システムを利用して推奨空気圧を確かめるのがおすすめです。
定期的にタイヤの空気圧を確認する
2つ目は定期的にタイヤの空気圧を確認することです。
タイヤがパンクすると空気圧が抜けるのは周知の通りですが、パンクしていなくても自然と少しずつ抜けていきます。
目安は人によりけりですが、遅くてもひと月に1回の頻度で確認すると確実です。
携帯用のエアゲージは3,000円くらいで購入できるので、それを車載して1週間に1回のペースで計測するのがおすすめです。
自動車整備工場ではエアーコンプレッサーを使って空気を入れていますが、一般的なエンドユーザーなら米式バルブ対応の自転車の空気入れでも十分代用できます。
重たい荷物を積載する際には空気圧を高めにする
3つ目は重たい荷物を積載する際には空気圧を高めにすることです。
荷物の重さがタイヤのトレッドにかかってより地面と接することになれば、タイヤと路面の摩擦抵抗が増えるので燃費が悪くなったり、地面にベタっとくっついた感じがします。その対策として空気圧を日頃よりも高くするというわけです。
しかし、具体的にどれだけ空気圧を高くするべきかというものはありませんので、自身の感覚に委ねられます。まずは指定空気圧で荷物を乗せる前後の乗り味を比較して、違いが気になったらのであれば、調整してみましょう。
例えば筆者の場合、メーカー指定空気圧が2.3kgf/㎠だった場合、2.6kgf〜3.0kgfくらいで試します。
車体におけるトレッド(トレッド幅)
車体におけるトレッドは、車両にホイールを装着した状態で、左右のタイヤの中心間にどれくらいの距離があるのかを示す数値です。世間一般ではトレッド幅と呼ばれています。
車体の寸法を示すものとして全長・全高・全幅があります。全幅とトレッド幅は近い数値になりますが、あくまでも数値が近いだけで、道路運送車両法に則っていればトレッドが全幅を超えることはまずありません。
トレッドとホイールベースの関係
市販車の状態を基準に考えた場合、トレッドとホイールベースの値はどちらも固定されています。それはカタログやメーカーホームページ等で閲覧できる四面図を見ても明らかです。
トレッドとホイールベースの数値の変更に相関関係はありません。トレッドもホイールベースも市販状態では変更することはできないからです。トレッドに関しては、ホイールスペーサーを装着したりホイールサイズ(リム幅やインセット)やタイヤサイズを変更することである程度調整できます。
しかし、前車軸と後車軸の軸間距離であるホイールベースを変更するとなると、車軸の位置を変更しなければならず、大幅な改造・改良が求められるので簡単にはできません。
ホイールベースは左右どちらから測っても同じ数値になりますが、サスペンションアームが曲がっている等の理由でずれるケースもあります。車両を強くぶつけた時にアームが曲がる可能性もあるので、心当たりがある際には一度確認してみると良いでしょう。
また、その車両の特性・素性を判断する材料として、ホイールベースの値をトレッドのそれで割ることで算出される比率をチェックすることもあります。
トレッド幅は走りにどう影響する?
トレッド幅変更による影響が見られるのは、主に荷重移動量と直進安定性の2つです。
トレッド幅が広くなるとカーブを曲がる時の荷重移動量が小さくなる(=コーナーリング時の限界が上がる)一方で、直進安定性が悪化します。逆に狭くすると荷重移動量が大きくなる一方で直進安定性が向上します。
前後タイヤのどちらのトレッドを広げる・狭めるのかでも走りが変わります。
純正以外のホイールを使わない限りトレッド幅を気にする機会はほとんどありませんが、タイヤのトレッド面の状態は制動力やコーナーリング時の限界性能に直結します。
自分で整備する人も、整備を整備業者へ依頼する人も、目視できるタイヤの点検・メンテナンスを定期的に行いましょう。
トレッド幅が変化するのはどういう時?
車体のトレッドが勝手に変化することはほとんどありません。トレッド変化が発生するのは次のように分類できます。
ホイールサイズの規格が変わった時
トレッドが変化する要因の1つはホイールサイズの変化で、その中でもホイールインセットの違いによるものが大きいです。
ホイールインセットとは、ホイールを車両へ取り付けた時の取り付け面とそのホイールの中心線の間の距離を示すものです。
ホイール中心線が取り付け面より内側にあればインセット、取り付け面と中心線が同一線上ならゼロセット、中心線が取り付け面よりも外側にあればアウトセットとなります。
例えば、インセット40のホイールを装着すると、ホイールの中心線は取り付け面から内側(車体側)40mmの位置にあることになり、これがインセット30であれば30mmということです。
インセット以外のサイズが同じ2種類のホイールと仮定して上記2つの例を計算すると、インセット40のホイールはインセット30のホイールよりも内側へ10mm × 2本 = 20mm入り込みます。
ホイールの位置が変わればそれに組まれているタイヤの位置も当然変わりますので、インセット30のホイールより狭くなる仕組みです。
ホイールスペーサーを使った時
2つ目の要因は ホイールスペーサーを装着した時です。
ホイールスペーサーを装着すると、ホイール取り付け面がホイールスペーサーの厚さ分だけ外側へ移動することになり、車体のトレッドは結果として装着前より広がります。
ホイールスペーサーはホイールインセットの関係でサスペンションとタイヤが干渉するのを防ぐことに使われます。ホイールスペーサーをより厚くしたものがワイドとレッドスペーサーで、ツライチカスタムに使用されています。
トレッド幅のいじり方
純正仕様のまま乗っているのであれば車体のトレッドが変化することはほぼありえません。
しかし、ホイールの規格、厳密にはリム幅やオフセットが異なるものを装着した際にはトレッド幅が変化するので、トレッド幅やホイールに関する計算方法とクリアランスの確認方法を押さえておきましょう。
サスペンションとタイヤのクリアランスを確認する
インセットを大きいほうへ持っていくとタイヤがサスペンションと接触するケースが多いので、それらの間にどれくらい余裕があるのかを確かめます。
クリアランスの確認方法はいろいろですが、インセットの数値を大きくしたホイールを実際に装着して余裕を確かめたり、装着希望のホイールを実際に車両へはめてみるのもよいでしょう。
車種ごとに装着可能なホイールサイズやタイヤなどをまとめているウェブサイトもあるので、そこでチェックするのもアリです。
装着されているホイールのインセットやタイヤサイズを確かめる
装着されているホイールサイズをまずは確かめます。リム内側あたりにインセットサイズやリム幅などがシールや刻印などで記されていることが多いです。
クリアランスを計算する
装着されているホイールの規格を念頭におきながらクリアランスを計算します。
例えばホイールを今よりも外側へ持ってきてツライチ寄りにしたい場合、フェンダーとホイールの間にどれくらいの余裕があるのかを確かめます。錘をつけた糸を垂らしてコンベックスで糸とホイール面の距離を測るのが定番です。
この距離が仮に15mmであれば、余裕を見ても10mmくらいはアウトセット側に振っても大丈夫でしょう。
ワイドトレッドスペーサーって何に使うの?
先ほど少しスペーサーについて触れましたが、ワイドトレッドスペーサーはいわゆるホイールスペーサーよりも分厚いスペーサーです。
厚さが3mm / 5mmあたりのものはホイールスペーサーと呼ばれ、それ以上に厚いものがワイドトレッドスペーサーと呼ばれる傾向で、10mmや20mm、さらには厚さ50mmのワイドトレッドスペーサーも存在します。
また、ホイールスペーサーとの違いとしてワイドトレッドスペーサーそのものにボルトが組みこまれている点が挙げられます。ハブボルトでワイドトレッドスペーサーを車体へ固定し、ワイドトレッドスペーサー側のボルトにホイールをはめてナットで固定するという使い方をするからです。
ワイドトレッドスペーサーはホイールの面をフェンダー面と揃えてツライチを実現するのに使用されることが多いです。ツライチはカスタム目的ですが、運動特性を弄る(扱いやすくする)などの目的でモータースポーツシーンで使われていることもあります。
ワイドトレッドスペーサーの弱点として、純正ハブボルトの長さが足りずロングハブボルトへの打ち替えが必要になるケースが多いこと、バネ下重量が重たくなること、そしてボルトへの負荷が強くなるので折れやすくなることなどが挙げられます。
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