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ハードトップ車、なぜ消えた?バブル期に爆発的人気を誇ったスタイリッシュなクルマたち
バブル期に爆発的人気を誇った「ハードトップ」とは?
最近耳にすることが少なくなった「ハードトップ」という言葉。バブル期に一世を風靡し、乗用車のなかで大きなシェアを占めたボディスタイルです。
かつてはカリーナED、セドリック/グロリア…など、このジャンルで各社がしのぎを削っていました。
しかしながら、時代が進むにつれてハードトップは減っていき、気づけば”絶滅種”となってしまったのです。
ここでいう「ハードトップ」は「Bピラーを廃したモデル」
「ハードトップ」には2つの意味がありますが、ここでいう「ハードトップ」は、ボディ形状の一つのジャンルで、”Bピラーを廃したモデル”を指します。オープンカーにハードトップを装着したときのように、ピラーや窓枠がなくスッキリと見えるボディタイプで、「ピラーレスハードトップ」とも呼ばれます。
ハードトップを採用するメリットは、Bピラーや窓枠がないため、クルマが”スタイリッシュ”に見えるということ。窓を下した際に「大きな開口部」が現れ、開放感あふれるルックスが得られます。
ハードトップスタイルの元祖は、1949年の「キャデラック クーペ ドゥビル」。1956年には4ドアの「セダン ドゥビル」も登場し、ハードトップは一躍”人気者”となりました。
アメリカで流行したのをきっかけに、日本でも2ドア、4ドアのピラーレスハードトップ車が数多く登場していったのです。
オープンカーの場合は意味が異なるので注意
そのほか、オープンカーの屋根を指す言葉で、「ソフトトップ(幌)」の対義語「ハードトップ」があります。
「ハードトップ」を直訳すると『硬い屋根』となりますが、主にオープンカーの屋根が金属やFRP(繊維強化プラスチック)などで作られているものを指し、自ら脱着を行うタイプや、電動格納式などがあります。
ソフトトップと比べて耐天候性や安全性が高くなっており、室内の快適性やクーペ風のスタイルを得ることができるのも特徴です。
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スタイリッシュな4ドアハードトップ車たち
トヨタ カリーナED
1985年に登場したカリーナED。トヨタでは初のピラーレス4ドアハードトップで、流麗なデザインは年配層だけではなく、若年層の間でも人気を博しました。
日産 セドリック/グロリア
1971年のフルモデルチェンジ(230型)で車型統合が行われたセドリック(3代目)とグロリア(4代目)。翌年には国産車で初めて「ピラーレス4ドアハードトップ」を追加し、人々の心を鷲掴みにしました。
日産 ローレル
1968年にセダンとしてスタートしたローレル。元祖”ハイオーナーカー”であり、1977年のC230型(3代目)から4ドアハードトップを設定していました。
日産 スカイライン
1985年に販売された、7代目スカイライン(R31型)。性能の高さを予感させるスタイルとともに、4ドアハードトップが設定されたことで、さらに人気が高まりました。
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ハードトップはなぜ消えた?
ハードトップは2ドアを中心に採用されたスタイルでしたが、時代が進むにつれ4ドアにも採用されはじめました。
前述の「トヨタ カリーナED」や「日産 セドリック/グロリア」などでみられるように、ピラーレス4ドアハードトップならではのスッキリとしたデザインや、窓を全て開けた際の開放感はかなり魅力的です。
しかし、1990年代に入ると”衝突安全性”が注目されるようになり、ハードトップは転換期を迎えます。
特にピラーレスハードトップは、Bピラーがないためにボディ剛性面で不利となり、側面衝突時の安全確保のためには大きなコストアップが必要という弱点を持っていました。
当然ながらメーカー側には”コスト増”を避けたい思惑があり、Bピラーを持つ「サッシュレスドア(ピラードハードトップ)」や「4ドアセダン」へと移行していき、ピラーレス4ドアハードトップは姿を消していったのです。
また、近年ではドア剛性の確保や遮音性能の向上、ドア開口部の拡大など、さまざまな目的からサッシュレスドアの国産車も減少しており、クーペを除けば、最近の国産車でサッシュレスドアを採用するケースはほとんど見当たりません。
ただし、欧州車に目を向けると「メルセデス・ベンツ CLA/CLS」や「アウディ A5/A7 スポーツバック」、「BMW 2シリーズ/4シリーズ グランクーペ」など、現在でもサッシュレスドアを持つ車種を継続的に販売しています。
欧州車メーカーでは、以前よりサッシュレスドアの「カブリオレ」が用意され、この実績を活かしてサッシュレスドアを使うことがあります。
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日本で“セダン”の需要がないのも大きな要因か
衝突安全性能の低下、遮音性能の低下、コストの増加など、ハードトップが消えた理由はさまざまですが、日本ではセダンの需要が極端に減っており、4ドアハードトップ車を販売しても「採算が取れない」というのも、消滅の大きな要因といえるでしょう。
例えば、国産車では乗降性を重視し「Bピラーレス」となっている軽ハイトワゴンがあったりします。つまり、”需要”があればメーカーはBピラーレスのモデルを製造するわけです。
また、前述のとおり欧州車では”4ドアクーペ”と呼ばれるサッシュレスドアを備えたモデルも販売されており、一定の人気があります。
技術が進歩した現在であれば、快適性や安全性などをしっかりと確保した4ドアハードトップ車を作ることはできるはず。しかし、そもそも国内で需要がなければ、作られることもないというのが現実なのでしょう。
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- 執筆者プロフィール
- 成田 佑真
- 1993年生まれ。普段は医療機器販売を行っているが、暇があれば自動車関連記事を読み漁る。現在の愛車はA4。子どもの頃からマークⅡに憧れ、社会人になりマークXを購入。週末は必ず手洗い洗車を行い、ドライブに出...