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かつて若者だったおじさんが行き着く“地味だけど悪くない車”といえばコレ?マンガの中でも活躍|トヨタ 4・5代目クレスタ【推し車】
スポーツ仕様もAT専用、高級路線の5代目(1996年)
バブル崩壊(1991年)が始まった頃、まだ景気の先行きが悲観的ではない時期にデビューしたとはいえ、RVブームで急成長したSUVやミニバン、ステーションワゴンなどの新ジャンルに押されて人気車種から転落したのは、マークII3兄弟も同じ。
ただ、2020年代の今よりよほど保守色が強く、RVブームに乗るよりセダンの復権に力を注いでしまったトヨタは1996年に「セダン・イノベーション」として新型セダンを続々と投入し、一時は取り返しがつかぬほどの泥沼にハマるのでした。
そんな1996年に登場したのが5代目クレスタで、トヨタはそれまでほぼ同じクルマを複数チャンネルで販売していたのを転換、それぞれのイメージを活かしたモデルチェンジにより、相変わらず中身はほぼ同じでも、別々のコンセプトで押し出します。
すなわち保守的でラグジュアリー/スポーツ両刀使いのマークII、若者向けスポーツセダン路線に特化し、ツーリングカーレース(JTCC)にも参戦するチェイサー、高級ラグジュアリー路線に特化したクレスタという具合に、別々のクルマになりました。
それぞれ、フロントオーバーハングが短く4灯ヘッドライトで迫力あるフロントマスクのチェイサー、スポーツ系グレードへ新たに「ルラーン」の名を与え、最上級のルラーンGにすらMTを与えなかったクレスタという特徴はありますが、基本中身は同じ。
それでマークIIやチェイサーはソコソコ狙い通りの人気は得たものの、予想外にワリを食ったのはクレスタです。
そもそもトヨタビスタ店はトヨタ系ディーラーでも最後発(1980年設立)、マークIIを扱うトヨペット店ほど高級イメージはなく、トヨタ系でも実験的ディーラーという位置づけだったので保守的なユーザーもいません。
しかも新たな最上級グレード「エクシード」が設定されて、従来の「スーパールーセント」は中堅というかお買い得な廉価グレードに追いやられましたから、従来「クレスタ スーパールーセントが憧れ」という世代にとっても、面白くないわけです。
それで「マークIIのちょっと高級版を求めるユーザーを獲得せよ」と言われても無茶ぶりが過ぎたようで、途中からはスーパールーセントの特別仕様車を中心にしたCM展開が多かったように思えます。
クルマ自体は、品質もデザインの高級感も満足すべきレベルに達していたので、マークIIとクレスタが逆だったなら…と思ってしまいますが、当時のトヨタはRVブームに動揺し、迷走していた感があったので致し方なし。
結局クレスタはこの5代目で少々寂しい最後を迎え、後継の「ヴェロッサ」がまた当時のトヨタらしい大迷走ぶりを見せますが、それはまた別のお話ということで…。
※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。
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- 執筆者プロフィール
- 兵藤 忠彦
- 1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...