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上司「ボンゴ持ってこい!」部下「???」1BOXカーの世界を変えた初代マツダ ボンゴ【推し車】

世代によっては、1BOX車はなんでも「ボンゴ」

マツダミュージアムに展示されている、1968年のマイナーチェンジで1,000cc化された初代ボンゴバン

その昔、筆者(フリーライター・兵藤 忠彦)が勤めていた会社の上司が「ボンゴ!ボンゴ持ってこい!」と言うのに会社の1BOXバンといえばトヨタのタウンエースで、「なんでこれがボンゴ?」と思ったものです。

ある時代より前の世代が使う自動車用語は現在は死語となっているものも多く、AT全般を「ノンクラ」(MTと違ってクラッチがないから)などと言いますが、「ボンゴ」も厳密には「ボンゴ型自動車」など、1BOX車全般を指す言葉だったのです。

日産ファンの方には申し訳と思いつつ、現在の視点なら1BOX車の代名詞はハイエースですし、キャブオーバー型1BOX車はボンゴ以前からスバル サンバーなどありましたが、それでもボンゴが代名詞となったからには、相当売れてインパクトもあったのでしょう。

RR低床小型1BOXの革命児、初代ボンゴ

まだ両側スライドドアという時代ではないが、車内は800~1,000cc級とは思えないほど広そう

初代ボンゴが発売されたのは1966年5月、初代ファミリア(1963年)用の782cc直4OHVエンジンをリアに縦置きして後輪を駆動するRRレイアウトで、床下というよりキャビン後部をかさ上げした下にエンジンを載せていましたから、テールゲートからの床面も高いです。

しかし、まだ簡単に4WDなど作る時代ではなく、当然フロントへのプロペラシャフトなど設ける必要もありませんでしたから、前席とエンジン間のキャビンはものすごい低床で、大人の膝くらいしかない床面地上高はわずか450mm(バン)でした。

日産のダットサン キャブライトバン(1964年)に続き採用したスライドドアも斬新で、横から荷物を載せるのにドアを大きく開ける必要はなく、大きく開いたスライドドア開口部から低い床へ荷物を積み上げていけば大量の荷物が容易に積めます。

さらに3列シート8人乗りの乗用登録ワゴン、「ボンゴコーチ」でも乗降性はいいですし、エンジン上に3列目の座面がくるので居住性への影響も最小限にとどまって、現在でいうミニバンの走りのようでした。

同時期、トヨタからも初代ハイエースワゴン(1967年)、パブリカ用の800ccエンジンを積む小型1BOX車のミニエースコーチ(1968年)とキャブオーバー1BOX車が発売されますがいずれもFR車で、床面の低さでは初代ボンゴに及びません。

また、軽フルキャブオーバー1BOX車としては、初代ボンゴと同じRRのくろがね ベビー(1960年)や初代スバル サンバー(1961年)が発売されており、低床キャビンのメリットは同じでしたが、軽自動車ゆえに3列シート車は作れませんでした。

つまり当時としては「意外になかったクルマ」ということで、まだ数は少なかったものの、仕事からレジャーまで多彩に使える万能車として、現在のハイエースに近い人気を誇ったのも、当然だったのでしょう。

当時、これに近いクルマとしてはフォルクスワーゲンのタイプ2、いわゆる「ワーゲンバス」があり、初代ボンゴは和製ワーゲンバスともいえました。

マツダの経営危機で、名車としては惜しくも初代止まり

リアエンジン車らしくキャビン後部の床面は高そうだが、和製ワーゲンバスと思えばカッコイイ

それだけ話題になって、「ボンゴ型」が1BOX車の代名詞になり、古い年代のユーザーが1BOX車はなんでも「ボンゴ」と言うほどだったのに、なぜその後の世代へは継承されなかったのでしょうか?

それは当時のマツダがロータリーエンジンへ傾倒しすぎており、レシプロエンジンを積む大衆車や実用車の改良発展が後手に回り気味だったうえに、第1次オイルショック後のガソリン価格高騰で、燃費の悪いロータリーが実用車用エンジンとしての命脈を絶たれたから。

そのため、急激に経営が悪化したマツダには全ての車種やエンジンで排ガス規制や低燃費化への対策を十分に行うことができず、一部は対策を断念して車種整理の対象になりましたが、その1台がボンゴでした。

1975年にいったん生産終了したボンゴは、空白期間を経て1977年に2代目へモデルチェンジして復活しますが、床面地上高が上がっても荷室や荷台をフラットにできるオーソドックスなFR車になっており、貨物車としての実用性は上がります。

ただしそれはハイエースなど後発のライバル車に後追いでの追従を意味しており、ライバルと同じように便利だけど個性のない「どこにでもある普通の1BOX車」です。

それでも過去の栄光から、古い世代にとって1BOX車は全て「ボンゴ」でしたし、1980年に入って登場したRV仕様も三菱 デリカスターワゴンなどと同様にウケて少しは人気が出たものの、商用車需要の激減でついに自社生産を断念。

2020年にモデルチェンジした現行「ボンゴ」(5代目)は、ダイハツ グランマックスのOEMとなって、昔からのマツダファン、ボンゴファンを嘆かせました。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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