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ホンダクラリティPHEV「徒然充電ロングドライブ試乗記」
目次
PHEVで充電しながらロングドライブ!EVモードだけで走れる?
「充電スタンドの使い方」の記事の撮影で使用したホンダ クラリティPHEVでロングドライブを敢行。主に高速道路の充電スポットの状況の確認と、EV走行を主体として充電しながら長距離を走るとどうなるのかの検証を行ってみました。
ホンダ クラリティPHEVのEV走行時の航続距離は、JC08モード燃費で、114.6km、WLTCモード燃費で、101.0kmとなっています。
長距離の高速道路を充電しながらは厳しい
結論から申せば、EV走行の航続距離が50~70kmのPHEVで、充電がなくなる度に充電スタンドで充電するのは正直、厳しいものがありました。すべてのサービスエリアに各駅停車状態で入り、30分の充電では旅程がなかなか先に進みませんでした。
そもそも、PHEVはEV走行で長距離を走ることを想定としていないので、当然の結果ではありますが。
実際の航続距離と燃費
EVの特性として、道路状況や天候により航続距離が変化しやすい、というものがあります。登り坂や向かい風は航続距離を縮めやすい要因となりますし、雨や低温などの気候条件はエアコンの電力消費増加となり、これも航続距離を縮めやすくする要因となります。
今回のホンダ クラリティPHEVでのEV走行航続距離は、
市街地:55~65km
高速道路:65~75km
※天候:曇、外気温:5~10℃
となりました。カタログ数値から剥離があるのは、急速充電スタンドでは100%充電にならず概ね80%ほどの充電量となるため。充電時安全性が考慮されており、バッテリーの全容量の80%で充電を止める仕様だからです。
クラリティPHEVに設定される走行モードは、「ECON」「HV」「SPORTS」の3つ。ECONモードでは基本的にEV走行となります。充電がなくなると自然にHV(ハイブリッドモード)に。ECONモードでもアクセルを強く踏んだり、登り坂になるとエンジンが始動します。
HVモードでの実燃費は、
市街地:25~27km/L
高速道路:29~31km/L
となり、信号の少ない郊外を走行するときには、カタログ数値よりも良い燃費を叩きだします。実燃費はすこぶる優秀です。車重1,850kg、全長5m近い大柄なボディを考慮すると、さらに優秀な数値といえます。
EV走行とハイブリッド走行、どっちが安い?
ホンダの充電サービス「Honda Charging Service」では、急速充電スタンドの利用料金は、1分16円(税別)。急速充電スタンドは30分充電ですので、1回の充電で税込み518.4円となります。レギュラーガソリン価格を140円/Lとした場合、約3.7Lのガソリンが買える計算、これに実燃費28km/Lを掛けると、103.6kmとなり、急速充電30分で走れる距離、約65kmと比較すると、EV走行の方が高くなってしまいます。
急速充電スタンドはバッテリー全容量の約80%の充電量となるため、バッテリー容量の小さいPHEVでは不利になってしまった結果です。バッテリー容量の大きい完全EV車なら、この点は有利になります。
走りは爽快!運転していて楽しいPHEV
ホンダ クラリティPHEVは、大柄なセダンですが、重たいバッテリーの配置を最適化するなどして低重心化が図られ、カーブを曲がるときの安定感と、スポーツカーっぽい走りで実に爽快、運転していて楽しいクルマでした。
高速道路で強めにアクセルを踏めば、エンジン音が高鳴るとモーターの力強いパワーが加わり、グーンと加速してくれます。体感的には、自然吸気2.0Lエンジンのスポーツカーよりも速い印象。「あ、ホンダだな」と思わせてくれる走りを実感できます。
乗り心地は、高級セダンというより、マイルドなスポーツセダンの印象。後部座席に座る人への快適性を重視した乗り心地ではなく、ドライバーが走りを楽しめる乗り心地、しかし同乗者が不快にならない良いバランスが取れていると感じました。
【結論】PHEVが快適なカーライフとは?
徒然な充電スタンド立ち寄りまくりロングドライブを通じて実感した、快適なPHEV車カーライフのポイントは、
・車通勤で往復を電気料金の安い深夜に充電してEVモードで走る
・ロングドライブでは無理して充電せず、急速充電スタンドのあるところで食事をしながら充電
の2つといえます。
今回のベストショット
愛知県半田市にある、ミツカンミュージアムで撮影。古い歴史のある建物を背景に、先進的なクラリティPHEVが対照的。
ここは、今回のロングドライブの最終地点に。それでは、この撮影に辿り着くまでの「徒然充電ロングドライブ記」を最初の充電スタンドから順にご覧ください。
【1番目】千葉県印西市「ファミリーマート千葉ニュータウン原山店」
MOBY編集部のすぐ近くの新宿駅をスタート地点に、走行距離がおおよそ50Km程度の急速充電スタンドで且つ、撮影に適した場所をGoogleマップを駆使して調べ、撮影許可をいただいたのが千葉県印西市の「ファミリーマート千葉ニュータウン原山店」。
走行距離:50km
Googleマップの経路は高速道路を通るルートを示しているが、実際は国道6号線から”梨街道”国道464号線を走行。
ここでの撮影は、下記の記事の取材。
撮影終了と同時に充電完了。しかし、充電量を示すメーターが半分程度にしかなっていない。急速充電スタンドの個体差なのか、それとも車のコンピューターと充電スタンドのデータのやりとりのエラーなのか、どちらかによるものと推測。インターネットで調べると、たまにこのようなことがあるようだ。
次の急速充電スタンドまで、およそ30kmは走れると試算、InterNaviで調べた結果「ホンダカーズ 東総成田空港通り店」を目指すことにした。
【2番目】ホンダカーズ 東総成田空港通り店
店員さんに伺ったところ、ホンダではないEV、PHEV車の充電も歓迎、『充電でお待ちの間は、どうぞ店内でお茶でも飲んでいってください』とのこと。
ホンダカーズ東総成田空港通り店のスタッフの方々、お世話になりました。
ここでは問題なく充電完了。次は高速道路ロングドライブへ。
区間走行距離:20km
累計走行距離:70km
【3番目】海老名サービスエリア
EV走行で70kmほど走行したところでバッテリーがなくなり、ハイブリッド走行へ。高速道路で時速80kmでクルーズコントロールを設定し、ほぼ定速走行したときの燃費は、35km/h。
区間走行距離:128km
累計走行距離:198km
【4番目】足利サービスエリア
海老名サービスエリアから足柄サービスエリアまでは、EV走行のみで走破。
区間走行距離:61km
累計走行距離:259km
【5番目】 浜名湖サービスエリア
新東名高速道路ではなく、東名高速を選択。交通量が割とあり、80〜100km/hの速度域で加減速を頻繁に行う必要があった。EV走行70kmほどで充電が切れてハイブリッド走行へ。
区間走行距離:182km
累計走行距離:441km
【6番目】名古屋駅地下街エスカ駐車場
名古屋駅の地下街「エスカ」には、味噌カツ、きしめん、エビフライ、ひつまぶしといった名古屋めしのお店が並ぶ。私は味噌カツで腹ごしらえ。
区間走行距離:99km
累計走行距離:540km
【7番目】アピタ東海荒尾店
ホンダの聖地・鈴鹿へ向かい、ゆかりのある場所で撮影と考えていたが、あいにくの雪で路面凍結、進路を南に変えて知多半島へ。途中でこれまで撮影できなかった急速充電スタンドではない、通常充電スタンドを探して見つけた「アピタ東海荒尾店」に一般道で向かう。
区間走行距離:21km
累計走行距離:561km
Googleマップは名古屋高速を通るルートを示しているが、実際は一般道を走行。国道19号線から国道247号線を通るルートを走行。東海市を通る国道247号線は、通称「産業道路」と呼ばれる自動車専用道路。
ここはこれまでと違って急速充電スタンドではなく、通常充電のスタンド。約40分充電しても10%程度しか増加しない。下記の記事での取材させていただく。
区間走行距離:21km
累計走行距離:561km
知多半島ドライブ
帰りの時間を考えると、充電しながら走るのは厳しい上、都市部を離れると充電スタンドの数が減ることから、ハイブリッド走行に切り替えて知多半島をドライブ。
愛知県知多郡美浜町「奥田北潮干狩場」
激しい強風が海側から吹きつけ、砂が顔にあたり痛い。1ショット撮影し早々に退散。冬季には海の向こうの鈴鹿山脈から吹き下ろす季節風「鈴鹿おろし」で海岸線は強風にさらされる。
区間走行距離:33km
累計走行距離:594km
この区間も一般道を走行
愛知県武豊町冨貴の海岸
知多半島の中程は東西の海岸線が10km程度しか距離がない地形。半島のちょうど東の反対側に位置する場所で撮影。このエリアは全国各地にある浦島太郎のおとぎ話の聖地にもなっている。風は穏やかで広い空間があったため内装を撮影。
区間走行距離:10km
累計走行距離:604km
ミツカンミュージアム
どこのスーパーやコンビニでも必ずおいてあるミツカンの酢、味ぽん、納豆などの食品メーカー「ミツカン」の本社のある愛知県半田市。博物館「ミツカンミュージアム」は、古くから続く運河沿いにあり、エモーショナルな撮影スポットとしても有名。この記事冒頭の「今回のベストショット」に選出。
良い画が撮れたところで、クラリティPHEVのロングドライブは終了、東京へ戻ることに。
区間走行距離:8km
累計走行距離:612km
ミツカンミュージアムから東京新宿まで:336km
総走行距離:948km
試乗車「ホンダ クラリティPHEV」のスペック、価格
ホンダ クラリティ PHEV
グレード:EX
ボディカラー:コバルトブルー・パール
全長:4,915mm
全幅:1,875mm
全高:1,480mm
乗車定員:5名
車両重量:1,850kg
エンジン:1.5L DOHC i-VTEC+i-MMD Plug-in
最高出力
・エンジン:77kW[105PS]/5,500rpm
・モーター:135kW[184PS]/5,000-6,000rpm
最大トルク
・エンジン:134N・m[13.7kgf・m]/5,000rpm
・モーター:315N・m[32.1kgf・m]/0-2,000rpm
燃料:リチウムイオン電池・レギュラーガソリン
駆動方式:FF
トランスミッション:CVT
JC08モード燃費:28.0km/L
新車車両価格:5,880,600円(税込)
体感した、クルマの電動化の問題点
自動車の電動化の波を打ち消すように阻むのが、充電インフラの整備。今回のロングドライブで立ち寄った充電スタンドでは、先に充電している車がなく、待ち時間なしで充電できましたが、これが先に誰かが充電していたとしたら車1台あたり最大30分の待ち時間が発生します。
私が充電スタンドで充電を開始したとき、後ろに日産 リーフが並びました。このリーフのドライバーは30分待たねばなりません。私は、リーフに向かって深めの会釈をすると、ドライバーは笑顔で会釈を返してくれました。きっとこのドライバーは、充電スタンドで長時間待たされるのことに慣れているのでしょう。
高速道路のサービスエリアに設置される急速充電スタンドは、概ね1基。EV車増加に伴う充電待ちによる時間の損失増大は、このままでは避けられません。どこかで提唱されていた、電動車のバッテリーユニットを交換式にして、充電スタンドでは充電をするのではなく、充電されたバッテリーユニットと空のバッテリーユニットを交換、他の車と使い回す「バッテリーユニットシェアリング」のようなシステムの実現も必要かと感じました。
車両協力:ホンダ
撮影・文:宇野 智(MOBY)
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...