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「リッター100円時代では宝の持ち腐れ?」初代ハイブリッドカー・プリウスvsインサイトの燃費競争【推し車】

レギュラーリッター180円台は、さすがに燃費で悲喜こもごも

2023年8月10日、愛知県内のあるガソリンスタンドでの価格…「まだ安かった」と思う人も多いのでは? © hanafujikan/stock.adobe.com

最近、高校を出て就職したばかりの知人息子が、マークX(2代目2.5リッターV6)を買ったのですが…「リッター7.6kmしか走らないんです~!」と泣いております。

任意保険やら税金だのも大変でしょうが、まあそういうグチも若くて失うものがない今のうち、いずれカノジョでもできて結婚とかそういう話が視野になってくれば、いつの間にかハイブリッドのコンパクトミニバンか、N-BOXにでも買い替えるのではないでしょうか。

そんな話になるのも、2023年8月末現在でレギュラーガソリンの全国平均価格がついにリッター180円台を突破、政府も補助金の延長など対策をこうじるも、果たしてどれだけ効果があるのやら、という状況だからですが…

今から25年ほど前はおおむねガソリン代なんて半分で、燃費なんて大して気にしなかったものですが、そんな時代だからこそ?登場した2台のハイブリッドカーが、現在もっとも必要とされるエコカーとして、社会を支えているようにも思えます。

今回は1990年代を代表する2台のハイブリッドカー、トヨタ プリウスとホンダ インサイトの初代モデルを振りかえりましょう。

魅力は低燃費かモーターアシストか?初代プリウス(1997年)

初代プリウスは「確かにやってくる未来」を予見した素晴らしいハイブリッドカーだったが、発売から数年はノアの方舟のごとく、その存在意義を疑問視されていた

少数生産の実験的なモデルや、マイクロバスなど業務用途はともかくとして、誰もが普通に変える一般向け量販車としては世界初のハイブリッドカーとなった、初代トヨタ プリウス。

もちろん登場時は自動車関連のみならず、一般メディアまで巻き込んでの大騒ぎとなりましたが、それと同時に聞こえてきたのが「で、これなんの役に立つの?」という、2023年現在で同じことを聞いたら、質問された側が白目むいて泡拭いて倒れるレベルの質問です。

1997年当時、よほどの低燃費で知られたディーゼルのコンパクトカーや、軽自動車のように極端な小排気量車を除けば、乗用車の実燃費なんて10km/Lも走れば上等な部類。

ですから、10・15モードのカタログ燃費とはいえ28km/Lも走り、特にエコランしなくとも実燃費で20km/Lに迫るんだろうなと思わせるプリウスは、画期的なはずでした。

しかし、その頃のレギュラーガソリン価格は東京都でリッター100円程度、筆者が住んでいる宮城県仙台市など、港に製油所がある関係でもっと安くて90円を切り、最終的には80円くらいでレギュラーガソリンを買えた時代です。

そんな時代ですから、実燃費で仮にリッター10km程度燃費が良くても、同クラスの1.5リッター4ドアセダン(トヨタ ターセルセダン ジョイナス FF/5MT)が110.5万円のところ、215万円のプリウスは100万円以上高価で、モトを取るのに何年かかるんだ?と。

トヨタとしても、「21世紀にゴー!(215万円)」に引っ掛けた戦略価格で、売るほど赤字と言われるほど頑張ったものの、購入したのは意識高い系富裕層のセカンドカーとして、あるいは環境対策アピールをしたい官公庁、新しもの好きのタクシー会社くらいでした。

むしろモーターアシストによる大トルクが面白いと、高速道路で亀さんマーク(走行用バッテリー切れ)が出るまでぶっ飛ばすのが問題になったり、初期不良で故障が相次いだりと、初代プリウス、特に前期型はかなり「いらない子扱い」されていたものです。

何しろガソリンが安いんですから、燃費がいいだけのクルマになぞ価値は感じられず、むしろゆとりあるキャビンから、「ハイブリッドは客寄せで、新世代セダンのパッケージを提案する実験的車種だろう」なんて声までありました。

打倒プリウスの燃費より走りの良さが注目された、初代インサイト(1999年)

2シーターで積載能力もほとんどない初代インサイトに至っては、「スポーツカーとしては優れているが」という調子で、ハイブリッドカー以前に自動車としての存在意義を問われる始末であった…今となっては笑い話

2年遅れてホンダが初代インサイトを発売した時には、もっとガソリン価格が下がっていたので(東京都でレギュラーリッター97円)、打倒プリウスで7km/Lも低い10・15モード35km/Lなんて低燃費も、大した話題になりません。

むしろ、燃費を良くするための軽量化でアルミモノコックに外板も樹脂とアルミ、空気抵抗低減おため後輪にはカバーを装着、巨大なニッケル水素の走行用バッテリーを収めるため、後席どころか荷室の床すら底上げされて実用性はほぼ皆無の2シーター燃費スペシャル。

しかし、トヨタのTHSと異なり、駆動系に薄型モーターを挟んでモーターアシストするだけのホンダIMAには5速MTを設定可能でしたし、70馬力の1リッター3気筒VTECエンジンは吹け上がりもよく、試乗レビューでは「まるでスポーツカー!」と大歓喜!

いわばモーターアシストつき1リッターエンジンで名車CR-Xが再来した!という勢いで、インサイトじゃなくCR-Xと名付けていれば、相当な人気になったかもしれません。

もっとも、後に本格的な1.5リッタースポーツハイブリッドとしてデビューした「CR-Z」が、よほどうまく回生ブレーキを使わないとすぐに電池切れ、全日本ジムカーナ選手権でも思ったような活躍ができなかったのを見ると、スポーツカーとしても過剰な期待は禁物。

そうなると、2シーターの低燃費パーソナルコミューターとしてはせいぜい通勤に使う程度の実用性がないインサイトは、プリウス以上に「何のためにあるのこのクルマ?」という評価でしたが…。

そのうちプリウスも10・15モード燃費31.0km/Lまで燃費を向上させたあと2代目(2003年)で35.5km/Lの燃費スペシャルを発売、インサイトも同36.0km/Lまで引き上げ、CVT車(32.0km/L)はともかく5速MT車では最後までプリウスで負けませんでした。

しかしその頃でもレギュラーガソリンはリッター110円台程度でしたし、外野からは「不毛な争い」にしか見えなかったのは確かですね。

もっとも、そこから数年でガソリン価格は急騰、2008年8月には東京都でレギュラーがリッター182円に達するので、その頃からようやく、「もはやハイブリッドか、せめてマイルドハイブリッド、でなきゃ燃費のいい軽自動車じゃなきゃダメだ!」となるわけですが。

1990年代後半、まだハイブリッドカーの燃費競争を鼻で笑っていた時代が、今となっては懐かしいですね。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

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執筆者プロフィール
兵藤 忠彦
兵藤 忠彦
1974年栃木県出身、走り屋上がりで全日本ジムカーナにもスポット参戦(5位入賞が最高)。自動車人では珍しいダイハツ派で、リーザTR-ZZやストーリアX4を経て現愛車は1989年式リーザ ケンドーンS。2015年よりライタ...

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