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BMW新型3シリーズ M340i 試乗|374馬力を持て余すことはなかった?!
2019年11月から国内でも追加発売されたBMW 3シリーズの最高峰となる「M340i」に試乗。0-100km/h加速4.4秒、最高出力374psのスポーツカー同等のスペックを誇るが果たして実用はいかに??
BMW 3シリーズの基礎知識
恒例により、ご存知の方はお読み飛ばしください。
今回のロングドライブ試乗は、BMW 3シリーズ M340i xDrive。読み方は、エム・サンヨンマル・アイ・エックスドライブです。BMWの車名の3桁の数字はシリーズと実質的な排気量を示します。340は、3シリーズの実質的排気量4,000ccのエンジンを搭載したモデルの意味となります。今の時代のクルマのエンジンは高効率化が進み、ダウンサイジング・ターボ・エンジンなどに代表されるように、サイズダウンして排気量が小さくなっても、大きなパワーが得られるようになりました。現在のBMWのラインナップでは排気量とエンジン出力に違いがなければ、そのままの排気量を車名に付け、排気量の割に高出力なエンジンを搭載したモデルには実質的な排気量に置き換えた車名にしています。
現行モデルのBMW 3シリーズは、320系と330系、そして今回の試乗車のM340に大別させられます。このうち、320系と330系は直列4気筒の2.0Lエンジンを搭載しており、320系については排気量そのままの車名となっています。ガソリンエンジンの320iのエンジンは330iと同じですが、330iの方が最高出力が高められています。M340iは、直列6気筒3.0Lエンジンを搭載しています。
3シリーズのうち、340だけに「M」がついていますが、この“M”とはBMW社の子会社で研究開発を行い、BMWの車のパフォーマンスを高めたモデルに仕立てあげる会社の名前です。M社によって手を加えられた特別なモデルは、「M」の称号を与えられた、などと俗に言われています。
今回の試乗車は要するにヤバいヤツ
M340iは新型BMW 3シリーズで最も上のグレードとなります。3シリーズのエントリーモデル(一番下のグレードのこと)は「320i 」でその車両本体価格は税別533万円(*)。M340iは税別980万円。その差額447万円でざっくりWスコア。
(*)カタログ上では「320i SE」車両価格461万円がありますが受注生産の為、除外しています。
エンジンに着目すると「320i」は直列4気筒2.0Lガソリンで最高出力184ps、M340iは直列6気筒3.0Lガソリンで最高出力387ps。倍以上の最高出力です。同じボディで価格もパワーもダブルスコアのヤバいやつです。
BMWの直列6気筒は「シルキーシックス」と呼ばれていた。今は?
1980年代、ことにバブル期のBMWの直列6気筒エンジンは「シルキーシックス」と呼ばれていました。ターボが付かない自然吸気エンジンで、文字通りシルクのように滑らかなフィーリングで高い人気を得ていました。今は、「ツイン・スクロール・ターボ」と呼ばれる過給器がつき、昔のようなフィーリングがなくなってしまったとして、シルキーシックスと呼ばないという人もいれば、いやいや、フィーリングは変われどもシルキーさは健在だ、という人もいます。
387馬力も必要?
BMWジャパンさんに広報車をお借りに伺うそのときまで、3シリーズのどのグレードがかわからなかった…今回はBMW広報担当者へ“おまかせ”で車種選定をしていただいたので…あえて事前にグレードを聞かずに、どのグレード、ボディカラーになるのかを楽しみにしていたのですよ。クルマに案内されたら、顔付きが違うモデルが鎮座しておりました。車両後方に周りバッジを確認すると「M」の称号がついておりました。広報担当者に「一番ヤバいやつを貸してくれるんですね」と言ったら「乗ってみると扱いやすいですよ」との返事が。一応、広報車に乗る前はそのモデルの予習をしていくので、最高出力が387馬力あるM340iの大まかなことはわかっており、この時点では正直、そんなパワーは要らないんじゃなかろうかと思っていました。
しかし、乗って数分後に「あー、こいつはいいや」とその考えを改めることになりました。BMWジャパン本社は東京駅直結のビルにあり、そこから車を借りて乗るので、すぐさま信号と渋滞の多い道路を走ります。387馬力は必要ありません。ですが、ですよ。時速40km程度までの加速でも、あらら、ほんと扱いやすい。余分なパワーは一切感じません。交通量が少なくなった道で交差点の間隔が短いところで少し深くアクセルを踏み込むと、エンジンは騒ぎ立てずに鋭く加速、しかし、Gで体がシートへグッと押し付けられるような乱暴さはありません。感じるのですが、実際のGより体感は少なめです。
「xDrive」が効いている
都心の道路ではちょっと速く走ると、すぐに法定速度に達し赤信号で強めのブレーキとなりがちですが、車体がとても安定していて、強めのGでも体が前へ持って行かれるような感じがありません。車体の剛性が高く、しっかりした骨格できちんとセッティングされたサスペンションなら、体が感じるGや衝撃は軽減されます。また、「xDrive(エックスドライブ)」と呼ばれる四輪駆動システムを搭載していることもジェントルマンな走りに大きく貢献しています。BMW M340iは、387馬力のパワーを持て余しているような所作は一切ありませんでした。
BMWはFRでなきゃ、というファンも多いですが今のハイパワーなエンジンでは四輪駆動を積極的に採用するのがBMWに限らずどこのメーカーも同じです。BMWは後輪駆動のテイストを十分に残した走りですから、BMWの四輪駆動にアレルギー反応を示す必要はないのでは。
M340iの良さを最も感じられたシーンは、首都高速の本線への合流と峠。首都高速の本線合流路は短く、場合によってはかなり強くアクセルを踏まないといけないことがあります。M340iは余裕です。それはパワーがあるだけでなく、きちんと躾けられた車体と足回りがあり、安心してアクセルを踏めるから。助手席や後部座席に人が乗っていて、少々深くアクセルを踏んで速い加速をしたとしても、それをそこまで感じず安全運転で高速道路へスムースに合流したと感じてくれます。
きついカーブと坂が続く峠の道は、M340iが最も得意とするところでしょう。スポーツモードに切り替えると、エンジン出力特性を文字通りスポーティーにし足回りを引き締めてくれます。きつい登り坂のアクセル全開は実に爽快。窓を開けてエンジン音を聴きながら峠を走りましょう。いい音しますよ。
どの道を走っていても、常に感じたのが、曲がれる安心感と止まれる安心感。ハンドリングとブレーキの効きとセッティングが良いと、そこに安心感が生まれます。これは、オーバースピードでコーナーへ突っ込んで良い、という意味ではありません。余裕ある走りは、普通のクルマだったらしんどそうな山道も楽しいドライブになり、かつ安全な運転にしてくれるものです。
387馬力を使いきるシーンが日本の道路ではなかなかない、そう思われる方も多いでしょう。しかし、BMWの本国ドイツでも皆が皆、387馬力を使い切る道路を走っているわけではありません。最高速度無制限のアウトバーン(今はその区間が縮小されていますが)はありますが、毎日そこを通る人はそう多くありません。ドイツでも日本でも、日常生活の走行で余裕ある走りは、交差点の多い都心部を走るときにでも運転する楽しみを味わうことができます。そうとは言っても、M340iなら、そのままサーキットに持ち込んでも十二分なはず。
ちょうどイイ、ボディサイズ
3シリーズのボディサイズは全長4,720mm、全幅1,825mmとプレミアムセダンにしては小さめなスペック。日本の道路で困るシーンは少ない方です。
320iには試乗したことがありませんが、乗り比べたら圧倒的にM340iが良い、となることでしょう。パワーを持て余して扱いにくいから、320iでいいや、ってことにはならないでしょう。
燃費は372馬力にしては良い数値
試乗時の実燃費は東京都心の渋滞と信号の多い走行で5~6km/L、信号の少ない郊外と山岳路で8~11km/L、高速道路で12km/L前後と、372馬力あって0-100km/h 4秒前半のスポーツカークラスのスペックにしては十分に良いkm/Lでした。WLTCモード燃費は11.7km/L、市街地モードで7.8km/L、郊外モードで12.2km/L 、高速道路モードで14.4km/Lですから、実燃費はカタログスペックの1~2割減といった一般的な乖離の範囲内です。
日本の道路事情を考えてくれたBMW
BMW 3シリーズには「高速道路渋滞時ハンズ・オフ・アシスト」が装備されています。これは、高速道路で渋滞に巻き込まれたとき、ハンドルから手を離しアクセルペダルから足も話しても前の車に付いて自動で走行してくれる、一定条件下運転支援システムです。実際に高速道路の渋滞に巻き込まれたときに使用してみましたが、きちんと運転してくれました。渋滞を抜けるまで30分程要したのですが、一度もハンドル操作、ブレーキ操作、アクセル操作をすることがありませんでした。実に楽です。運転支援に使うカメラをドライブレコーダーにも使えるといったあたりの実用的な先進技術が「2019-2020 インポート・カー・オブ・ザ・イヤー」と「RJCカーオブザイヤー・インポート 2020」をW受賞した背景にもなっています。
「高速道路渋滞時ハンズ・オフ・アシスト」はBMWが日本の道路事情を考慮して開発、搭載したとのことです。グローバルに展開するBMWは、その地域に合わせて適切なソリューションを展開する自動車メーカー。今や日本国内の輸入車販売台数第1位のブランドがBMW。このあたりのシステムからしてなるほどと思わせます。
自動ハンドル操作で駐車してくれるパーキングアシスト、50mを自動運転でバック…ビデオの巻き戻しように…してくれる交代アシストもきちんと使える機能で、これも日本の道路事情を十分に考えてくれているところです。
インテリア
BMW 3シリーズのシートはグレードにより、メリノ・レザー、アルカンターラなどの素材にブラック系、ホワイト系、レッド系、ブルー系などの多彩なカラー設定がされています。インテリアカラーは、ブラック系、シルバー系。試乗車は、革の中でも最上級のヴァーネスカ・レザーのシート。M340iは内装、外装の両方に専用のデザインを施しています。
すごく、イイ。
月並みな感想「すごく、イイ」でこの試乗レポートを締め括らせていただきました。
M340iは、ホントはM3が欲しいけど、奥さんやこどもと一緒に乗るには気が引ける、派手目なクルマは奥さんが嫌がる……といった方に最適な1台かと思います。ファミリーで乗るときはコンフォートモードで大人しくスムーズに走って、一人で走るときはスポーツモードに切り替えて走りを楽しみ時にはサーキットも、といったカーライフスタイルが想像できます。
筆者の個人的に「すごく、イイ。」と感じているのが、BMWのキャッチコピー。「駆け抜ける歓び」というブランドテーマを筆頭に、3シリーズ公式WEBサイトに書かれた「あなたの目の前に待ち受ける、すべてのカーブのために。」のコピーなど。広告的な大げさなコピーに受け取られるかもしれません。筆者はその誇大感が好きだったりします。実際乗ってみると、それが決して大げさなものではないと感じられるところ、 「すごく、イイ。」
さて、次のBMWの試乗車も広報担当さんにお任せすると致しましょう。次回のレポートもどうぞお楽しみに!
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- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...