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アルピーヌ A110 試乗レポ&大解剖|ピュア・フレンチ・スポーツカー
#アルピーヌ A110 をあまり知らない方へ
#ロングドライブレポート vol.41
目次
試乗インプレッション
今回の試乗車は、フランスの自動車メーカー「アルピーヌ」のスポーツカー「A110」。アルピーヌという名を知らない読者は少なくないかと思いますので、概略は後述するとしまして、まずは500km以上走り倒した感想の結論からお届けしましょう。箇条書きにまとめます。
- 軽い!
- 速い!
- 曲がる!
- 愉しい!
- 面白い!
- かっこいい!
- 欲しい!
月並みな形容詞を無数に並べただけですが、これが正直な感想です。ひとことで言えば「ヤバい」クルマです。このインプレッションの詳しいことは後述していきます。先に、アルピーヌとは?A110とは?についてお伝えしますので、既知の方はお読み飛ばしくださいませ。
「アルピーヌ」「A110」とは?
フランスの自動車メーカー「アルピーヌ」の創立は1956年、同国のレーシングドライバーでルノーのディーラーを経営していた「ジャン・レデレ」が設立。ルノーの車をベースにしたレース仕様車の販売を行い、1973年にルノーの子会社へ、1995年にアルピーヌのブランドは一旦途絶えます。その後イギリスの自動車メーカー「ケータハム」との業務提携、解消などを経て2017年に復活します。アルピーヌブランドの復活を推し進めたのは、かのカルロス・ゴーン。今ではちょっと微妙な気持ちですが、すばらしいブランド、クルマを復活させたことには感謝。
アルピーヌはモータースポーツでは強豪のひとつ。ル・マン24時間レース、世界選手権、モンテカルロ・ラリーなどのトップモーターレースで幾度も優勝を重ねます。この記事では詳細を割愛しますが、本記事末尾のアルピーヌ公式HP内に、その活躍と歴史が伝えられていますので、ご興味があればそちらをご覧ください。
アルピーヌ「A110」とは?
アルピーヌ・A110は1963年にデビュー、1977年までに生産されたスポーツカー。コンパクトなボディのリアにエンジンを搭載、後輪を駆動するRRレイアウトで車重が軽い高性能なモデルで数々のラリーで優勝を収めた名車です。
現行モデルは2017年にルノー傘下のアルピーヌブランドとして復活。コンパクトで軽量なボディは初代同様ですが、初代はRRで4人乗りだったのが現代版では2シーターのMR(ミッドシップ)のレイアウトに変更されたのが大きな相違点。ライトウェイトスポーツとデザインのコンセプトは変わりません。
現行A110のボディサイズは、全長4,205mmととてもコンパクト。全幅は1,800mm、全高1,250mm、ホイールベース2,420mm。エンジンは1.8L直列4気筒直噴ターボエンジンで、最高出力は252ps/6000rpm、最大トルク320N・m/2000rpm。車両重量は試乗車の「ピュア」で1,110kg、「リネージ」で1,130kg。この20kgの差はシートとオーディオシステムの装備の違いによるもの。トランスミッションは7速DCT。
最高速度は250km/h(リミッター作動)、0-100km/h加速は4.5秒というスペック。エンジンパワーだけ見るとそれほどでもない数値ですが、軽い車体とバランスの良いボディでライバルに負けない高い性能を引き出しています。現行A110の重心は車のど真ん中、運転席と助手席の間にあります。このエンジンとボディバランスが冒頭で述べました、速い、曲がる、愉しいなどといったインプレッションの理由となっています。ちなみに、ライバルは同じミッドシップレイアウトでA110の車両価格800万円前半と近い価格帯のポルシェ・718ケイマンとなるでしょう。
「軽い」は正義。意外と乗り心地はイイんです。
「ALPINE」とは、“アルプス”、“高い山”という意味があります。試乗コースは「高い山」で決まりです。自動車メディアの定番試乗コース、箱根ターンパイクからの芦ノ湖スカイライン。A110のおいしいところを堪能するには最適なワインディング・ロード。
乗り味もさることながら、個人的に文句なしにカッコいいデザインと思います。自宅前で荷物の積み込みで車を停めていたら掃除のおばちゃんに、「この車は何?かっこいいね?いくら?速いの?乗り心地は悪いの?」などと質問責めに遭いましたね。
意外と乗り心地はイイんです。
デザインとスペックからして、乗り心地が悪そうなイメージを持たれている方は多いことでしょう。しかし、乗り心地はイイんです。高級セダンと比較したらもちろん良くはないですが、この手のクルマとしては最上級に位置する乗り心地ではないでしょうかね。硬い足ではありますが、長時間乗っても疲れません。助手席にご婦人ないしはご令嬢をお乗せしても、ご立腹されるまでのガチガチではございません。(たぶん)
フランス人は車にコンフォート(快適さ)を求めながら、せっかち、アクセル踏み込んだらそこそこ走ってくれないとダメなお国柄らしいです。
ほんと良く曲がります。「軽い」は正義。
前述しましたが、重心がちょうどドライバーのお尻の辺りになります。前後の重量配分は前がちょっと軽め。自動車評論家がよく使う形容「ヒラヒラと曲がる」、「お尻から曲がる」というのはこのクルマのことでしょう。ハンドルを切ったらすっと曲がり、きついカーブはグイーっと横Gを感じながら、高い速度でも安心してコーナーを抜けられます。アクセルを強めに踏めば、軽快かつ鋭く加速、小気味よく走れる「自分中心」な乗り味、走り心地です。あまりクルマに詳しくない方でも、A110は運転しておもしろいな、と感じていただけることでしょう。エンジンパワーはマッスルではないので、危険な感じはしません。やはり軽いクルマは今も昔も正義なのです。
燃費は悪くない
A110を丁寧に運転してあげると街中で12km/Lを超えてくれます。ワインディングを楽しんで走ると7、8km/Lとこの手のクルマにしては経済的。やはり、軽いクルマは燃費にも好影響なのです。
エンジンルームへのアクセス方法
エンジンが車体の中心部にあって後輪を駆動する「MR」は、シートの真後ろにエンジンがあります。
試乗のときは必ずエンジンを撮影するのですが、アルピーヌ・A110はちょっと厄介です。今日のクルマは昔と違ってエンジンルームを開ける回数はほんと少なく、1回も自らの手で開けることなどないオーナーも少なくありません。昔のスポーツカーでは、道路状況に応じて点火プラグを交換する必要はあったものも。
仕事柄、いろいろなクルマに乗り、だいたいクルマの取扱いは説明書見なくてもわかりますが、アルピーヌ A110は拝読しました。せっかくなのでその手順を共有させていただきます。興味ない方はお読み飛ばしを。
① トランクリッドを開ける
② エンジンフード下のネジを外す
③ リアウィンドウを開けてエンジンカバーを外す。
④ エンジンカバーを外せばエンジンが見えます。
フロントとリアにあるラゲッジ
筆者の記憶が正しければ、ミッドシップのクルマで前後にラゲッジを備えたクルマは他になかったかと……(もし、あったらご指摘ください)
2人乗って2、3泊ぐらいのドライブ旅行なら行けるぐらいの容量を備えています。無論、荷物の量によりますが、思わずお土産をたくさん買い込んでしまうと詰めない事案が発生するでしょう。
インテリアはいい感じのストイックさ
インテリアはシンプルというか、余計なものが何もありません。ストイックですがスパルタンなものではなく、いい感じのフランスらしいゆるさを残してくれている印象です。
演出も楽しい
走行モードの切り替えに合わせて変化するメーターパネル、センターコンソールのインフォメーションディスプレイで表示される多数の車両情報切り替え機能は運転を楽しくさせる効果的な演出に。実際使える情報も多いのも嬉しいところ。
夜の演出も美しい
ピュア・フレンチ・スポーツカー
アルピーヌ A110の試乗レポートの総括にふさわしいキャッチフレーズとして「ピュア・フレンチ・スポーツカー」とさせていただきました。“ピュアなフランス車”と“ピュアなスポーツカー”の両方の意味としています。試乗車のグレード名の「ピュア」にも係りますが、上級グレードのリネージでも同じキャッチフレーズが使えるはずです。
ガチのスポーツカーではない乗り味とは長時間ドライブしてもドライバーを疲れさせず、運転する愉しみをずっと飽きずに味あわせさせる、フランス車らしいクルマでした。
試乗車、アルピーヌ A110 ピュア、ボディカラー「ブルーアルピーヌ」の新車車両価格は税込826万円(ボディカラーで車両価格が変動)、上級グレード「リネージ」で税込み844.4万〜856.6万円。お金に余裕があればセカンドカーに欲しい1台。
撮影・文:MOBY編集部 宇野 智
- 執筆者プロフィール
- 宇野 智
- モーター・エヴァンジェリスト/ライター/フォトグラファー/ビデオグラファー/エディター エヴァンジェリストとは「伝道者」のこと。クルマ好きでない人にもクルマ楽しさを伝えたい、がコンセプト。元MOBY編...