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なぜ公道のシートベルトは「三点式」?「多点式」のほうが安全そうなのに
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公道でレース用のシートベルトを使ってはいけないの?
運転に欠かせないシートベルト。運転姿勢の安定性を高めるだけでなく、事故などの衝撃から体を守る役割があるため、乗車時には必ず装着するように義務付けられています。
シートベルトの種類としては、3つの点で支える「三点式」と呼ばれるタイプのほか、「四点式」や「六点式」などのいわゆる「多点式」のタイプも存在します。
しかし公道で認められているのは、三点式のシートベルトのみ。一見すると安全に思える多点式の装着は認められていません。なぜでしょうか?
シートベルトの種類と特徴、それぞれの役割は?
大手国産自動車メーカーで整備士をしていた教習所指導員にシートベルトの種類と、公道での使用は三点式しか認められていない理由などを伺いました。
「車に採用されているシートベルトの主な種類は以下のとおりです。」
最もポピュラーな「三点式」
「座面の左右、両サイド(腰部分)2点と、ピラー(肩部分)1点のあわせて3点を固定するタイプのシートベルトで、最も多くの車に採用されているシートベルトが『三点式』です。
体型や姿勢に合わせて簡単に伸縮でき、脱着しやすい特徴があります。」
腰のみを固定する「二点式」
「座面の左右、両サイド(腰部分)2点のみを固定し、肩にはベルトがかからないタイプが『二点式』です。バスや飛行機の座席に取り付けられていることが多いタイプです。
全身を四点や六点で固定する「多点式」
「体をシートに固定することが目的で使われることが多く、両肩、両膝、腰回りをしっかりと締め付けるタイプのシートベルトは『多点式』です。
脱着のしやすさよりも、締め付けが優先されている構造であるため、伸縮性もなく身動きが取りにくくなっています。自動車レースなどでよく見かけることがあると思います。」
安全性と脱着のしやすさが両立されている三点式シートベルト
交通事故に備える際、全身をしっかりと固定した方が安全性が高いように感じます。しかし、道路運送車両法にはシートベルトの保安基準が以下のように定められていると、前出の教習所指導員は言います。
「道路運送車両法には、シートベルトの保安基準が細かく定められています。中でも、『運行時に、腰部と上半身を容易に動かせる構造でなければならない』とあります。
つまり、体を完全に固定してしまい身動きが取りにくいシートベルトは使わないように、という決まりになっているのです。
装着していても、緩めることもでき、急ブレーキなどの緊急時、衝突時にはしっかりとロックできる緊急ロック式巻き取り装置付きシートベルト(ELRシートベルト)でなければいけないのです。」
- 執筆者プロフィール
- 室井大和
- 1982年生まれ。ライター歴6年、自動車業界9年。合わせて約15年。雑誌編集、記者、指定自動車教習所員資格保有。愛車はスズキスイフトスポーツ(33型)、BMW323i(E90型)、ジムニー(JB23型)。車はセダンではじ...