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スバル水平対向エンジンは生き残れる?メーカーのこだわりとEVという大敵

かたくなに水平対向エンジンにこだわってきたスバル。しかし、押し寄せるEV化の波にスバルは窮地に立たされます。

車の動力源がモーターに変われば、水平対向エンジンは用をなさなくなり、スバルはそのブランド性を失ってしまうからです。

はたして、スバルはEV化の時代を生き残れるのでしょうか。

スバルこだわりのボクサーエンジンとは

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ほとんどのスバル車に搭載される水平対向エンジンは、横方向に向かい合ってシリンダーが配置される特殊な構造であり、動作がボクシングのパンチを繰り出す様子に似ているため「ボクサーエンジン」とも呼ばれています。

水平対向エンジンは、その構造により振動を打ち消し合うように動作するため、一般的なレシプロエンジンよりも低振動で滑らかな回転フィーリングが持ち味です。同時に、直列エンジンやV型エンジンよりもエンジン単体の重心が低いため、ハンドリング性能の向上にも貢献します。

スバル車乗りは「スバリスト」と呼ばれ、長く乗り継ぐことで有名です。JD POWER社の調査ではアメリカでもスバルは2019年から3年連続でリピート率1位を獲得する人気ぶりであり、英語圏でスバリストを指す「スービー」という言葉も生まれています。

スバル車のリピート率が高いのは、スバル車に搭載される水平対向エンジンの魅力もその理由の一因といえるでしょう。

なぜ他の自動車メーカーは水平対向エンジンを採用しないのか?

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これほどまでに優れたエンジンであれば、なぜ他のメーカーは水平対向エンジンを搭載しないのでしょうか。

かつてはトヨタやフォルクスワーゲンなども水平対向エンジン搭載車を販売していました。しかし現在、四輪車で水平対向エンジンを搭載した車を製造しているのは、スバルとポルシェのみです。その理由は、水平対向エンジンが乗用車にとって合理的なエンジンではないためです。

水平対向エンジンは、全高が低い代わりに横幅が広いため、現在主流のコンパクトカーへの搭載は困難です。大型車であってもエンジンヘッドが左右側面に配置されるため整備性が著しく低下してしまいます。

また、水平対向エンジンの最大のメリットである低振動の優位性は、エンジンマウントの工夫によって軽減できるようになったため、直列エンジンであっても振動はほぼ無視できます。

さらにいえば、低重心と謳われる水平対向エンジンではあるものの、実際はそれほど低く搭載することはできません。クランク軸の低さではV型エンジンに劣っており、無理に低く搭載すれば、排気レイアウトに問題が出るため出力を上げることができなくなります。

過去のスバル車にあった、不等長の排気レイアウトによる重低音がきいたボクサーサウンドは狙ったものではなく、排気管レイアウトの難しさに起因する苦肉の策でした。

燃費の悪さも不利にはたらいている

水平対向エンジンには、もうひとつ致命的な欠点があります。それは燃費性能です。

エンジン幅の制約からショートストロークにせざるをえない水平対向エンジンは、基本特性が高回転型であり、燃費性能を高めるうえでは不利です。

DOHC化や可変バルブタイミング機構など、エンジンヘッドの大型化が伴う改良はエンジンの横幅を広げてしまうため、他社に比べてずいぶんと導入が遅かった過去があります。搭載する車体も大きくせざるをえなく、車体の小型化による燃費向上も難しい実情があります。

現在は小排気量化やロングストローク化、ハイブリッド化や希薄燃焼化などで燃費改善は行われているものの、水平対向エンジンはその特殊な形状から、改良や開発には一般的なエンジンに比べて多くの費用と時間がかかります。

水平対向エンジンは、他のエンジンに比べて実用エンジンとしての開発上限が低い構造上の欠点があり、自動車用エンジンとしては使うには制限が多すぎるエンジンといえるでしょう。

エンジン性能が低かった時代には大きな問題にはなりませんでしたが、自動車用エンジンの高性能化が著しい現在において、水平対向エンジンは競争力不足といわざるをえません。

いうなれば水平対向エンジンは、ミドルクラス・スポーツカー用のエンジンであって、乗用車に適したエンジンではなかったのです。

そのため、水平対向エンジンにこだわって搭載しているスバルとポルシェ以外のメーカーは、わざわざ車体製造コスト・エンジン製造コストをかけてまで水平対向エンジンを採用する理由がないということでしょう。

それでもスバルが水平対向エンジンにこだわる理由

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スバルはこれらの水平対向エンジンのデメリットを解消するために、水平対向エンジンの搭載を前提とした中型車のみにラインナップを絞ることで存続してきました。スバル サンバーやヴィヴィオなどの直列4気筒エンジンを搭載した軽自動車も存在したものの、自社開発した車は軒並み1代限りで消滅しています。

過去には水平対向エンジンをやめる議論も社内で交わされたかもしれません。しかし、WRC(世界ラリー選手権)での活躍や、これまで築き上げてきた「ボクサーエンジンのスバル」というブランドイメージを崩すのもリスクを伴います。

とはいえ結果だけをみれば、スバルの経営戦略は水平対向エンジンのデメリットを逆手にとった合理的なものでした。スバルは水平対向エンジンにこだわり続けることでブランド価値を高め、現在では世界的に高い知名度を得ています。企業規模を考えれば大成功といってもいいでしょう。

スバルのエンジニアリングによる、こうした水平対向エンジンへのこだわりも、スバリストやスービーに支持される理由のひとつです。

ボクサーエンジンがなくなったらスバルはどうする?

STI E-RA

しかし今後進む電気自動車(EV)化によって、スバルは水平対向エンジンによる優位性を完全に失うことになります。EVの動力源であるモーターは、水平対向4気筒エンジンよりコンパクトなうえ低重心で低振動。つまりモーターを搭載したEVはすべて、水平対向エンジン以上の動力源を手に入れてしまうからです。

スバルでは今後の目標として、2030年までに40%以上を電気自動車およびハイブリッドカーにすることを掲げてはいます。今後EVに移行していくなかで水平対向エンジンは生き残れるのでしょうか。

EV過渡期間はエンジンが製造され続けるでしょう。しかし、汎用性が低いといわざるをえない水平対向エンジンは、その他のエンジンよりも早期に自動車用エンジンとしての役目を終えます。

とはいえ、仮にEV化が行われなかったとしても厳しい環境規制により、いずれはどこかで水平対向エンジンに見切りを付けなければいけなかったことは想像に難くありません。

スバルのもうひとつの強み

電動化によって車の動力性能に差がなくなる代わりに、駆動制御やシャシーセッティングの違いがより明確になります。その点、スバルにはAWD制御というもうひとつ強みがあります。

モーターは駆動制御の自由度が高く、4輪の動かし方や雪道での走らせ方をよく知っているスバルがチューニングすれば、これまでのスバル車らしい乗り味を出すことができるでしょう。

それを実際に体現したのが、トヨタ bZ4Xをスバルがチューニングした電気自動車であるソルテラであり、EVレーシングカーの「STI E-RA」です。

ソルテラには前輪駆動モデルのほか、前後にモーターを搭載した四輪駆動モデルもラインナップします。「STI E-RA」は4つのモーターで各タイヤを個別に駆動させ、ニュルブルクリンク最速ラップを目指します。

EV化によってスバルは、良くも悪くもこれまで抱えていた水平対向エンジンのしがらみから開放されます。スバルは水平対向エンジンを捨てることでこそ、過去のスバル車を超える、素晴らしくスバルらしい車がつくれるようになるのではないでしょうか。

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Q. スバルが水平対向エンジンを作れなくなる可能性についてどう思う?

現在、電動化によって内燃機関を搭載する車種を販売できなくなるのではないかと言われています。こうした動きでスバルの誇る...

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執筆者プロフィール
伊藤友春
伊藤友春
1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...
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