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ドライブレコーダーを使うと罰金100万円?海外のトンデモなドラレコ事情とは
ドライブレコーダーは事故の一部始終を証拠映像として残し、事故処理を円滑にしてくれる便利なアイテムです。
しかし海外には、ドライブレコーダーの使用が禁止され、違反者には日本円換算で100万円以上の高額な罰金が科せられる国もあります。
便利なドライブレコーダーであるにもかかわらず、なぜ禁止される必要があるのでしょうか。
合法? 違法? 海外のドラレコ事情
自動車事故や煽り運転は海外でも大きな社会問題であり、ほとんどの国でドライブレコーダーが利用されています。
海外では些細な交通トラブルで命を落とすこともあります。また、事故が起こると事実にかかわらず「むこうがぶつかってきた」と一方的に言われることも珍しくない海外では、自己防衛手段としてドライブレコーダーの有用性は日本より高いといえるでしょう。
近隣国の韓国ではドライブレコーダーは「ブラックボックス」、中国では「行車記録器」と呼ばれ、どちらの国でも合法です。そのほかインドや、インドネシア・マレーシア・シンガポールなどの東南アジアの国々でもドライブレコーダーの普及が進んでいます。
ロシアでも利用者は多く、2013年チェリャビンスク州の隕石映像の多くはドライブレコーダーによる撮影でした。
カナダとアメリカも合法です。アメリカのテキサス州やニューヨーク州ではフロントガラスへの貼り付けが禁止されているものの、バックミラータイプやダッシュボードに置くタイプなら問題なく使用できます。
ちなみに英語圏では「ドライブレコーダー」ではなく、取り付け場所に関わらず「ダッシュカム」と呼ばれます。
ドラレコが違法の国もあるヨーロッパ
しかし、不特定多数の顔やナンバーを撮影することになるドライブレコーダーと、プライバシーに関わる人権問題は切っても切れない関係にあります。
個人の人権を尊重する国でありながら訴訟大国でもあるアメリカでは、ドライブレコーダーがプライバシー以前に必需品。その一方で、人間としての尊厳を重要視する欧州では、ドライブレコーダーがプライバシーを侵害するものとして、各国共通のデータ保護法の基で慎重に扱われています。
とはいえ法規内容の一部はEU加盟各国に委ねられており、一部を除くほとんどの国でドライブレコーダーの使用は合法です。イタリア、オランダ、スペイン、スウェーデンなどのEU諸国とイギリスは、運転を妨げない位置に取り付けさえしていれば、問題なくドライブレコーダーを使用できます。
フランスとベルギーも合法ですが、取得した映像は私的利用に限られ、画像共有サイトなどへのアップロードは禁止されています。また、ベルギーでは事故の証拠として画像を扱う際には、画像に関わるすべての当事者への通知が必要です。
事故の証拠として使えるかは国によって異なる
ただし、ドライブレコーダーが合法とされている国でも、事故の証拠として使えるかどうかは各国で規定が異なります。もちろん公開する映像には、ぼかし処理などを施し人権に配慮しなくてはなりなりません。
同じEU加盟国のなかでも、オーストリア、ルクセンブルク、ポルトガルの3国は公共の場での録画は違法であり、ドライブレコーダーも全面使用禁止です。
オーストリアではドライブレコーダーを使用した場合、初犯で1万ユーロ(約130万円)、2回目以降は2万5,000ユーロ(約330万円)もの罰金が科せられます。
合法ではあるものの曖昧なドイツとスイス
ドライブレコーダーの使用にややこしい問題があるのがドイツとスイス。結論から言えばどちらもドライブレコーダー使用自体は違法ではありませんが、他の国のようには使えません。
かつて秘密警察による厳しい監視下にあった歴史を持つドイツは、欧州のなかでも特にプライバシーに関して敏感であり、つい最近までドライブレコーダーの使用が禁止されていました。
現在は規制が緩和されて普及してきているものの、記録された映像にプライバシーの侵害が認められる場合は、事故の証拠として認められない場合があります。また、ドライブレコーダーで撮影していることが知られると、プライバシーの侵害として周囲から苦情が来ることもあるそうです。
ドイツ以上に複雑なのがスイス。独自のデータ保護法を定めているスイスでは、旅の記録としてドライブレコーダーを利用することが禁じられています。
また、事故や煽り運転の証拠としてドライブレコーダーの映像を提出しても、撮影禁止に該当するものが映っていた場合には、それを理由に罰せられる可能性があります。つまりスイスでは、ドライブレコーダーが使えても実質的に使用不可能というわけです。
国家間を車で移動できる欧州ですが、面倒なことに、ドライブレコーダーが違法の国や使えない国へ入国する際には装置の撤去が必要になります。
海外ではドラレコ使用前に確認を
海外には軍事施設や国境付近、政府施設など撮影禁止の場所が多数あるほか、国防上の理由、宗教・民族風習上の理由でドライブレコーダーによる撮影がトラブルを招く国もあります。
その一方で、詐欺や暴力などの犯罪や、抑圧的な法執行機関の横暴に対抗する自衛手段としてドライブレコーダーが必須の国もあります。
海外旅行の備え、あるいは思い出の記録として愛用のドライブレコーダーで撮影する場合は、事前にそれぞれの国のドラレコ事情を確認しておきましょう。
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- 執筆者プロフィール
- 伊藤友春
- 1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...