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車をつまらなくする装置?今後日本でも導入予定の自動速度抑制装置とは

欧州では2022年7月以降に発売されるすべての新型車に、ISAと呼ばれる速度超過を抑制する装置の装着が義務化されます。

このISAは日本にも導入され、いずれは道路ごとの制限速度に応じて車速が自動制御されるようになると予測されます。

具体的にどのような仕組みなのでしょう。そしてわたしたちの生活に、どのような影響をもたらすのでしょうか。

ISAは速度超過に対する取り組みの決定打

©Ichiro/stock.adobe.com

世界では速度超過に対するさまざまな取り組みが行われています。フランスでは近年になって中央分離帯のない一般道の最高速度が時速90kmから80kmへ引き下げられました。また、パリ市内の制限速度は原則30km/hに規制されています。速度無制限で有名なドイツの高速道路アウトバーンでも速度制限区間が年々増加しています。

また、速度違反自動取締機の増設と高度化により、知らぬ間に撮影され罰金が科せられるケースも珍しくありません。日本でも移動式オービスの運用がはじまり、速度超過に対する取締りが強化されています。こうまでして速度超過に敏感になるのは、速度超過が重大事故の発生率を大きく引き上げるためです。

車速が上がれば、より高度な予測運転や反応速度が求められます。また車が持つ運動エネルギーは車速の2乗に比例するため、速度が上がるほど減速のための制動距離は伸び、ときにはカーブを曲がれない恐れもあります。そして車が衝突した際の衝撃力は、速度の2乗倍で増加するのがスピードのもっとも恐ろしい点です。

欧州連合の政策執行機関である欧州委員会では、交通事故の30%あまりが速度超過に起因するとの見解を示しています。また、警視庁では制限速度超過の死亡率は9〜12倍にまで高まると報告しています。

規制や罰則の強化や啓蒙活動によって速度超過は年々減少傾向にあるものの、それらは受動的な対応と言わざるを得ません。それに対し、車側で速度超過を防ぐ能動的な試みとして「ISA」が注目されています。

欧州で装着義務化されるISAとは?

©Karen Roach/stock.adobe.com

ISAとは、車載カメラやデジタル地図情報から取得した制限速度情報をもとに、高速道路・一般道路を問わず速度超過があった場合にドライバーに警告する車載装置です。ISAは「インテリジェント・スピード・アシスタンス」の略で「先進型速度抑制補助装置」と訳されます。

EUに加盟する27カ国とイギリス、スイス、ノルウェーの欧州諸国では、2022年7月以降に生産される乗用車、商用車、トラックなどの新型車にISAが装着され、2024年からは継続生産される車を含めたすべての新車にISAの搭載が義務化されます。

現在でも同様のシステムが搭載されている車は存在しますが、使用は任意であり設定操作で簡単に解除できます。ISAが義務化されれば、解除は困難になるとともに速度超過時は終始モニター表示や警告音でドライバーに注意を促すようになるため、速度超過抑制に効果を発揮すると見込まれています。

また、規制速度を超過するとアクセルペダルが重くなり、触覚的に速度超過を警告するシステムの開発も進められています。

最終的な目標は速度超過ができなくなる車

警告型ISAは、あくまで速度超過を警告するだけであり、警告を無視すれば速度超過はできてしまいます。しかし、ISAの最終的な到着点は、先進型自動速度抑制装置である「インテリジェント・スピード・アダプテーション」です。同装置は同じくISAと略されます。

「速度抑制補助」ではなく「速度抑制順応」と訳されるこちらのISAは、カメラやGPSで取得した制限速度情報を用いてドライバーに警告するだけでなく、エンジンやブレーキコントロールとも連動させて強制的に車速を制御する仕組みです。

つまり、この車速制御型ISAが搭載された車は、道路ごとに設定された制限速度以上のスピードが出せなくなります。ただし、やむをえず制限速度を超えなければならない状況での安全性を確保するために、ある程度のドライバーの操作が介入できるオーバーライド機能の導入も検討されており、厳格に制限速度での走行を強いるようにはならないようです。

とはいえISAの搭載義務により、そう遠くない将来にはすべての車が公道で制限速度を超えた走行はできなくなってしまうことでしょう。

日本でもISAが導入される?

ISAの導入は欧州だけの話ではありません。国連の自動車基準調和世界フォーラムに参加し、欧州との基準調和を積極的に進めている日本でも、今後ISAが導入される見通しです。

事実、日本でも2017年ころから国土交通省によるISAの有識者会議が開かれており、まだ不透明ながら日本版ISAのおおまかな方向性はすでに決定されています。

第一次案として挙がっている日本版ISAの仕様は、警告だけでは速度超過を抑制できない懸念から、欧州のように警告の前段階を踏まず、導入初期から速度制御に介入する方式になる方向で進んでいます。

また、原則としてISAは常時オンとなり、視覚・聴覚・触覚情報による警告を条件にオーバーライドを可能とすることや、制限速度情報が入手できない場合や情報が正しくない状況に対してドライバーが上限速度を任意で変更できることなどの要件が盛り込まれています。

これらに加え、ドライバーが任意でオンオフできるかどうかも検討が重ねられているようです。ちなみに二輪車の場合は、スロットル操作を通常走行時の車体制御にも用いるため、現段階では検討対象外であり、欧州でも二輪車は2025年まで検討対象外とすることが公表されています。

ISAによって日本の道路はどう変わる?

©beeboys/stock.adobe.com

日本を走行するすべての車にISAが導入されれば、移動速度が遅くなる代わりに、速度超過が解消されて交通事故と速度超過による死亡者の数は確実に減ります。

ただし、ISA導入車両とそうでない車両が混在する過渡期は、生じる速度差による追突事故や煽り運転の増加が懸念されます。自動ブレーキ搭載車のさらなる普及により、交通事故はある程度抑制されるとはいえ、一時的には大きな混乱を招くでしょう。追い越しが困難になることで渋滞が増えることも予想されます。

また、現在でも日本車の一部に同様のシステムが搭載されていますが、現状でカメラのみの制限速度標識の識別は完璧とはいえません。より高い認識精度の要求や、地図情報から制限速度情報を取得するとなると、車両価格の底値を引き上げることにもなります。

ISAの導入は日本の道路に良くも悪くも大きな影響をもたらします。それほどまでに画期的な取り組みであり、その仕様決定は慎重にならざるをえないことは想像に難くありません。日本のISAがどのような形で導入されるか、今後の動向に注目しましょう。

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執筆者プロフィール
伊藤友春
伊藤友春
1981年生まれ。自動車専門Webライターとして執筆活動中。自動車の構造に明るく、ほとんどの整備や修理をDIYでこなす。輸入車・コンパクトカー・変わったデザインやコンセプトの車が好きで、現在の愛車はその最た...

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