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車のボアアップとは?メリット・デメリットや車検についても解説

車の「ボアアップ」、もともとチューニングではなかった?

エンジンシリンダー
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NAエンジンのチューニングとして広まったボアアップ。最近では聞きなじみのない人も多いでしょう。

かつて、車のエンジンに鋳鉄が使われていた時代は、長期にわたってエンジンを使用すると、シリンダーの内壁が傷つき、オイル漏れや圧縮漏れといった不調が起きるとともに、エンジン性能が少しずつ落ちていきました。

この時、不調の原因となるシリンダー内の傷を、コンマ数ミリ単位でボーリングして削り取り、傷を無くす作業を行います。エンジン内部のシリンダーを削ることで、内径が一回り大きなシリンダーになり、シリンダー径(ボア)を大きく(アップ)することから、「ボアアップ」と言われるのです。

この作業を、シリンダー傷の有り無しにかかわらず、シリンダー径を大きくし、エンジンパワーを上げる理由で行う改造を、「ボアアップチューニング」と呼んでいます。

NAエンジンのチューニングとして定着した理由は?

車のエンジン内部
©yang yu/stock.adobe.com

もともとは修理や整備の手法だったボアアップが、どうしてチューニングとして用いられるようになったのでしょうか?

NAエンジンでは、ターボエンジンのようなパワーアップチューニングは難しくなります。ターボエンジンであれば、タービンを大型化するなど、部品交換等で比較的簡単にエンジンパワーを上げることができますが、タービンのないNAエンジンでは、パワーを上げるチューニングがほとんどできないためです。

そのため、シリンダー径を拡大し、同時にピストン径を大きくして排気量アップを図ることができるボアアップは、かつてNAエンジンのパワーアップチューニングとして定着したというわけです。

しかし、エンジンシリンダーをボーリングするための専用設備や、作業を行う技術者の熟練の技術が必要なため、個人が手軽に行えるチューニングではありません。繊細な技術が必要となるチューニングで、NAエンジンのパワーアップのため、最後にたどり着くステージとも言えます。

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ボアアップによるメリットとデメリット

メリット デメリットのイメージ画像
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ボアアップによるメリットは、エンジン性能の向上です。シリンダーの研磨や径が大きくなることで排気量がアップし、エンジンパワーやトルクの向上が期待できます。

しかし、デメリットも多い点に注意が必要です。まず、エンジン出力が上がるため、ブレーキやクラッチ、変速機などへの負担が大きくなります。対応する部品への交換や補強が必須です。

さらに、冷却系統が厳しくなるため、オーバーヒートのリスクを抱えることにつながります。冷却系統の強化も必要です。

そして最も重要なのが、エンジンのバランスが崩れることに対する処置です。シリンダー容積が大きくなることによって、燃料噴射量の調整や点火時期の調整が必要となります。

エンジン内部の動きは、コンピューターで精密に管理されているため、ボアアップチューニング後は、コンピューターの書き換え(ECUセッティング)も必要です。

ボアアップし、エンジン排気量が大きくなってしまうと、メーカーが計算して作り上げた車のバランスが崩れてしまいます。パワーアップした分だけ、各部品の性能を見直し、改めてトータルバランスの取れた車を作り直す必要があるというわけです。

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近年ではほとんど行われなくなったのはなぜ?

エンジンシリンダー
©bankshutter/stock.adobe.com

ボアアップは現代の車では行われなくなったチューニングです。その理由は2つあります。

1つはエンジンの素材が鋳鉄からアルミに変化したためです。鋳鉄よりも軽く柔らかいアルミ素材では、シリンダーの加工を行うと、エンジンが壊れてしまうというリスクが大きくなります。

もう1つはシリンダーの内壁を研磨する必要がなくなったためです。現代のエンジンには、シリンダー内壁を交換できるシリンダーライナーが採用され、内壁の削り取りが必要なくなりました。

また、シリンダー内壁の表面を加工する技術が上がり、燃焼設計が緻密に計算されることとなり、シリンダー径を大きくするだけではパワーアップにつながりにくくなったというのも、ボアアップが行われなくなった理由の一つです。

【注意】ボアアップを行ったら構造変更が必須

車検証
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さらにボアアップ後には、必ず構造変更手続きを行わなくてはならないという手間も、ボアアップチューニングを遠ざけた要因の一つでしょう。

ボアアップを行うと、エンジン排気量が変わります。つまり、車検証に記載された数値と実際の車の数値が合わなくなることから、必ず構造変更の届けが必要になるのです。

構造変更の際は、陸運支局へ、改造自動車等届出書と改造概要等説明書を提出し、変更点や強度計算などを明記した説明資料を提出し、書類審査を受け、さらに車検を受けて合格しなければならないという、非常に面倒な手続きが必要です。

この審査や検査に合格し、自賠責保険と任意保険の変更を行って、やっと合法車両として公道走行が認められるのです。

このようなリスクや手間を考えると、ボアアップは軽率にしない方がいいという判断が現代においては賢明でしょう。旧車では、有効なチューニングの一つだったボアアップ。しかし、現代では行うことがそもそもナンセンスと言わざるを得ません。

しかし、正しい知識を持ち、技術のあるショップに任せるというのを大前提にして、旧車オーナーがボアアップに挑戦するというのは、旧車所有の楽しみの一つでしょう。消えゆくボアアップチューニングは、技術と根気が必要となる、チューニングの世界では憧れの改造の一つだったのです。

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執筆者プロフィール
Red29
Red29
1980年代生まれ。国産ディーラーでの営業職として働き、自動車関連の執筆者として独立。ユーザー目線に立った執筆を心掛けています。愛車はトヨタプリウス。ホットハッチに代表される、小規模小パワーのクルマが...

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