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回生ブレーキとは?仕組みやメリット、デメリットと上手に運転するコツ
回生ブレーキとは?
発電と減速の両方をこなすブレーキ
回生ブレーキは駆動モーターの軸回転を利用して走行中に発電及び減速(制動)を行う仕組みです。自動車の分野では、ハイブリッド車や電気自動車などに採用されています。
ブレーキといえばブレーキパッドとブレーキディスクを摩擦させて減速させるもの、いわゆる摩擦ブレーキを思い浮かべますが、回生ブレーキは摩擦ブレーキとの組み合わせで使用されています。
つまりハイブリッドカーや電気自動車といった車両は摩擦ブレーキと回生ブレーキの両方を備えていることになり、モーター回転軸の抵抗がブレーキとして機能します。
回生 = regenerate(再充電)
回生ブレーキの英語表現は Regenerative brakeとなっています。「再び(電気を)生み出すブレーキ」というわけで、減速よりも発電(つまり節電)に重きが置かれたものと考えて良いでしょう。
エンジンのみの車両には無い
回生ブレーキはハイブリッドカーやEV特有のもので、エンジンのみを搭載している従来的な車両には搭載されていません。
以下に続く回生ブレーキの仕組みや構造をお読みいただくと理解できるかと思いますが、回生ブレーキは駆動モーターがある前提の機能であることが理由と言えます。
回生ブレーキの仕組み
回生ブレーキがはたらく過程
回生ブレーキが機能する仕組みをまとめると次のようになります。
- ブレーキ(減速)に反応して電気モーターがジェネレーターモードになる。
- タイヤ(ホイール)が回転してジェネレーターを動かし、交流電圧が生み出される
- モーターの交流電圧がインバータによって直流電圧に変更される
- この直流電圧が蓄電池(バッテリー)へ送られ蓄電される
これらの過程の理解を深めるために、ここでは最低限抑えておきたい要素を解説します。
インバータの役割
インバータが必要な理由は、バッテリーの直流電圧をそのまま交流電圧のモーターに使用できない点にありますが、もう1歩踏み込むとモーターの回転数やトルクを細かく調整するために必要不可欠ということです。
インバータをモーターに組み合わせることでモーターの電気の周波数を制御できるようになります。周波数を制御できるようになると、先に書いた通りモーター回転数・トルクを制御できるようになり、車両のアクセルペダル操作で加速したりゆっくり走ったりできるわけです。
ジェネレーター(モータージェネレーター)の役割
ジェネレーターは発電機のことです。ハイブリッド車や電気自動車に搭載され、モーターと共に使われているジェネレーターはモータージェネレーターと呼ばれています。
モータージェネレーターは回生ブレーキ時に機械的エネルギー(タイヤの回転やパワートレインの回転など)を電気エネルギーへ変換するほか、加速時のエンジンアシストも行います。
発電するという意味ではオルタネーターを思い浮かべる人もいることでしょう。オルタネーターとジェネレーターのどちらも自動車をはじめとするさまざまな乗り物に使用されていますが、オルタネーターは電流を生み出すために電磁誘導を利用している点でジェネレーターと異なります。
ブレーキ・バイ・ワイヤはどういう仕組み?
回生ブレーキを語る上で多少なりとも理解しておきたいのがブレーキ・バイ・ワイヤと呼ばれる機構です。
ブレーキ・バイ・ワイヤとはアクチュエーターやコンピューターを利用して摩擦ブレーキを機能させる種類のブレーキです。
もちろんブレーキキャリパーのピストンを押し出すのにブレーキフルードが使われていますが(つまり油圧)、ブレーキペダルが直接的に油圧に働きかけてピストンを押し出さず、コンピュータの信号を受けたポンプが油圧を作動させます。
ブレーキ・バイ・ワイヤと従来型摩擦ブレーキの違い
従来的な油圧ブレーキの場合、ブレーキペダルを踏んだ時の力(踏力)が油圧へ変換されるので、ブレーキ・バイ・ワイヤと異なる構造をしていることがわかります。この時、マスターシリンダーは踏力を油圧へ変換する役割を果たします。
また、マスターバックは踏力を補助します。ブレーキ・バイ・ワイヤと比べると、電子制御による介入が無い点で異なることがわかります。
回生ブレーキのメリット
その1:走行しながら電気エネルギーを蓄電できる(節電できる)
1つ目のメリットは走行しながら電気エネルギーを蓄電できることです。回生ブレーキは摩擦ブレーキで発生する熱エネルギーを電気エネルギーへ変換できるとよく言われていますが、まさにこのことを指し示しています。
ハイブリッド車はエンジンが搭載されていて、モーター駆動に必要なエネルギーはエンジンによる発電で賄えますが、日産・リーフのような100%バッテリーのみで走行せざるを得ない車両は回生ブレーキの多大なる恩恵を受けていると言っても良いでしょう(恩恵を受けるのはハイブリッド車も同じ)。
その2:ブレーキの消耗を抑えられる
2つ目のメリットはブレーキの消耗を抑えることです。ここで言うブレーキとはブレーキパッドやディスクローターなど(摩擦ブレーキ)を意味します。
回生ブレーキと摩擦ブレーキが共に制動力を生み出すことで、摩擦ブレーキの負担を回生ブレーキのない車両より抑えることができるのです。
ブレーキパッドやディスクローターの消耗が減った分だけメンテナンス費用は安くなりますので、当然維持費も安くなります。安全を担保しつつお得に自動車を所有できるので、まさに一石二鳥です。
回生ブレーキのデメリット
その1:構造が複雑になる
回生ブレーキは従来の摩擦ブレーキに加えて、モータージェネレーターやインバーター、さらにはバッテリーが搭載されるので構造は複雑になります。この手の車種はブレーキ・バイ・ワイヤが採用されているので、電子制御がさらに増えてブレーキ機構もパーツ点数が多いです。
その2:車両重量が増加する
2つ目のデメリットは車両重量が増加することです。回生ブレーキ機能を備えているということは駆動モーターや蓄電池(バッテリー)が搭載されていることになりますので、例えばハイブリッド車のようにエンジンが載っている車両であればその分だけ車両重量の増加につながります。
プリウスやアクアなどのハイブリッド車の燃費はとりわけ優れているので燃費悪化の心配をする必要はありませんが、車両の運動性能の側面からすると回生ブレーキが「ハンデ」になることも否めません。
現行のトヨタ・ヤリスのガソリン車モデルとハイブリッドモデルの車両重量(2WD)を比べると、ガソリン車モデルは940〜1,020kgであるのに対し、ハイブリッド車では1,050〜1,090kgとなっていますから、やはりハイブリッド車はガソリン車よりも高重量の傾向ということでしょう。
その3:回生ブレーキが機能しない域がある
回生ブレーキはモーターが回転しない時には機能しません。つまり急激なブレーキをかけた時や、停止間際などには使えないと言うことになります。
回生ブレーキを使って上手に運転する方法
回生ブレーキは効き方に少し癖があるので、初めて運転する時には摩擦ブレーキ車両との違いに驚く人もいることでしょう。回生ブレーキを活かして上手に運転するにはどうすれば良いのでしょうか。
急ブレーキを避け、ブレーキの距離を長く取る
発電時間(回生ブレーキが作動する)時間を長くする、そしてそれによって蓄電された電気エネルギーを浪費しない(電費の良い)走行をすることがポイントの1つです。
例えば、急ブレーキを避ける、ブレーキの距離を長く取る、周りに迷惑をかけない範囲でアクセルペダルのオン・オフで減速することで、車輪が回る(発電する)時間を長伸ばすことができます。
発進時には急加速を避けながらもなるべく早めにある程度の速度に達する(法定速度を目安にするのは有効)ことです。これにより回生ブレーキを作動させるのに十分な車輪の回転を準備できます。
アクセルペダルオフで減速する
回生ブレーキ搭載車両を一度運転するとよくわかりますが、アクセルペダルのオフだけでも回生ブレーキを活用できます。速度域に依ることもありますが、エンジン搭載車両で言うところの「エンジンブレーキ」が働いている感じです。
これが意外と効きが良く、車両特性もあるかもしれませんが、ペダルワーク操作向上にもうってつけです。運転好きなドライバーにとっては興味深い要素と言えるでしょう。
【おまけ】排気ブレーキとは?
排気ブレーキは、ディーゼルエンジン特有の補助ブレーキのことで、「エキゾーストブレーキ」とも呼ばれ、エンジンブレーキの効果を高める役割を担っています。
排気ブレーキのレバーやスイッチをオンにすると専用のバルブが閉じてエンジン内の排気圧力を高め、エンジンブレーキの効きを強くする仕組みです。
主に3.5t以上のトラックやバスといった大型自動車のほか、ディーゼル機関車やガスタービン機関車などに採用されています。
排気ブレーキを使用するのは下り坂を走る時かつ荷台に荷物を搭載した時で、反対に平地を走行する時や空荷の時には使用しないのが基本です。また、常に効かせるのではなく、必要に応じて使用します。
ハイブリッド車や電気自動車は回生ブレーキを気にせず運転せずとも低燃費・電費を実現しますが、意識して回生ブレーキを使うとそれ以上にエコな運転を実現できます。車と場面に合わせた乗り方で上手なエコドライブを進めましょう。
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